迷路
投稿が九時以降のなる事も増えそうです。
ご迷惑をお掛けします。
そんな風に虫と格闘しながらしばらく歩いていると。
ようやく件の洞窟の入り口に辿り着いた。
その扉は普通の住宅のドアの三倍程の大きさで、影虎が召喚された場所である神殿と同じく青白い光を放っており、扉の中央には鍵穴と思われる細長い穴が空いていた。
「ここがあの洞窟で間違いないわ。さて、扉を壊しましょうか」
「は~い。飛水龍哮ならいけるわね多分」
「おいちょっと待てや!」
「「ん? 何よ?」」
強引に扉を破壊する気満々な二人に影虎がストップをかける。
「何で最初から扉を力技で開けようとするんだよ! こういうのはもっと調べてからするもんだろ! この鍵穴っぽい奴なんかそういうトリックの香りがかぐわしいだろ!」
「どっちも同じ事じゃない。大事なのは結果なのよカゲトラ」
「いやまず頭使えや! その力技使うのにかなりのコストが掛かってんだろ! 霊力とか! それを消費したという結果も残るだろーが!」
影虎がそうまくし立てると、二人は不思議そうな顔をした。
「だってカゲトラちゃん、ギルドでも扉を破壊してもいいって言ってたわよ」
「だからまずは考えましょうよ……」
「あっそ。じゃあさっさと考えなさいよカゲトラ」
「お前も考えるんだよアホ」
しかし影虎は扉の建材と鍵穴の形ですでになんとなく察しはついていた。
影虎は立ち上がって刀を抜き、鍵穴に刀を差し込んでみた。
するとどうだろう。
扉がひとりでに訪問者が来た事を歓迎するかのようにゆっくりと開いた。
「え? 開いた? 嘘でしょ!? な、何でこの扉開いたのカゲトラちゃん……」
驚いた顔でそう聞いてくるエルドレットに影虎は得意げにこう言った。
「もちろん勘でございます」
「それ得意げに言う事なの? カゲトラ」
「当たり前だろ!? 山勘という言葉は戦国武将がルーツなんだぞ」
「ごめんカゲトラが何言ってるかさっぱり分からないわ」
虫を見る目で影虎を見るミコモに、ひどくマイナーな武将のネタをひけらかす影虎。
当然異世界人のミコモに通用する筈が無かった。
そんな中、一人思案顔のエルドレット。
「それにしても何でこの扉はカゲトラちゃんの刀で開いたのかしら……まあその前にここの調査が先だわ……二人共、ここから先は慎重に先に進むのよ」
「ええ、もちろんよ」
「間違って霊術ぶっ放すなよミコモ」
「カゲトラじゃあるまいしそんなドジはしないわ。あんたこそ精々私達の足を引っ張らない事ね」
「しねーよそんな事。じゃあ行くか」
三人は洞窟に足を踏み入れた。
恐ろしい強者が待ち受けているとは知らずに。
*
*
*
三人は足音を立てないよう気を付けながら洞窟を探索した。
「結構複雑だなあここの洞窟。まるで迷路みたいだな……」
影虎の呟きにエルドレットが地図を描きながら答える。
「もうマッピングが大変よ~。本当に迷路だわ~」
「それにしてもおかしいわ……何でこんな今まで誰にも知られていなかった洞窟がこんなに整備されているのかしら……」
「やっぱりお前でもそう思うか~。何でこう鼠一匹も出ないんだろうな」
影虎は一周回って薄気味悪く感じてきた。
先ほどから生物の気配がまるで無いのだ。
洞窟の壁も完全に整備されており先ほどの扉と同じく青白くツヤツヤとしている。
どの道を行ってもずっとその光景が続くのである。
「また行き止まりだわ……この洞窟を造った人間は絶対性格が悪いわね……少しはマッピングする人の事も考えてほしいわ!」
「こんな迷路みたいな洞窟造る人間は絶対にそういう考えを持たないと思いますよエルさん……」
そんな事を言いながら迷路に惑わされつつも進んでいると。
「あっ、やっと扉を見つけたわ!でも何かとてつもない気配を感じるわ……」
「おいやめろミコモそんな怖い事を言うんじゃない。びびるだろうが!」
扉を発見した。
だが、扉からは異様なプレッシャーを感じる。
「ミコモちゃんの言う通りとんでもない気配ね……このまま先に進んで大丈夫かしら……」
「エルさん、こういう時は逃げた方が良いですって。危ないですし」
影虎はもうボスの気配しかせず、逃げた方が懸命だと判断した。
それは流石に同意見のようで二人もその意見に頷いた。
しかしその時、扉が勢い良く開いた。
「何故逃げようとするのです?」
扉を開いたのは白いタキシードを着た青髪の男。
短く切り揃えられた髪は銀縁の眼鏡の相まって極めて理知的な印象を受ける。
インテリなイケメンといった風貌だ。
その男がこの異様な気配の持ち主である事は一瞬で分かった。
こいつは本当にやばいと咄嗟に逃げ出そうとした三人を素早く捕まえる男。
そして扉の中に三人を放り込み口を開いた。
「もう一度聞きましょう。何故逃げようとしたのです? 私はそれが知りたい」
男は明瞭な声で再び三人に問う。
その問いに答えたのは影虎だ。
「あんたがいかにもやばそうな雰囲気出してたから戦略的撤退をしたまでだ」
「ほう……成る程……中々懸命な判断ですね」
男は感嘆するようにそう言った。
影虎はひとまずコイツに敵意があるかどうか判断する為に会話を紡ぐ。
「そう言えば……あんたは一体何者なんだ?」
男は影虎のその一言に手をポンと叩き。
「おっと申し送れました。私の名前はロゴス=レゲイン。あなたのような勇者様に試練を与える魔族、とでも言っておきましょうか」




