解析
しばらく待っていると、エルドレットがオウレンを連れて来た。
オウレンは玉座の間に入ると王にこう挨拶をした。
「ご無沙汰しております国王様」
「解析の霊術師とはお主の事じゃったのか! 久方ぶりじゃのう、オウレン。お主が冒険者を引退した時以来か?」
「左様にございます。お会い出来て感服です」
「凄いなオウレンさん……王様に顔と名前を覚えられてるって……」
影虎が驚いてそう呟くと、エルドレットが影虎に囁いて教える。
「オウレンさんは若い時大活躍していたって噂よ」
「じゃあその時に表彰とかされたんですね……」
そんな二人をよそに王がオウレンに話を続ける。
「既にエルドレット殿から話は聞いておるかもしれんが、ワシと勇者殿達がお主をここに呼んだのは他でもない。お主の解析の霊術でここに魔族が居るかどうか調べてほしいのじゃ。頼む! 危険な依頼じゃが、国民の命がかかっておるのじゃ!」
「国王様の頼みとあれば、謹んでお引き受け致しましょう」
「そうか……本当に助かる!」
王がオウレンに強く感謝をする。
しかしオウレンが申し訳無さそうにこう続けた。
「ですが私の解析の霊術なのですが……一人解析するとその後一時間程使えなくなってしまうのです……力及ばずして申し訳ございません!」
「構わん! 優先順位を付けて順にやって解析するのじゃ! まずは萌葱殿が言っていた赤髪のメイドからじゃ!」
「「「「「はっ!」」」」」
王の側近達がメイド達の召集に取り掛かった。
「じゃあ俺達は魔族を倒す役目、というわけですね」
晴人が仲間を代表して王にそう聞くと、王は申し訳無さそうに言った。
「その通りですじゃ。頼みましたぞ。ワシが役に立てなくてすまない……」
「任せて下さい。必ず魔族を倒します」
そして影虎達は一旦各自の部屋に戻り装備を整え再び玉座の間に来る。
「まさか試した依代をもう使う事になるとは……とんでもない事になったなあ……」
影虎は思わずそう呟いたのであった。
それから程なくして城の赤髪のメイドが召集され、オウレンが一人目に解析の霊術を行使したが、魔族では無かった。
「マジか……早く見つけないとやばいってのに……」
影虎がそう言うと、王が影虎達に指示を出す。
「それならば勇者殿達は二手に分かれて頂きたい。ここに残り魔族の疑いがある者の見張りと、魔族がいざ決起を起こした時の為に城の警備を。よろしく頼みましたぞ」
「分かりました。じゃあ影虎、俺とカミルレとお前とで警備をするぞ」
「何でよりによってお前なの? いやそんな事言ってる場合じゃないけど、魔族が居るって分かってるここに強そうなお前が居た方がいいんじゃね?」
影虎が晴人にそう聞くと、晴人はこう答えた。
「決起起こす魔族の方がよっぽど危ないよ。それだけ自信があるって事だし。それに俺等以外の皆だって強いし。あとカミルレは回復要員に必要だろ?」
「それもそうか……分かった、それで行こう」
「了解よハルト。任せて!」
かくして萌葱、エルドレット、ミコモ、アルメリアはここに残り、影虎、晴人、カミルレは警備に向かう事になった。
だがこの采配が後に波乱を引き起こす。
*
*
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『まさか見抜かれるとはな……参ったものだ』
『申し訳ございませんフォーヴィス様! 私が不注意だったばかりにこんな事に……』
『………』
押し黙るフォーヴィス。
今、彼は玉座の間に居た。
彼は。
現在、テへラの魔法である“念話”で会話している。
城に魔族が潜入していると騒ぎになった直後、それを聞いたフォーヴィスはテへラに魔法で髪の色を変えて名前を偽るように指示した。
この城は使用人が多く、この状況では使用人の名簿をわざわざ取り出す程の時間は無い。
その為一時しのぎとは言え行動を制限されずに済んでいる。
だが見つかるのは時間の問題だろう。
『………テへラ、君に挽回の機会を与える』
『………有難うございます。どんな事でも成し遂げてみせますわ」
フォーヴィスの言葉に、テへラが力強く言った。
『この状況を逆に利用するんだ。翳の勇者が魔族に加担しているという嘘を君が直接陽の勇者に知らせる。そして二人の勇者を同士討ちさせた上で私が城で他の勇者や仲間を相手するとしよう。それで良いな?』
『………了解しましたわ。仲間割れをさせたら報告致します』
テへラがそう言った後、念話を解除した。
(さて……何十年振りに戦う事になってしまったな……)
フォーヴィスは焦りを感じつつも、内心久し振りの戦いに心を躍らせていた。
(私の“霊基”が震えている……お前も戦いをしたいのだな。正当なる戦いを!)




