VSロゴスその2
「まだ俺はミコモに霊術を掛けてもらってない……やっぱりエルさんの言う通り下がっておこう……」
影虎は隠形を解除しミコモの所まで下がった。
そしてエルドレットの戦いを見る。
「はあっ!」
エルドレットがロゴスに鋭い突きを何回も放つ。
ロゴスは流石に全て避けきってこそはいないものの、大半の突きを腕で捌いている。
常人には到底目に追えるものではない突きを。
「私の論理はそう簡単には論破出来ませんよ……人間にとって重要なのは論理を組み立てる事です。戦闘においてもその事は言えるでしょう。そう、よく観察しよく考えるのです。そして構築した論理を実行するのです!それが出来ているからこそ私は強いのですよ!」
そう豪語したロゴスはエルドレットに硬化させた拳を無数にぶつけていく。
「論破!論破!論破!論破!論破!論破!論破!論破!論破!論破!論破!論破!論破!論破!論破!論破!論破!論破!論破!論破!論破!論破ァァッ!」
ロゴスの鉄拳が容赦なくエルドレットを苛む。
「ぐあっ!」
しかしミコモの霊術の御蔭か先程よりかは衝撃も少ないようである。
「でもやっぱり押されてる……あいつ強いにも程があるだろ……」
思わずそうぼやく影虎。
「それにしてもあいつのラッシュの掛け声何なんだよ……論破論破って……」
影虎は不思議で仕方が無かった。
そんな風に影虎が思考に暮れていると、エルドレットがぽつりとこう言った。
「これじゃあ埒があかない……いずれ体力も霊力も尽きて倒れてしまうわ……
こうなったらあれを使うしか無いわね……」
「ほう、奥の手ですか。これは見物ですね」
エルドレットの言葉に対しロゴスはそう感想を述べた。
「おっ!? もしかしてまだ奥の手が!? 一体何だ? そんなの教えてもらって無いぞ!」
影虎は追い詰められている状況だがエルドレットの奥の手が非常に気になった。
エルドレットはレイピアに手をかざし、白い光を宿らせる。
「あれは確か睡蓮突きかな? ミコモが大変な事になった時に使った技だ……奥の手では無い筈だけど……」
影虎が不思議に思っていると、エルドレットがレイピアを前に構え。
「………霧双睡蓮突き!!!」
「技を混ぜた!? そんな事が出来るのエルさん!?」
影虎は驚愕させられた。
影虎達が技を放つ際には、刀剣に籠めた霊力を安定させ、それを保ちながら敵を切っているのだ。
その一連の動きはトランプタワーを六段積み上げる程の集中力を必要とするのである。
すなわち二つの技を合わせるという事は普通の技の二倍以上の集中力を要するのだ。
それをエルドレットは行おうとしている。
因みに、影虎が二週間でそれだけの集中力を手に入れられたのはひとえに濃密な修行を積んだ事に他ならない。
エルドレットはロゴスに睡眠を誘う突きを無数に浴びせた。
「くっ……何て論理的に素晴らしい攻撃……これは論破されたと認めざるを得ませんね……」
ロゴスは軽くふらつきながらそう言った。
どうやらかなりの効果があったようだ。
「これはいける! エルさん、さっきのやつをもう一回……」
お願いします、と言おうとした時、エルドレットが影虎達の所まで下がり。
「さっきの技は頭に負担が大きいから使うと猛烈に眠くなっちゃうのよ……後は頼んだわよ二人とも……」
そう言って眠りに落ちてしまうエルドレット。
「おいー! 俺とこいつだけでどうあいつと戦えって言うんだよー!」
「エル姉ー! 起きてよー!」
二人はエルドレットをゆすり起こそうとするが、まるで起きる気配が無いので起こすのを諦めた。
「しょうがない……ミコモ、補助の霊術は唱え終わってるのか?」
「終わってるわよとっくに。掛けようとしたらあんたどっかに行ったじゃない……」
「す、すまん……」
影虎は面目が立たなかった。
「ほら掛けたわよ~。分かったらとっとと私の強力な霊術を唱える時間を稼いできなさい」
「もうちょっと言い方あるだろうが! まあ行ってくるわ」
そう言って影虎はロゴスの前に立つ。
「ようやくあなたの出番、という訳ですか。放った後に眠ってしまう技を使うとはあなたの仲間は非論理的ですね……」
「論理はともかくお前も眠くなってるんなら結果オーライじゃないか?」
「私の論理はこの程度で鈍るような物ではありませんよ」
ロゴスはそう言い放った。
「どうせハッタリだろ?さっき思いっきりふらついてたじゃん」
「おやおや、ハッタリも一つの手段なのですよ?死せる公明、生ける仲達を走らすという言葉の語源を知らないのですか?」
「何でお前が三国志を知ってるんだよ……」
影虎はそろそろ頃合いだと刀を構え直し。
ーーーミコモの背後にまで下がった。
「え? 早く行ってきなよ。馬鹿なのカゲトラ?」
「……はい?」
影虎の突然の謎の行動に、ロゴスですら開いた口が塞がらない。
だがこれは……
「隠形、発動してくれ!」
[かしこまりました]
隠形を発動させる為の行動だ。
どんな物でも影虎の姿を隠しきれれば隠形はフルスペックで発動できる。
影虎は忍者のように布に隠れ、間合いを詰める。
そんな影虎を認識できないロゴスは。
「何!? 勇者様は一体どこへ!?」
慌てふためいている。
影虎はロゴスの様子を見てニヤニヤしながらこう言った。
「ロゴス、お前の論理とやらがこの俺に通用するかな?」




