考える陰キャ
土の浄化が終わり、孤児院に戻った三人は入り口で話していた。
「いや~中々の威力の毒霊術だったね。浄化が大変だったよ」
「すみません……」
「いやいや、最初は皆こんなものだよ」
「今日はカゲトラが色々とご迷惑をお掛けしました……そろそろお暇します」
「それをお前が言うか」
「はっはっはっ、仲が良いねえ! それじゃあまた明日もおいでね二人とも」
「はい! お邪魔しました~」
「明日もか……お邪魔しました~」
二人はオウレンに見送られながら孤児院を後にした。
ふと気が付けば太陽が地平線の下へと沈もうとしている。
「もうこんな時間か……何か早かったなあ」
「まあ色々あったし。あと霊術の道具だけど、ちゃんとあるわよね」
「ちゃんと持ってるよほら」
影虎は服のポケットから勾玉を取り出してミコモに見せた。
「それ無いと霊術撃てないから絶対に無くさないでよ。因みにさっきまで霊術知らないカゲトラにも分かりやすいように霊術の道具って説明してたけど、正式名称は依代ね。覚えておいてね」
「へえ~依代か~何かかっこいいな。そういえば思ったんだけどさ、霊力って善行で増えるんだよな?」
「そうだけどそれが何?」
「逆に悪い事をしたら下がるもんなの?」
「下がるわよ。カゲトラもしかして何か悪い事するつもりだったの?」
「いや違うわ。それだったら人族側に攻めてきた魔族は何なんだって思ってな……霊力って別に霊術師じゃなくてもエルさんみたいに使ったりするんだろ? いくら強くても攻めたら霊力も下がって弱くなる筈だからそんなに皆が魔族を怖がる意味が分からないんだけど……」
影虎はそこが不思議で仕方が無かった。
するとミコモは少し溜息をついてから口を開いた。
「よく気付いたわね。それは魔族っていうのは霊力を膨大に抱えているものだからよ。下級の魔族でもその辺の人の三倍は持ってるわね。だから戦争で人を殺して多少下がった所でそんな程度気にならないのよ。それに戦争だと侵略される側とは言えこっち側もちょっとは霊力が落ちゃうのよ」
「じゃあつまり……」
「魔族側は霊力の低下を殆ど気にせず戦えるって事よ」
「嘘だろ……」
影虎は街の人やエルドレットがあれほど警戒していた意味がようやく分かった。
「ただ希望はあって、完全に正当防衛な戦いなら霊力は下がらないわ」
「そうか……まあでもそれも難しいだろうな……」
「だから王様も翳の勇者召喚に頼ったんでしょうね」
「なるほどな」
その翳の勇者(本人の自覚無し)が目の前にいるとは夢にも思っていないミコモ。
影虎が救世主になる日は来るのだろうか。
「後さ……孤児院の子供達の話なんだけどさ……あれで良かったのかな」
「あれでって何が?」
「あいつらあんなクソガキだけどさ、親二人とも亡くなって引き取られたとか親の顔も見る前に捨てられたとか、結構つらい思い出もあると思うんだよ。そんな子達に俺は何か力になれる事があるんじゃないかって、思ったんだ。それなのに遊んでやるだけ、ってのは良いのかなって……」
影虎が胸の痞えになっていた事をミコモに打ち明けると、少しミコモが考えてこう言った。
「それで良いわ」
「な、何でだ?」
「確かにあの子達は親がいなくて普通の子供とは育った環境が違うわ。でもね、それだけよ。あの子達は普通の子供と生まれた環境が違うだけでそれ以外は普通の子供と同じよ。だから別に変に気を使ったりせずに普通の子と同じ接し方でいいのよ。それが一番あの子達の力になれるわ」
「そ、そうか……お前にそんな良い事を言われるとは思わなかったぜ……」
「何よ。私だってたまにはまともな事を言うわよ」
影虎は胸の痞えが下り、気を取り直した。
そんな話をしながら家への帰路を辿っていると、家が見えてきた。
「おおっ! 家から魚の匂いがするわ! 今日の晩御飯は焼き魚ね!やった~」
「お前の嗅覚中々凄いな。結構距離あるのに分かるとは……」
影虎はやっぱり猫の亜人だからかな、と考えた。
猫じゃらしとかマタタビとかあげると喜ぶんだろうか、とも。
この世界にマタタビがあるのかどうかは分からないが。
「カゲトラ、急いで! 早く家に帰って魚を食べたいのよ」
「ああはいはい、急ぐ急ぐ」
影虎は慌ててミコモの後に続き家に入った。




