暴走ミコモVSフォーヴィス
「皆伏せてーーーっ!!!」
後方で負傷者を守っていたエルドレットが声を上げる。
萌葱やオウレンに治療された者を筆頭とする城の面面はその言葉の意味が分からなかった。
だが彼等はそれを身を持って知る事になる。
「シャアアアア!!!」
暴走状態のミコモがまず最初に標的としたのは萌葱だ。
「な、何これ……ってうわっ! ちょ、ミコモちゃんストップ! ストッ……」
萌葱はミコモを落ち着かせようとして呼びかけるも、ミコモの突きを食らい気絶してしまった。
「ハアァッーーーッ!」
「「「「「うわあああああああ!!!」」」」」
一同はミコモの恐ろしさに戦慄した。
勿論、その一同の中にはフォーヴィスも含まれている。
「お前は一体何なんだ!? こ、この力は……」
フォーヴィスはわなわなと震えながら己の推測を述べる。
「まさか……霊基か……? お前も霊基持ちだったのか……?」
そしてミコモの目は恐れ戦慄く一同の中でフォーヴィスを捉えた。
ジリッ……
ジリッ……
恐怖がフォーヴィスに音を一切立てる事なく忍び寄る。
いっそ音を立ててあからさまに襲い掛かって来た方が恐ろしさも少しは和らげられただろう。
フォーヴィスは額にだらだらと汗をかきつつもミコモを宥めようと試みる。
「な、なあ君……そうやって……その……何て言うか……」
だが言葉が出てこない。
フォーヴィスは腹を括る時が来たか……と悟り、霊基を発動させる。
「最後のビットかもしれん……アプエスタ・ヴィクトル」
[かしこまりました]
フォーヴィスが命じると、アプエスタ・ヴィクトルは玉を三つ転がした。
霊基、アプエスタ・ヴィクトルで賭ける物はチップでも現金でも無い。
次に霊基が発動可能になるまでの時間である。
つまりより長い時間を賭ければ、複数賭ける事ができるのだ。
当然戦闘中は僅かな時間も命が関わってくるので、フォーヴィスはこれを奥の手としている。
更にフォーヴィスは矢を大量にミコモに投げる準備をする。
因みに矢は生成という魔術で創り出している。
それ故に一度にあれほどの数をしきりに撃てるのだ。
「せあっ!」
フォーヴィスは三十本ほどの矢をミコモに向け一点張りで放った。
しかし……
ミコモは野生の本能に頼ったのかスチャッと全ての矢をキャッチし、飢えた猛獣のように矢を食べ始めた。
一同は唖然とする他無かった。
「お前……もしかすると魔力を食べる、あるいは魔力を吸収するという霊基なのではないか!? でなければ私の生成した矢を食べられる筈が無い……」
フォーヴィスがそう膝を震わせながら呟くと、王がそれに答えるように言った。
「思い出した……一番最初に霊基を手にした魔族が……魔力を食し、周囲の魔力を吸収するという能力だったと伝えられている事を……」
王は一呼吸おいてから言う。
「その霊基の名は、“魔喰”」
「“魔喰”……ですが国王様、何故亜人族のミコモ殿に魔族の霊基が発現したのです?」
「それは分からぬ。じゃが一つだけ言えるのは、ミコモ殿は今完全に暴走しておるという事実だけじゃ……」
「………」
王に聞いた王の配下の者は黙りこくってしまった。
「危ない危ない……何とかお前が矢を食べている間に霊基の発動可能になった……行くぞ!」
フォーヴィスはアプエスタ・ヴィクトルを行使する。
数字の1が点灯する。
すると唸っていたミコモの声が次第に小さくなっていく。
「1の効果は確か一分間程度相手に金縛りに遭わせる事! これは当たりだな。次は……」
フォーヴィスがマス目を見ると、8と2が光っていた。
体が尋常でない程に軽くなり、手に1000メコの束が現われる。
「8は先ほども出たが大当たりだ……だが今この状況で1000メコなど無意味だ! 大外れだな……こんな時に……」
フォーヴィスは落胆しながらもミコモに数えられないくらいの矢を投げ続ける。
いくら暴走状態と言えど、金縛りは解除できない。
けれどもミコモの体に矢が刺さる事を見過ごす程一同は甘く無い。
「一斉に魔術を撃てっ!」
「「「「「はっ!」」」」」
「………千鶴飛翔!」
「ーートレイス・コンへラル」
それぞれの技で矢を弾き飛ばしていく。
王の配下達は連携の整った魔術で威力不足を補っている。
それでも僅かにフォーヴィスの方が威力も数の多い。
「くっ……不味い押されている……このままじゃ……」
誰かがそう言った時、矢が突然集められる。
白い虫網に。
「ふう……さっきの本当に痛かった……オウレンさんが居なきゃ死んでたな……」
そう、萌葱がオウレンの治療により復活したのだ。
「おお! モエギ殿! 助かりますぞ!」
「いえいえ、それよりミコモちゃんは……」
大丈夫なのですか、と言おうとして。
金縛りが完全に解け、目をらんらんと光らせてフォーヴィスの方をじっと睨んでいた。
「なっ……しまった! 効果切れか!」
フォーヴィスは自分の中で何故それを把握しておかなかったのかと後悔する。
そんなフォーヴィスにミコモが襲い掛かる。
「フシャァーーーッ!」
「ぐおおおおおお!」
ミコモがフォーヴィスに目にも留まらぬ速さで拳を振るった。
フォーヴィスはあまりの衝撃に地面を這う羽目になった。




