VSロゴスその3
「あれがカゲトラの隠行って奴なのね……初めて見た」
ミコモはようやく傍から見ると馬鹿にしか見えない影虎の行動の意味に気付いた。
影虎は前もって隠行について二人に説明をしていた。
もうすでにエルドレットに見抜かれていたのと、説明しておかないと戦闘中に発動した際に二人が困惑する可能性がある為である。
「さてこれでいくらでもあいつに攻撃ができるって訳だ……ふっふっふっ……」
影虎は刀に霊術を行使した。
「ーーー霊力剣、業物」
霊力剣は刀剣に霊力を籠め切れ味を上昇させる事も出来るのだ。
重ねて掛けるにはそれ相応の霊力と集中力が必要だが。
「これで通じなかったら怒るぞ。………飛燕突き!」
影虎は技の中でも随一に速い飛燕突きを放った。
流石にエルドレットには及ばないものの、それでも人間は辞めた速さである。
その鋭い突きはロゴスの硬化能力を貫き通した。
「ぐっ……あなたも私の能力を突き破る程の技術を持っていましたか……」
そして影虎はさらにロゴスに突きや袈裟切りをしていく。
影虎の姿を認識する事が出来ないロゴスは一方的に攻撃を食らってしまう。
「何か……この状況を打開する手立ては……はっ!」
劣勢だったロゴスだが策を閃いた。
「姿も気配も分からない……だが私に与えた傷は隠せないようですね!これで攻撃の“癖”が分かる……」
ロゴスは体の傷を見て、次に影虎が攻撃して来るであろう箇所を予測する。
「そこです! 論破ァッ!」
「な、何!? そんな馬鹿な!」
ロゴスは予測した場所に硬化させた拳を振るう。
それは刀を振り下ろさんとする影虎に当たる。
「ぐあっ……」
「ご愁傷様ですがあなたの論理は論破されました。さて次はどうするのです? 論破!論破!論破!論破!論破ァッ!」
「ぎゃああああ!」
ロゴスは影虎に連打を叩き込む。
影虎は五メートル近く先まで吹き飛ばされた。
「くそっ……失敗か……まさか攻撃の癖を読まれるとは……」
予想だにしない方法で隠行を見破られ驚く影虎。
「でも攻撃は通ってるぞ……しかしどんなメカニズムで硬化しているんだ?」
影虎はロゴスの岩のようになっている肌を見てそう疑問を持った。
「それを言ったら俺の隠行も霊術もそうだな……何なんだよこの世界……」
影虎は文句を垂れながらも体勢を立て直す。
「さて……どんどん行きますよ! 論破!論破!論破!論破ァ!」
ロゴスは拳を振るい続け、影虎を痛めつける。
影虎はそれに対して袈裟切りで返す。
「そらあ!」
「フフ……甘いですよ……」
「なっ!?」
ロゴスは影虎の刀を真剣白刃取りにした。
「これを狙ってあえて突きの威力を弱めていたのです。刀は横からの力には弱いですからね……横に勢いよく曲げてしまえば……簡単に折れてしまうのですよ!」
「しまった!」
ロゴスは刀を横方向に折ろうとする。
刀はグニャリと曲がった。
曲がった。
「……え? あれ? 折れてない?」
「……折れない刀とは……一体あなたは何処でこれを手に入れたのです?」
「拾った」
「はあ……」
ロゴスは刀を折る事を諦めて刀から手を放した。
「そして……先程からあなたに突きを加えた時にあまりにも手応えが無いのは何ですか?」
「……何でだろうな」
「それはもしや先代の翳の勇者様の技、『蜃気楼』ではございませんか?」
「……はい?」
惚けていた影虎だったがロゴスの衝撃的な発言に思わず驚愕してしまう。
「蜃気楼は確か……視覚に狂いを持たせる技の筈です……確か切られた対象は相手が近くにいるように見える、というものでしたっけ……あなたなら分かりますよね? 何故ならあなたが私にそれを今行使しているのですから!」
「し、しまった! バレちまった~!ていうかこれ先代勇者の技だったの!?」
蜃気楼は常時発動しているので、刀を使えばいつでも対象の視覚に狂いが生じる。
影虎は蜃気楼を普通にロゴスに掛けても見破ってきそうだと考え、自分の視覚が狂っていると気付かせない為に攻撃が効いているふりをしたのだ。
「もう少し演技がお上手でしたら私も完全に術中に嵌まっていたかもしれませんね……」
「ちくしょう! でもお前は蜃気楼の種が分かったからってどうしようも無いだろ」
影虎はその言葉に心の中で「多分」と付け足した。
「そうとは限りませんよ?」
「え? 嘘でしょ?」
ロゴスは何故かタキシードのボタンを引きちぎり、影虎に向けて投げた。
ボタンは影虎に当たり地面に落下する。
「おいおい、まさかやけになって……」
「そこですね! 論破ァ!」
「ごふっ!」
ロゴスの視覚は狂っているのにも関わらず正確に影虎を殴り飛ばす。
「な、何で分かったんだ……? もしかしてボタンか……?」
「正解です。私のボタンまでは蜃気楼の効果は及びませんからね」
「くそっ……やっぱり蜃気楼も見破られた……ここからどうしよう……」
影虎は何か手は無いかと逆点の目を探す。
「そうだ……! ボタンだ!」
影虎はロゴスのタキシードのボタンを全て毟り取る。
「そんな事をしても無駄ですよ。蜃気楼は攻撃が入った回数で一定量効果が上がっていく技です。ですから私の体に付いている傷と、あなたの残像と本体の距離から逆算すれば、ボタン何て無くともあなたの位置は丸分かりですよ!」
「そんな……」
影虎はボタンを奪っても意味が無い事を知り絶望した。
「全部見切られちまった……もう万事休すか、くそう……」
影虎が断末魔何にしよう、等と考えていた時。
「私を忘れてるんじゃ無いわよカゲトラ。まだ私がいるわよ」
「ミコモ!」
ミコモが水色の光に包まれながら悠悠と影虎とロゴスの間に入った。
「ーーー真、飛水斬」
ミコモが霊術を唱えた刹那、ロゴスの体に赤い鮮血が走る。
「すげええええ! 何これ!?」
「依代に霊力を注ぎ込んで威力を底上げしたのよ」
「それ俺にも教えてくれよ……」
突っ込む影虎を華麗にスルーし、ロゴスと相対するミコモ。
「霊術の恐ろしさを見せてあげるわ」
「はあはあ……私はそれを論理で退けて見せましょう」
ロゴスは大きい傷を負っていても強者の余裕を崩していなかった。




