英雄認定
「クソったれー! 何でこいつら毒が効かねーんだ!」
「仕方ないわよカゲトラ。だって毒使う魔物が自分の毒で死んだら意味無いじゃない」
「確かにそうだけどさ! 毒効かないんじゃ俺の戦闘能力半減してんのと変わんねーじゃん……」
影虎は今、二人と共にポイズンアダーという魔物の討伐依頼を受けていた。
ポイズンアダーは一メートル五十センチ程の体長で、赤と茶色と黒の見るからに危険そうな柄をしている胴の太い蛇だ。
何故その依頼を受けているのか、経緯を説明しよう……
影虎達は洞窟で上級魔族、ロゴスを倒した報酬として三千万メコという一財産とも言える程の報酬を貰い、更に今度メコル城にて表彰が行われるという話が出た。
影虎は大勢の前で表彰を受けるという苦行に頬を引き攣らせた事は言うまでも無い。
そしてそんな時、件の蛇がメコルの森で大量発生し、街に出没して人々に多大な被害を与えた。
これを駆除出来るのはあの三人しかいないと再び白羽の矢が立ち、依頼を受ける事になった次第だ。
だがポイズンアダーという名の通り毒蛇である。
影虎の霊術の毒が効く筈も無い。
そのため……
「せいっ! そらあ! こいつら多すぎだろ! さっきから何十匹と切ってるぞ!」
「そうね~カゲトラちゃん。こんなにポイズンアダーが発生したっていう事は聞いた事が無いわ。不思議ねえ~」
ただただ奥義も何も行使せずに刀を振り回すのみの戦法である。
蜃気楼は攻撃用ではなく補助系の能力であるし、数が多すぎる為逐一奥義を放っていては過労死してしまう。
エルドレットやミコモは複数に有効な技や霊術を使えるが。
その上、蛇であるが故い生命力が高く、一回切った程度では死なないのだ。
影虎に苛立ちが募るのも時間の問題だった。
こんな風にひたすら蛇を切り続けていると、地を何か巨大な物が這いずる音がした。
ズルッ……
ズルッッ……
音はどうやらこちらに向かって来ているようだ。
「あのーエルさん、何か嫌な予感が!」
「もしかしたらポイズンアダーの大量発生の元凶かもしれないわね……迎え撃つわよ、二人とも」
「了解よ、エル姉」
「分かりました。でも怖ええ……」
戦車とタイマン張れる上級魔族の止めを刺した人間とは考えられない程の弱気な発言をする影虎。
しだいに音が近づいて来て、間近でその音が聞こえた時。
「シューーーーーーー!」
巨大な首をもたげた大蛇が姿を現した。
姿はそのままポイズンアダーを巨大化させたような蛇である。
全長は三十メートルは下らないのではないだろうか。
「こ、これは伝説のクイーンポイズンアダー……ポイズンアダーの産みの親で十年に一度だけ姿を現すと言われているわ。珍しいわね……」
ぽつりとエルドレットがそう呟いた。
「エル姉! 感心してないで早く技を撃って!」
「おっとごめんね。行くわよカゲトラちゃん!」
「はい!」
ミコモの声掛けで正気に戻ったエルドレットは影虎と共にクイーンポイズンアダーの周りを走って注意を惹く。
「カゲトラちゃん、あれを使うわよ!」
「もう解禁ですか!? 早いですね……それだけ俺の成長は早かったのか……では行きましょう!」
「「協奏、霧双突き!!!」」
二人は跳躍し、クイーンポイズンアダーに二人がかりで無数の突きを放つ。
この技は影虎がきちんと技を使えるようになってから……と二人の間でそういう決まりになっていた。
だが最近はロゴス戦以降も鍛錬を続けていた御蔭で影虎が霧双突きなどの手数が多い技を放っても手が若干痺れる程度で済んでいる。
すなわちこの前までの影虎のように痺れて刀が持てなくなるという事が無くなっているという事である。
影虎はかなりの進歩を見せていると言えるだろう。
その為今回エルドレットも許可したのだ。
「シュゥゥゥゥゥーーー!」
二人の突きはクイーンポイズンアダーに絶大な効果を与えたようだ。
しかしまだまだ生命力があるようで、地面にのたうちまわってそこらの木をなぎ倒している。
「でも効いてるな……どんどん仕掛けますよエルさん!………抜刀技・月暈!!!」
影虎は刀を一旦漆黒の鞘に納め、霊力を籠めて腰を上手くつき、高速の抜刀を放った。
刀は深くクイーンポイズンアダーに潜り込む。
「シーーーー!」
クイーンポイズンアダーは痛みでさらにのたうちまわる。
それを見たエルドレットは。
「カゲトラちゃんに負けてられないわ! 奥義………九枚笹!!!」
「あいつに負けたら師匠の名が折れる! ーーー飛水連斬!!!」
二人がクイーンポイズンアダーの体におびただしい量の傷が出来ていく。
肉体から切り離された肉が地面を動き回る。
「うわあ……ここまで生命力高いとちょっとな……もっと大人しくしろ!ーーー毒液弾」
影虎が霊術を唱えると。
「おいカゲトラ!こいつに毒は効かな……」
ミコモがそう忠告しようとした。
が、この忠告は無駄となった。
「シューーーー!?」
「え!?何で効いてんの?あれ?」
耐性があるはずの蛇に、何故か毒が効いたからである。




