玉座の間組VSフォーヴィス
「成る程……でも魔族のトレンドって一体……」
萌葱が不思議に思いながらぽつりと呟くと、フォーヴィスは萌葱に手を向けて言う。
「お嬢さん、君も霊基をお持ちだよ。気付いているかい?」
「!?」
萌葱は驚きのあまり声を失う。
(まさか……勇者の能力も魔族と同じ霊基なの……?)
衝撃の事実を知って固まってしまう萌葱。
そんな萌葱をよそに落雷により気絶していた王が体を震えさせながら立ち上がり、かつての部下であり今は魔族の男に叫んだ。
「ビスタ! 貴様が魔族のスパイであったのか! 信用しておったのに……」
「ふふ……国王様、もう私はビスタではありません。上級魔族フォーヴィス=ルレッドですよ」
「この……ふざけおって……!」
王がフォーヴィスを鋭く睨みつけるも、フォーヴィスはそれを全く気にする事なくどこからかおびただしい数のダーツの矢を取り出し、弧を描いて投げた。
矢は一同に凶刃となって襲い掛かる。
「ーーー風刃!」
「ーーー飛水斬」
それを萌葱とミコモが霊術で迎え撃つ。
だがいかんせん数が多く、完全には相殺しきれずに落雷で気絶している人々の所にまで矢が飛んでいく。
「危ない!」
「大丈夫よミコモちゃん。………霧双突き!!!」
「ーートレイス・コンへラル」
エルドレットとアルメリアがそれらを全て弾き落とした。
そしてアルメリアが皆にこう言った。
「この人達は私とエルドレットさんで守るわ! 二人はあいつをお願い!」
「分かったわ」
「マジか……了解です」
ミコモと萌葱が頷く。
「勝手に役割分担してしまいましたけど……よろしいですかエルドレットさん?」
エルドレットの方を振り返り申し訳無さそうに言うアルメリアに、エルドレットは笑顔で答えた。
「別にいいわよ~。むしろ指示してくれて助かるわよ~。それじゃあ私達で協力じてこの人達を守りましょうね」
「はい、一本たりとも通させませんわ」
「はあっ、はあっ……かたじけない……では私はせめてこの方々の治療に務めましょう!」
負傷者の前に立つ二人に、オウレンは二人に感銘し、負傷者の霊術治療を始めた。
「それじゃあ私達はあいつを仕留めるわよ」
「ええ、ミコモちゃん」
二人もフォーヴィスと対峙する。
しかし二人は……
(何でこの人私の事ちゃん付けするのかしら……)
(何でよりによってこの強い爺さんと戦うのが私なの……どう考えてもエルドレットさんとかの方が絶対私よりも強いじゃん……)
と、心の中でぼやいていた。
「ほう……霊術使いに霊基持ちか……相手にとって不足は無し!」
フォーヴィスはそう言い放ち。
「ビット!」
[かしこまりました]
霊基、アプエスタ・ヴィクトルに賭けた。
それを見た萌葱はミコモにせっつくように呼びかけた。
「ミコモちゃん、多分あいつの霊基は連続して使えない! 玉がマス目に入るまで発動出来ないんだと思う。畳み掛けるよ」
「了解」
ミコモはそう応じて霊術を唱え始めた。
萌葱も共に霊術を詠唱する。
「ーーー風結」
すると萌葱の手に、一本のある道具が現れた。
それは細長い棒に網が取り付けられた物。
すなわち虫取り網だ。
フォーヴィスはそれを見て大爆笑する。
「はははははは! 面白いお嬢さんだ! まさかそんな道具で私を倒そうなどとは……」
「うるせえ! 先代勇者の武器がこれだったんだよ! 悪いか!」
「ん? 今何て言ったんだ君?」
「耳遠いね爺さん。これが先代勇者の武器だって言ったんだよ」
萌葱はフォーヴィスが萌葱の言葉の意味を理解できず固まっている隙を突いて素早く正拳突きを放った。
「な!? ぐわあっ……まさかこんなにも格闘能力が高いとは……」
フォーヴィスは突きを食らって吐き気のような感覚を味わった。
「さっきあんたが話してる時に自分を霊術で強化しておいたのさ……それに私はこう見えて空手をやっていたからね。まあ分からないだろうけどね」
そう、萌葱は元の世界で空手を習得していたのだ。
一応、全国大会にて賞を貰っている強者である。
萌葱はフォーヴィスに反撃の隙を与えずに次々と突きや蹴りを撃っていく。
「はあっ!」
「ぐふっ……」
その悉くが人の急所や弱い箇所を突いていく。
だがフォーヴィスとてやられてばかりでは無かった。
コロン。
玉が8のマス目に入る。
「甘かったな……実はこの時を待っていたのさ……」
「クソッ、しまった!」
マス目が光り、効力を発揮する。
「8の効果は加速! 自身のスピードを格段に引き上げる!」
フォーヴィスは萌葱から距離を取り、20本もの矢を投擲した。
動きがぶれて残像が見える程の速さで。
「ーーー速い!」
萌葱はあまりの速さにたじろぎながらも即座に虫網を振り、辛うじて矢を全て捕らえる事に成功した。
しかし―――
「矢はまだまだあるんだよ?」
「嘘でしょ!?」
矢を避け損なった萌葱の体を鏃が襲う―――
「ーーー連水弾」
事は無かった。
「ふう、全くどうしてこうピンチを助ける役回りが多いのかしら。しっかりしてよ」
「ミコモちゃん!」
水色の光を身に纏うミコモ。
そう、ロゴス戦の時のように依代に魔力を注いだ状態だ。
「全部弾かれてしまうとはね……やるねえ君」
「いいからさっさと始めるわよ」
感心するフォーヴィスにミコモは興味無いとばかりに答えた。
けれども、ミコモの纏う霊力が前とは少し異なっている事は本人以外誰も知る由も無かった。




