幕間
お待たせしました。
遅れて申し訳ございません。
所変わってメコル城の王座にて。
王は責務をこなしつつも吉報を静かに待つ日々が続いていた。
あの報告があった後にさらに文献を調べさせた所、翳の勇者と一致点が多かった。
その為兵を総動員し捜索しているのだが、いかんせん手がかりが少ない。
黒髪に黒目、そして異能力を持つという事のみである。
捜索は絶望的であった。
黒髪黒目は多い訳ではないがたまに存在する上、異能力をそこらで行使するとは考えにくい。
「我が全兵を持ってしても無理か……」
王は何回になるか分からない溜息を付いた。
だがメコル王国にまたも救いの手が差し伸べられた。
「国王様! ライ王国とミル王国から書状が送られてきました!」
「何!? 急であるな……何かあったのか……?」
ライ王国は国土が広く、人族の国の中では軍事力も高い大国である。
メコル王国とは積極的に友好関係を結んでおり、さかんに鉱石や特産品の貿易を行っている。
また、ミル国は小人族の国で、王ではなく一族の代表が国を治めている。そして、種族の特性上手先が器用である為、他の国と服や布、芸術品などの取引が行われている。
魔族の大陸と隣接しているライ王国ならば何かしらの報がきても不思議では無いが、魔族の大陸から離れているミル国からの書状は珍しかった。
王は恐る恐る二つの書状を読み進めると、このような内容が記されていた。
「メコル王国の王、ライトスレッドよ。
勇者召喚という物は存じているか?
我が国、ライでは『陽の勇者』なる者を召喚する事に成功した。
彼はまだ未熟ではあるものの、仲間と共に上級魔族を倒してみせた程の実力者だ。いつか魔族侵攻の楔となってくれるのでは無いかと期待している。
そこで、メコル王国の方でも勇者召喚を行ってほしい。
おそらく、そちらの伝承に残っている『翳の勇者』も、陽の勇者と同等の力を有している筈だ。陽の勇者を召喚の指南役として遣わせるので、詳しい事は彼から聞いてほしい。
そして翳の勇者を鍛え上げ、我々の前線に参加してもらいたい。
頼んだぞ、ライトスレッドよ。
ライ王国国王、ライ=エドワードより」
因みにミル国の書状も似たような内容であり、勇者召喚を奨めており、『巽の勇者』を遣わせるとの事だった。
王はその書状を読み終えると、ほっと一息を付き。
「他国にも勇者の伝承はあったわい……ワシとした事が視野が狭まっておったわ……しかし勇者達には事情を説明し召喚ではなく捜索を依頼せねばならんな。それでは勇者の招待の準備にかか……」
「その必要は無いですよ、国王様」
「話は聞かせて貰いました」
「な!? いつの間に!?」
王は驚愕した。
突然、二人の若者が目の前に現れたのだから。
一人は金髪碧眼の顔立ちの整った若い男で、もう一人は黒髪を後ろで纏めている黒目の目の下に隈がある美女。
王はたじろぎながらも二人に言う。
「おぬしら一体どうやって入ってきたのだ? 最低限の警備はしていた筈じゃぞ……?」
「それは内緒です。でも兵士の方々は一人も倒しておりませんからご安心を」
と、金髪の男が答える。
王は驚きを隠せないのを感じると同時に、説明の手間を少しでも省く為のライ国王とミル国代表の思惑が感じられた。
おそらく、その辺りも勇者達に指示したのだろう。
「では翳の勇者の捜索を頼む! おぬし等なら我々には分からぬ所で見分けられるじゃろう!」
「はい、了解です!」
「分かりました」
「頼んだぞ……報酬は弾む!」
「「はい!」」
王は一瞬で玉座の間から移動した二人を見てさらに驚かされつつ。
「これで見つかるといいがのう……」
王はそう切に願った。
そして走り出した二人の勇者は。
「さてどこから捜そうか、萌葱さん」
男がそう言うと、萌葱と呼ばれた女は。
「いきなり名前で呼ぶのかよ……陽キャの性質が分からない……とりあえず西と東で二手に分かれて、夕方のなったらここの城門に集合ね」
「了解! それに俺にも晴人って名前があるんだから、そう呼んでくださいよ~」
「はいはい晴人晴人。それじゃあまた会おうね」
「はーい」
そうして二人はあまりにも速いスピードで捜索を始める。
「まずは仲間と合流するとして……さてどう捜索しようかな。
陽の勇者の能力を使うか……それとも……」
晴人は思案しながらも仲間の下へと向かう。
「萌葱さんが羨ましいぜ……巽の勇者だから風で空飛べるし」
巽の勇者は風属性の勇者である。
その為、風系統はお手の物、という訳だ。
「でもあの人、何故か城の前でばったり会った時に能力について風としか教えてくれなかったんだよな。教えてくれてもいいのに」
晴人はそうぼやいた。
この二人が影虎にどんな影響を与えるのか……
それはまだ分からなかった。




