魔族襲来
そうして影虎は修行を積み続け、やがて二週間の時が過ぎた。
影虎も少しだけエルドレットの奥義を行使できるようになり、毒の霊術も複数回放てるようになった。
そんな折、エルドレットとミコモにそろそろ依頼も受けて実戦力を鍛えるべきだと言われ、とりあえずまたゴブリン討伐クラスの依頼を受けようという話になり、前準備として回復薬などを影虎が買出しに行った時、事件が起きた。
プルルルル……
「ん? 携帯が鳴ってる……何だろう?」
影虎はエルドレットにもしも何かあった時の連絡用にと携帯を薦められ、ゴブリン討伐の報酬でそれを買っていた。
スマートフォンではなくガラケーである所が先代勇者の年代が伺える。
出ているのはオウレンの孤児院の番号だった。
影虎は嫌な予感を感じつつもその通話に出た。
「はい、影虎ですが」
「おにーちゃん⁉ この書いてある番号ミコモおねーちゃんの携帯じゃないの⁉」
孤児院の子供その1ことポコナがそうまくし立てる。
影虎はそのただならぬ様子が心配になりポコナから何があったのか聞き出そうとしたが、切られてしまった。
「あいつらに何があったんだ……? ミコモに助けを求めるって事は何か戦力が必要な訳だよな……まさか魔族でも出没したのか?」
一応オウレンも非戦闘向きの霊術の適性であるとは言え、先の握力といいそれなりの戦闘力はあると言えるので、大抵の相手ならば倒せる筈である。
しかしポコナのあの慌て様からオウレンは苦戦している可能性がある。
それだけの相手という事だ。
「孤児院から家はだいぶ距離があるからミコモはすぐには駆けつけられないな……俺は今割と孤児院に近いな……とりあえず行くか! 何か役に立てるかもしれないし。あの様子じゃあいつらミコモに連絡できるか分からないから俺も一応しておこう」
携帯にミコモの番号を呼び出して電話をかけた。
プルルルル……と電話の音が鳴り、ワンコール目でミコモが出た。
「何⁉今影虎と電話してる場合じゃ無いんだけど!」
ミコモはかなり焦っている様子だった。
影虎はもうポコナからの連絡が来ているのではと察した。
それでも念のため聞いておくことにした。
「孤児院のポコナから連絡来た?」
「来たわよ‼ それが何⁉ 今行く所なんだけど!」
影虎はやっぱりそうかとポコナのしたたかさに舌を巻いた。
「それが確認したかったんだ。あいつらちゃんと連絡できるか心配だし。急げよ」
「言われなくても分かってるわよ! お前も急げ! 時間稼ぎくらいは出来るでしょ!」
ミコモはそう言い放って電話を切った。
「さて……急がないとな」
影虎は孤児院に向かって走りだした。
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必死に走って孤児院に来てみると、庭で魔族らしき人物とオウレンが恐怖で立ち上がれない子供を守りながら戦っているのが見えた。
「オウレンさん! 大丈夫ですか⁉ 助太刀に来ました!」
必死に戦うオウレンにそう声をかける影虎。
するとオウレンは少し安心したような表情をした。
「ありがとうカゲトラ君助かるよ……中々の強敵でね、大変だったよ。依代と刀はあるかい?」
「護身用にいつも持ち歩いています」
そう言って影虎は刀を抜いて構えた。
「しっかりしているね……頼もしい限りだよ」
「キャハハハハ! 雑魚がいくら来たって無駄よ~」
金髪で漆黒の翼が生えている女魔族は笑いながらそう貶した。
影虎はそれに動じる事なく呼吸を整え一言。
「それはどうかな? ーーー毒液弾!」
「おっと危ない」
影虎が不意打ちで霊術を放つも魔族の女は翔んでそれを回避した。
「避けられたか……次はこいつだ!」
「おお~何かな? またしょぼいさっきの奴かい?」
影虎はオウレンに目配せをし、オウレンが頷いたのを見て影虎はいつもの茂みに隠れた。
それを見た女魔族は腹を抱えて笑った。
「下級魔族のこのエリス様相手に大口叩いておきながら何をやっているのかしら。本当人族って滑稽ね」
「ーーー毒液弾」
「ぐあっ! 一体何処から⁉ あいつは一体何を⁉」
布に隠れて隠行を発動させてから霊術を放つ影虎。
今度は女魔族……エリスの体に直撃させる事に成功した。
「ぐああああ! 痛い痛い痛い! 何だこれは!」
苦しむエリスに背後でそっと教えてやる影虎。
「毒の霊術さ。知らないのか? まあお前は俺の次の攻撃で死ぬ。自分を倒した技くらいは覚えていきやがれ………霧双突き!!!」
影虎は刀でエルドレットの技である霧双突きを放った。
無数の突きがエリスに襲いかかった。




