霊基
影虎が気絶している間。
彼は夢の中に居た。
そこは漆黒の暗闇だった。
「ここは……見覚えがあるぞ……先代勇者が出た所か!」
「正解~。って出たって何だよ~」
「うわっ! 驚かさないでくれよ……」
影虎は先代勇者に背後を取られて肝を冷やす。
「ていうか今何で出てきたんだ? 特に用事無いだろ?」
「いや大有りさ。君忠告したのに陽の勇者君と喧嘩したでしょ」
「あれは……」
影虎は先代勇者に事情を説明する。
「そういう事か……ごめんよ、俺も流石に四六時中君を見ている訳じゃないから全部は知らないんだ」
「むしろずっと見ている方がアレだろ……というか見るなよ……」
影虎は先代勇者にそう突っ込んだ。
「見守ってるんだよ。君が刀を使うにふさわしいかどうかね」
「何だその剣の精霊みたいな行動は……」
そして影虎は黒いシルエットしか見ることが出来ない先代勇者の姿を見て言う。
「というかお前なんでそんな姿なの?」
「それはね……刀のパフォーマンスの問題さ……」
「そういう問題!?」
先代勇者が苦笑を浮かべながらそう答えた。
影虎は意外な理由に驚いた。
「仕方が無いんだよ……力を分散させたらこっちのスペックも落ちちゃったんだから……」
「そこは分散しないようにしとけよ……」
「まあそれは置いといて。今日は勇者と魔族の能力について教えに来たんだ」
「おい一番気になる奴じゃねーか! それを先に言えよ! スペックとかどうでもいいから」
「君から聞いておいて何を言ってるんだよ……いいかい……よく聞くんだ……」
先代勇者は影虎の勝手な言い分に若干呆れつつも説明する。
「まず魔族の能力だけれど……これは魔族の間で“霊基”って呼ばれているんだ」
「初耳なんですけど……」
人族の間では霊基はそこまで身近ではない。
魔族が自ら自身の能力を人族に見せる事は珍しいからである。
利用されては堪ったものではないというのが一番の理由だ。
そういった事情からそもそも彼等は同族同士でもあまり霊基を教え合ったりはしない。
「それで……魔族の霊基の発現の仕方はね、人族とは違った形で霊力が付いて才能が身に付くんだ」
「おい……それって……」
「そうだよ。勇者の能力と似た、いやそのものと言った方がいいね。勇者の能力も歴とした霊基だよ」
「そんな……」
影虎は絶望した。
勇者レベルの能力を持った化け物、それが魔族なのかと。
「おっと、この話にはまだ続きがあってね。最初に勇者の能力について説明した時に言ったよね? この世界の住人とは違った形で付いてくるって」
「………ん? どういう事だ?」
首を傾げる影虎に先代勇者は勇気付けるように言った。
「つまり、魔族の霊基は霊力が影響するという点では同じものではあるけれど、勇者の霊基とは違う、って事だよ」
「それが何になるんだよ」
投げやりに言う影虎。
先代勇者はそんな影虎を宥めながら続ける。
「一番大事なのはここからさ。よく聞けよ。実は魔族の霊基より、勇者の霊基の方が強い」
「マジで!? その割には俺ロゴスとかに苦戦してた気が……」
影虎は先代勇者の言葉を半信半疑で聞いた。
先代勇者はそれに構わずさらにこう言った。
「あと霊基は成長するんだ。これは魔族も勇者も同じだけど勇者の方が伸び代が大きいよ」
「ああ、そういう所もある訳か……って隠行成長するの!?」
「そうだよ。それはもうめきめきと。大器晩成だけどね」
「嘘だろ……」
影虎は驚愕し、じっと自分の手を見る。
(隠行が成長……? 一体どんな風に成長するんだ……?)
影虎は全く想像がつかなかった。
「さて……いいサプライズになって何よりだよ。それじゃあ、またね」
「色々と新情報多すぎて俺の頭の整理が追いつかねえまま帰るなよ……」
「ごめんな、時間が迫っているんだ。あと、君達勇者三人がしっかり者で良かったよ。二人が戦ったのも理解は出来るし。それだけは言っておくね」
「そうか……次出てくる時はもうちょっと性能何とかしてくれよ」
「ああ、善処するよ」
そうして影虎は夢から覚めた。
「影虎!」
「影虎君!」
「カゲトラ!」
そこは見知らぬ部屋だった。
晴人と萌葱、そしてミコモが影虎の顔を覗き込んでいる。
影虎が上半身を起こして辺りを見渡すと、エルドレットが心の底から安堵して言う。
「良かった……! カゲトラちゃんが目を覚ましたわ……!」
「そんな大げさな……」
「影虎君、君三日も寝てたんだよ? 一体どんな霊術放ったのよ」
「ええ!? マジで!?」
影虎にまた一つ謎が増えた。
あの依代は一体何なのかという謎が。
「とりあえず無事で良かったわカゲトラ。あと私もフォーヴィスとの戦いで途中から記憶が無いのよね。カゲトラ、何か心当たりない?」
「お前また暴走したんじゃ……」
影虎が推測を述べると、ミコモは青ざめた。
それに萌葱が追討ちを掛ける。
「あれは暴走というより覚醒じゃない? 霊基の効果な訳だし」
「モエギ……あなた何様よ……後で城の裏庭集合ね」
「げえっ……また墓穴掘っちゃった……」
「仲が良いわねえ二人とも♪」
ミコモと萌葱のやりとりを見てクスリと笑うエルドレットと影虎。
晴人はその様子を決意に満ちた目で見るのであった。
これで三章終了となります。
読んで頂き有難うございます。
今回は大分シリアスなシーンが多かった気がします。
そして晴人戦やフォーヴィス戦は書いていてとてもハイになりました。
色々と新しい要素も出てきて、これからどうなるのか?
三章以降もご期待下さい!




