陰キャ初の仲間
「マジでどうしよう。冒険者ギルドが見つからない。
というかこの街広過ぎるんだよ……ペイペイドーム何個分だよ……」
ローカルな事を口走りながら困惑する影虎。
影虎の今の心境を語るのなら、修学旅行にてカバンにあるはずのお土産代が入った財布が見付からない時の気持ちである。
そして影虎には見知らぬ人にいきなり話しかける事が出来る程のコミュニケーション能力が無かった。
初対面の人と会話するのは緊張してしまう為些か苦手である。
しかし友達との会話など内輪のみの会話だと立板に水なのが影虎の不思議な所だ。
そんな風に困り果てて前をよく見ずにふらついていると、
ドンッ!
人にぶつかってしまった。
「あ、すみません」
「あら別にいいのよ~人混みはちゃんと前見て歩くのよ~」
「えっ……⁉」
影虎はその言葉を発した人物を見て絶句した。
白銀の光沢を放つ全身鎧を見に纏い。
腰にはレイピアと短剣を携えており。
どこか中性的な魅力も感じさせられる完成された美しさを持つ顔立ち。
南国の海を思わせる透き通った蒼い瞳。
長い金髪が太陽の光に照らされて煌めいていた。
要するに騎士のような格好をしたとんでもないイケメン。
そんなイケメンがオカマのような喋り方をしていたら誰であっても固まってしまうだろう。
現に影虎は先程から「え……⁉」としか言えない程言語能力を失っていた。
そして影虎がフリーズしているのをイケメン改めオカマは妙に思ったのか声を掛けた。
「あらどうしたの固まっちゃって……って……え?ちょっとどうしたのその血⁉何があったの君⁉」
オカマは影虎がエセ鶏を倒した時の帰り血を見て驚愕している。
金髪碧眼のイケメンがオカマ口調なのも十分驚きだが、奇妙な格好をした少年が血塗れで刀を持っている方が衝撃的である。
オカマの剣幕で我に返った影虎は慌ててオカマに事情を説明した。
当然、異世界から来たなどとは言わず、道に迷い遭難してしまい、この血は野性動物が襲いかかって来たのを返り討ちにしたときに付いた物であると説明した。
説明している内にオカマも納得したのか興奮が収まっていった。
「そうだったのね…遭難して大変だったでしょう。行く宛はあるの?」
「それが無いんですよ……」
「なら私が面倒を見ようか?実は私、こんなか弱い見た目だけど冒険者をやっていてパーティーを組んでるんだけど、今丁度人手が足りない所なの。どう?私達と一緒に冒険者やってみない?」
「えーと…」
影虎は一瞬思案した。
冒険者はいいが果たしてこのか弱い(自称)のオカマとやって行けるのかと。
そしてどこからどう見ても強そうなオカマが何故自分のパーティーに影虎を誘うのかが分からなかったので思い切って聞いてみる事にした。
「何で俺を誘ってくれるんですか?俺に戦う力なんてありませんよ?」
「私だって弱いわよ?それに大丈夫、遭難しても生き残った君ならすぐに強くなれるわよ。心配しないで、私達があなたを鍛えてあげるから!」
影虎はその言葉を聞いて、このオカマさんは信用できそうだ、と思った。
言葉に真剣さがあるし、初対面の影虎の事をよく考えてくれている。
もう一人パーティーメンバーがいるらしいが、この人の知り合いならまあ危ない人では無さそうだ。
ある意味不安ではあるが。
影虎はそのパーティーに入る事を決意した。
「なら、俺を強くして下さい!よろしくお願いします!」
「そうこなくっちゃ!なら早速、私のもう一人のパーティーメンバーにあなたを紹介しに行くわよ!」
「はい!あとそう言えば自己紹介がまだでしたね」
「あらやだ私ったらうっかり!私の名前はエルドレットよ。長いからエルでいいわよ~よろしくね」
エルドレットはそう言ってにっこりと笑った。
「俺は尾野影虎って言います。改めてよろしくお願いしますねエルさん」
「ええ、オノちゃん」
「あっそっちが名前じゃ無いんです。影虎の方ですよ。あとちゃん付けは珍妙なんでやめてください……」
何故か初対面にしてちゃん付けで呼ばれる影虎。
「えっあらそうなのごめんね?じゃあカゲトラちゃんね」
「俺の話聞いてました⁉ちゃん付けはやめてくださいよ本当に!俺こう見えて18歳なんですよ⁉恥ずかしいですよ!」
影虎はそう全否定するが、エルドレットはそれをまるで意に介せずにこう言った。
「ええー可愛いからいいじゃなーい」
「いや俺に可愛さを求めないでください!」
「カゲトラちゃんが何と言おうと絶対にやめないわ☆」
「そんな殺生なああああああああ!」
影虎の異世界初の知り合いは、オカマのイケメンというカオスな人だった。
しかし影虎が普通にエルドレットと話せたのは、そのインパクトのお蔭であった。
※ペイペイドームとは?
福岡県が誇る広さ日本一のドーム球場。
福岡ヤフオクドームから福岡ペイペイドームに改名されたが、ヤフオクドーム時代を偲ぶ福岡県民が大勢いるとか居ないとか。




