第三の能力
「な……何でクイーンポイズンアダーに毒が効いてるのよ! 耐性はある筈なのに……」
「ミコモちゃん落ち着いて。気持ちは分かるけど、今はこのクイーンポイズンアダーを倒すのよ!」
毒が効いた事が信じられず驚くミコモをエルドレットがなだめる。
「な……前にもあったぞこんなの……ま、まさか!」
影虎は漆黒の鞘を見る。
「こいつの能力だ! 間違いない! それで多分これは耐性を下げる能力なんだ!」
そう確信を持つ影虎。
「それなら毒を撃ちまくるぜヒャッハー! 毒を以って毒を制すとはこの事だぜ!」
「シュゥーーー!」
影虎は情けない事に慣用句の使い方を間違っている。
それでも影虎の放つ毒の霊術はクイーンポイズンアダーをじわじわと苦しめる。
「大分弱ってきたわね……クイーンポイズンアダーだけ毒の耐性が無いのかしら? もうこれじゃあ私達の出る幕がないじゃない」
「そうねえ……カゲトラ、ちょっとその辺にいるポイズンアダーに毒の霊術を掛けてみてくれない?」
二人はもう終わったとばかりに地面に座り込みそんな事を言ってくる。
影虎はそんな二人に額に筋を浮かべつつもこう答える。
「こいつ倒してからな。あ、体が崩れてるな」
紫色に変色し崩れるクイーンポイズンアダー。
影虎はその様子を見て完全に駆除できた事を確かめ、試しに刀を抜いてその辺のポイズンアダーを切り、そして毒を撃つ。
それはポイズンアダーの体を蝕み、細胞組織を破壊していった。
その結果に影虎はニヤリと笑った。
「え!? じゃあ今のってカゲトラがやったの? 何なのよ一体?」
「ふふ……もう一回よ~く見てろよ」
影虎はしたり顔をしながらもう一度ポイズンアダーに刀を振り、毒を放つ。
しかしポイズンアダーは毒に蝕まれる事なくただ刀で切られた痛みにのたうちまわっていた。
「あ、あれ?」
「カゲトラ、得意顔になって失敗するって一番ダサいわよね……」
二人は笑いを堪えている。
「うるせえ! ってエルさんまで笑わないでくださいよ! くそ~何で使えなかったんだ……あ、もしかして抜刀時にしか効果がないのか」
影虎は先程蛇を切った時に耐性が下がったのは全て抜刀時の時だったと思い出す。
「なるほど、そこに気を付ければいいんだな……
よし、この能力を抵抗解除と名付けよう」
「いやあああ! カゲトラの厨二病が痛い! 痛いを通り越した痛みだわこれ!」
「さっきから本当にうるせー! いいだろ別に!」
影虎が顔を手で覆っている二人にそう叫ぶ。
これがいつの日にか彼の黒歴史となるのであった……
*
*
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影虎が偉大なる黒歴史を創っていた頃、陽の勇者こと向坂晴人
はと言うと。
「さてと……戻ったよ~」
晴人は仲間のいる宿屋に戻って来ていた。
仲間である女魔法使いのアルメリアと僧侶のカミルレが晴人を出迎える。
「あ! お帰りなさいハルト!どうだった?」
「ちょっと! あたしにもハルトにおかえりを言わせてよ!」
「はあ? この前はあなたが一人でハルトと話してたじゃない!」
「あれは……その……関係ないわよ! 依頼の話! それに前もあなた……」
「こらこら、二人とも喧嘩しないの」
「「むぅ……」」
口論をし出す二人をなだめる晴人。
晴人効果は大きいのか口を膨らませつつも二人は大人しくなる。
因みにアルメリアは緑髪のミディアムヘアーの美少女で黒いとんがり帽子に黒いローブと典型的な魔法使いの格好をしており、カミルレは所謂シスターの格好をしており茶色のロングヘアーをなびかせている美人。
どちらも美人な上に両者共々晴人に入れ込んでいるのだからハーレムもいい所である。
「それで依頼だけど……前にも聞いた通り翳の勇者を捜すっていう内容の依頼だよ。そこで……まずはこの街の冒険者ギルドに聞き込みに行こうと思うんだ」
晴人の提案に即刻うなずく二人。
「ハルトと一緒ならどこでもいいわ!」
「ええ! 早く行きましょうよ! 冒険者ギルドに!」
「分かった。それじゃあ早速行こう!」
「「は~い!」」
三人は宿を出発した。
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「おえっぷ……空飛んでたら酔ってきた……降りよう……」
もう一人の勇者である巽の勇者月瀬萌葱はメコルの街を風の霊術で滑空するのをやめ地面に降り立った。
「酔うけど楽だから飛んでたけどこれじゃ捜せないな……あ~しかしどうやって何の手掛かりもない奴を捜さないといけないんだよ……」
萌葱は街を歩きながらそうぼやいた。
「本当どうしよう……あと今頃あのクソ陽キャ野朗はどうせ仲間の女共と遊んでサボっているに違いない……あーリア充マジでムカつく! 殴り飛ばして爆破したいわ~」
完全な八つ当たりだった。
当の本人は至って真面目に仕事をしている。
「もうさっさと翳の勇者とか呼ばれてる転生者を見つけて酒が飲みたい……でもどうやったら捜せるかな~」
しばらくの間考え込む萌葱。
「あ、そうだ! 翳の勇者は私と同じ転生者なんだから、あっちにしか無い物を示せば向こうから来てくれる筈だよ! 向こうは他の転生者との出会いを求めて絶対に来る!」
そう考えた萌葱は紙を取り出し絵を描き始める。
壁を下敷きにして描いた絵は五分ほどで完成した。
端正な二次元の美少女の絵だ。
「これならこっちの世界には無い物だし、人通りの多いここにこれを貼って待ち伏せして興味を持った黒髪の人に片っ端から話かけて確かめればいい! 別にこういうの好きじゃない人でも絶対にガン見する筈!」
萌葱は絵を貼りながらそう考え、ぐふふと笑った。
整った顔が台無しな笑い方だった。




