陰キャVS陽キャその1
『上手く計画通りに事が進みましたわ、フォーヴィス様』
『よくやった。これで名誉挽回だな。それでは私も出撃する』
『頑張って下さいね! フォーヴィス様!』
テへラはフォーヴィスとの念話が切れたのを確認し、その近くで戦っている勇者二人を見ながらほくそ笑んだ。
「ふふふ……私の霊基『念力』も使いようね。五十キログラムの物も持ち上げられないのに」
テへラは魔族としては弱い力の『念力』の能力を所有していた。
「馬鹿にされてた能力がここまで役に立つなんて……フォーヴィス様に感謝ね。さて……私は遠くで三人の戦いを観戦させてもらおうかしら。人族を滅ぼすのが人族だなんて本当に滑稽だわ。ふふふふふ……」
そうしてテへラは三人の死角となる場所で戦いをじっと見つめた。
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「オラァ!」
「ぐっ……!」
晴人が影虎に攻撃を仕掛ける。
影虎はその攻撃を刀で受け止めるが、晴人の力は強く押されてしまう。
それ所か晴人の力が増してきているような気がする。
「影虎、俺はお前と違って卑怯者じゃないから教えてやるよ。俺のこの先代勇者が遺した剣…アンサラーは俺自身の力を強くしてくれるんだよ。こんな風に!」
晴人がそう言った瞬間、それに応えるように剣に付いている赤い宝石が光った。
その次の瞬間、晴人の力が爆発的に上がった。
影虎はあまりの力強さに弾き飛ばされてしまう。
「うわああああああ!」
「俺は絶対に負けねえぞ! オラオラァ!」
晴人は更に影虎に剣を振るう。
(こいつ……同じ勇者なのに俺とは全く毛色の違う能力だな……そんでどう考えても俺の方がパワー負けしてる……こういう時は……逃げるしかねー!)
影虎は晴人の剣をギリギリで回避し、晴人に背を向けて思いっきり走り出した。
「お前えぇぇぇっ! 勝てないと分かれば逃げるのか!? 流石は卑怯者の影虎!」
「あの兵法家孫子だってどう考えても勝てない時は逃げるんだぜ、孫子に謝れ晴人!」
晴人はまさしく鬼のような形相で追いかけてくる。
「カミルレ、君は玉座の間に戻って城の人達にこの事を伝えるんだ!」
「わ、分かったわ」
「………」
影虎はあえてそれに口を挟まなかった。
それは何故か。
(王様とかエルさんとか萌葱さんなら冷静な判断をしてくれる筈……事情を説明すれば分かってくれる! そもそも刀を動かす霊術なんて使えないしそんな依代も持ってない。これで十分な証明になる!)
という考えがあったからである。
だが今の晴人では聞いてくれそうにもない。
故に。
(大人しくさせるしか無いって訳だ……)
影虎は脳をフル回転しながらも晴人から逃げ回った。
そして適当に近い部屋の部屋の中に隠れる影虎。
「無駄だ影虎! そんなチャチな隠れ方で本当に隠れられるとでも思っているのか!?」
晴人は影虎が隠れた部屋を開けた。
しかし……
「な!? 誰も居ない!? 嘘だろ!?」
部屋の中はもぬけの殻だった。
(へっへっへ、計画通り)
影虎は忍者のように天井に張り付いて晴人の目を欺いた。
実は先程影虎が依代の試し撃ちをしたついでに、この黒装束の性能も確かめておいたのだ。
その結果、何とこの黒装束は、一回だけ空中を蹴って跳ぶ事ができ、それ以外にも壁に張り付いたり、敏捷性が上昇したりと、実に便利な代物だった事が判明した。
そこで影虎はそれを利用して天井に張り付き、隠行を発動させ、完全に隠れたという訳だ。
だが。
「あの野朗何処に行きやがった……」
(このまま隠れていても晴人が広い範囲に攻撃できる技とか霊術とか魔法を持っていたら不味いな……どの道攻撃はしないとヤバい)
そう考えた影虎は懐から布を取り出し、隠行の効果をより高める。
(これを食らって少しは落ち着け! 抵抗解除!奪気斬!)
影虎は抜刀と共に霊力剣で体力のみを奪う奪気斬を付与し、切り掛かった。
因みに奪気斬は城の宝物庫にあった依代の一つだ。
「ぐあっ! な、何だ一体!? ……うっ、体が何故か気だるい……」
(よし効いたぜ! 加減は難しかったけどな)
影虎は心の中でガッツポーズを取った。
続けて影虎は後ろに下がり、今度は刀を納めずに奪気斬を乗せる。
(蜃気楼は抵抗解除が出てると発動してくれないんだよな。困ったもんだぜ)
心の中でぼやきながら影虎は晴人を袈裟切りにした。
「くっ! またやりやがったな! 変な技使いやがって……」
晴人は影虎の技によりよろめいた。
大分疲労が蓄積しているようだ。
影虎はこのまま押し切れば勝てる! と勝ちを確信したが。
「影虎……どうせまだその辺にいるんだろ? もうちょっと広い所で戦うというのはどうだ?」
何を思ったのか晴人は独り言のように呟いて部屋を出た。
部屋を出た晴人は文字通りの伝説の剣、アンサラーを顔の前に構えた。
いわゆる騎士のポーズという物である。
影虎が晴人の行動を不思議に思っていると…
「卑怯な真似はもう二度とさせないぜ……発動しろ、勇敢なる騎士」
晴人がそう言うと、晴人の周囲を柔らかな光が包み込んだ。




