国王
「それじゃあ王様には見つけ次第すぐに連絡を入れるように言われていますからちょっと連絡をしてきます」
「了解よ」
エルドレットがそう返事をすると、萌葱は店の外に電話をしに出て行った。
しばらくして萌葱が戻って来る。
「すぐに来て欲しいとの事です。では早速行きましょう」
四人はメコルの城へと向かった。
メコル城は街の北の方に存在する。
今四人がいる位置からはかなり遠いのだが彼等は城の城門まで行くのにさほど時間は掛からなかった。
「でかい……中世の建築技術って凄いな」
影虎は城の大きさに感心した。
赤い屋根と白い石造りの壁が高貴さを主張している。
萌葱が門番に入城する許可を即刻貰い、四人は城の中に入った。
朱のタペストリーが白い壁に飾られており、地面には赤いカーペットが敷かれていて荘厳な印象を受ける。
そして近くにいた使用人が城を案内する。
「玉座の間はこちらの階段を登った先にございます。それではこちらへ」
四人は使用人の後へと続いていく。
長い階段を抜け、やがて外の景色が見える廊下に辿り着く。
影虎はおもむろにそこの風景を見る。
「すげえ……」
影虎は松島を見た時の松尾芭蕉のような気持ちになった。
視線の先には赤い屋根の家がずらっと並び、その周りを円状に澄んだ川が囲っており、その街と川の境目を石塀が守っている。
川の向こうには広々とした森林があった。
影虎は都会では到底見られないその光景に見とれていると、ミコモに声を掛けられた。
「おいカゲトラ、何してんの? 皆行くよ?」
「あっすまん」
そんな風に歩いていると遂に玉座の間に辿り着いた。
使用人が玉座の間の扉を開け、声を掛ける。
「国王様、翳の勇者様をお連れしました」
「参れ」
「はっ!」
四人は玉座の間へと足を踏み入れた。
そこに大いなる威厳を感じさせる老爺が玉座に座っており、側には大勢の使用人と兵が控えている。
四人は玉座の前にまで進んだ。
影虎はあまりの人の多さに若干たじろいでいると、玉座に座っていた老爺が立ち上がり、影虎の目の前まで近づいてこう言った。
「あなたが翳の勇者殿ですかな?」
「は、はい! そうです」
影虎はその人物の気迫に気圧されつつもそう答えると、その人物は丁重にこう名乗った。
「ワシがこのメコル王国の王、メコル=ライトスレッド五世である。貴殿の名を聞こう」
「あ……えっと……尾野影虎と申します」
「オノ、カゲトラ殿か……こちらのモエギ殿と同じく下の名前はカゲトラの方ですな?」
「はい、その通りです」
影虎は王との会話に緊張しつつも何とか答える事が出来た。
「では早速カゲトラ殿……あなたには謝罪しなければならない事がございます……我が国の召喚儀式が失敗して申し訳ない!!!」
王はそう言い放つと深々と頭を下げた。
影虎は王という立場にいる人間が自分に頭を下げている事に衝撃を受けつつもこう言った。
「あの王様、頭を上げてください! 別に俺は怒っていませんよ。その失敗があったから俺は自由にやれたんですから!」
影虎のその言葉に、王は頭を上げ、
「そうですか……カゲトラ殿の寛大な心に感謝致しますぞ」
と言った。
続けて王がこう影虎に聞いてくる。
「それでは、モエギ殿からどの位話を聞いておられるかな?」
その問いに対し、影虎は先程の話の内容を王に聞かせた。
「それなら話は早いですな。召喚に失敗しておきながらこんな事を言うのも厚かましいのですが……我が国、ひいては全人類をあなたの力で救って頂きたい! 魔族は危険な相手、カゲトラ殿が危険な目に遭う事もあるでしょう。しかし、もし協力して頂けるのならば相応の報酬と用意を致します。どうか、お願い致します! 全人族の運命があなたに委ねられているのです! どうか、お引き受け下さい!!!」
王は影虎に風格のある声でそう言い、もう一度頭を下げた。
影虎はそれを聞いて少し考えた後、こう答えた。
「王様、俺……協力しようと思います。どうせこの国に魔族が攻めてきたら俺も共倒れですし。その代わり強くなってから参戦させて下さいね? そして、いざという時には俺は撤退します。これは絶対です。俺は生き残りたいのですから。それでも良ければ協力します。前線で今も戦っている人達に失礼だとは思いますが、俺は勇者という肩書きはあれど、能力はあれど、ただのそこらにいる人間と同じなのですから」
影虎のその言葉に、王は……
「分かりました。是非お願いしますぞ。カゲトラ殿……あなたのその心……しかと理解した!」
と、力強く言い、影虎の手を握り締めた。




