チート能力
「さてチート装備を手に入れた事だし、さっさとここから出るか。あれだけ伝説の剣っぽく刺さってたんだから、まさか弱いって事は無いよね?」
勝手にチート装備と期待している刀を手に影虎は出口を探す事にした。
それにしても壁綺麗だなあ~どんな建材使ってんのかななどと感心しながら歩いていると、遠目に扉が見えた。
「よっしゃ扉発見!ここから俺の異世界無双が始まるんだ……!」
影虎はその扉に向かって足を一歩踏み出した。
その時だった。
[対称Aに対し隠行を発動可能です。発動しますか?]
[対称Bに対し隠行を発動可能です。発動しますか?]
「うひゃあ⁉」
突如影虎の頭に機械的な声が響いた。
影虎はその声に驚いて尻餅をついてしまった。
な、何だ今の……まさか俺のチート能力ってやつか……?と影虎は咄嗟にそう思った。
しかしその声が正しいとして、一番重要な事は扉の向こうに何かがいる、という事だろう。
人間ならまだしも、魔物等であった時には殺される危険性もある。
そこで影虎はもう一度先ほどの声が出てきて隠行とやらを発動させてくれないかと、色々試す事にした。
「ヘイ隠行、隠行を発動させて」
[かしこまりました]
まさかの一発成功である。
さながらどこぞの人工知能のようだと影虎は苦笑した。
そして影虎は扉に近付き様子を窺う。
すると微かに話し声が聞こえてきた。
内容は聞き取れないが男の声のようだ。
影虎は少なくとも魔物などでは無さそうだと安心して扉を開けようとしたが、ふと気付いた。
ここにいる人が善人とは限らないという事を。
(万が一盗賊とかだった時ヤバい……対抗手段がさっきの隠行と刀くらいしか無いぞ……ここはこの人達がどう動くか様子を見よう)
そう考えた影虎は扉を開けず聞き耳を立てた。
しかしいくら様子を見ようと動く気配は無く、未だに話す声が聞こえる。
待つのに痺れを切らした影虎はいっそのこと扉を開けて扉の裏に隠れ、隙を見て逃げる事にした。
「よいしょ」
扉は簡単に開き、すぐにその裏に隠れる事に成功した。
「何だ⁉」
「いきなり扉が開いたぞ⁉」
「何かいるのか⁉」
そして男二人は神殿に入って来た。
二人は中世の兵士といった風貌で、金属製の鎧に身を包み、ロングソードを持っていた。
影虎は自分が刀を持っているしもし見つかって牢獄にでも連れて行かれたら大変だと考え、二人がこちらの方向を向いていない隙に神殿を後にした。
※
※
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神殿から出た先は短い洞窟で、走っているとすぐに外の光が見えた。
外はどんな感じなのだろうと影虎は心を弾ませて外に出た。
そこには、見渡す限りの森林があった。
木漏れ日が差しており明るく、小鳥のさえずりが聞こえてくる。
影虎は森林に足を踏み入れた。
そして影虎は空気が美味しいぜ……などと思いながら進めそうな所を進んでいたが、そんな事を考えていられたのは最初だけだった。
「ぎゃあ~虫がいる!何この虫虹色に輝いているんですけど⁉って今顔に蜘蛛の巣ついちまった~もうこの森嫌い!」
そう、森などの自然に虫は付き物である。
その法則は異世界でも変わらない。
そうして虫に恐怖を感じていると。
[対称Aに対し隠行を発動可能です。発動しますか?]
先の声が影虎の頭に響いた。
「うわお!ビビった~え?もしかしてさっきの二人?」
影虎は神殿があった方を見たが二人が来る様子は無い。
それでも何がいるか分からない以上一応発動させておく事にした。
そして慎重に進んでいると、影虎のいる場所から十メートル程離れた所に鶏らしき鳥がいるのが見えた。
それは鶏に似てはいるが鶏冠が青く、羽が四本もあった。
影虎は異世界にはあんなのもいるのか、と驚いた。
しかし同時に、影虎の厨二病が炸裂する。
(弱そうだな。狩ったら経験値とか入るかな……隠行もあるし、倒してみるか!)
影虎は威勢のいい発想に反してそろりそろりと足音を立てないようにその鶏らしき鳥……エセ鶏に近づいた。
本来こういった場合はむやみに近づかない方が良いのだが、自分が隠行という異能力を持っている事と先ほどの兵士二人にも見つからなかった事が影虎の今の行動に繋がった。
そしてエセ鶏に刀を振れば当たる距離にまで近づいた影虎はエセ鶏に向け刀を勢いよく振り下ろした。
スパッ!
「コケーーー‼」
刀はエセ鶏の肉を豆腐のようにすんなり切り、エセ鶏は実にあっけなく事切れてしまった。
流石に骨までは切れなかったものの、この刀は中々の業物だと言えるだろう。
(でもチート装備にしては効果が地味だなあ…まあこの隠行がこの刀の能力かもしれないし別にいいか。どっちにしろあんまり目立つような能力じゃないけど…あとエセ鶏倒したけど経験値は?何もアナウンス的な物が無いよ?)
どうやら経験値は入らないシステムらしかった。
それじゃあ俺血塗れになっただけじゃん、という事に影虎が気付くのにそう時間は掛からなかった。