影虎の霊術
影虎は霊術が掛かっているなら手加減は要らないと思い。
「常時発動しろ、隠行!」
[かしこまりました]
影虎は隠行を発動させた。
そして影虎は庭に生えている茂みに隠れた。
「あれーお兄さん何で鬼なのにわざわざ茂みに隠れたんですかー?」
「多分みんなが速すぎて諦めたんだと思うわ。諦め速いしあの人」
「うわーださいね……」
「誰がダサいか詳しく言ってごらん? え?」
「うわっ! おにーちゃんいつのまに!」
「てめーらガキごときに負けてちゃ大人失格だわ!」
煽ろうとした子供をがっちりと捕まえる影虎。
「一体どうやってここまで……あの茂みから私達までそこそこの距離があるのに……」
「何でだろうな……ふふふ」
影虎はこれがこんな所で役に立つとはな……と思った。
それはバッグに入れておいた薄手の布。
何でそんな物を持って来ていたのかと言うと、先日隠行について調べようと思い。
「ヘイ隠行、隠行の能力について教えて」
[隠行は対象が認識するマスターの発する気配、熱、匂い、音などを遮断する能力です。相手の視界から逃れれば対象がマスターに気付く事は不可能ですが、逆に言えば視界に入ってしまうと効果は薄くなってしまいます。因みに隠行の有効射程距離は三十メートルです]
と、いったようにまさかの隠行が教えてくれたのである。
影虎はもちろん隠行について様々な事を聞いた。
まず、ある程度は対象の視界に入っても目立たない(影虎の服に血が付いていても通行人が気付かない等)。
さらに、影虎自身の身を隠せば相手の視界から逃れた事になるので、影虎の身を隠せればそれがどんな物でも相手は影虎を認識出来なくなるという。
つまり創作の忍者の隠れ蓑のように明らかに隠れている物と背景が異なっていても隠れてさえいれば相手には気付かれないのである。
それを知った影虎はエルドレットから渡されていたギルドの報酬金で影虎の身が隠せるサイズの薄手の布を買っておき、茂みでそれを出して布に隠れたので、子供達に気付かれずに子供を捕まえる事が出来たのである。
子供達が油断して動きを止めていたのもあるが。
そうして霊術の掛かった子供でも捕まえる事が出来た影虎だが。
ここの子供達はその程度では屈しなかった。
「うわ~おにーちゃん大人気な~い」
「子供相手に本気出すなんて……」
「うわ~恥ずかし~い」
「みんなは将来こんな大人にはなっちゃ駄目よ」
「「「「「は~い!」」」」」
「何がは~いだ! まあ事実かもしれんが……」
そんな感じで影虎は子供達と親睦を深めた。
勿論影虎はその後も隠行を駆使する羽目になるのだがそれはまた別のお話。
*
*
*
子供達の遊び時間が終わった後、二人はオウレンに孤児院の一室に話があると呼ばれた。
「いや~お二人ともありがとう。とても助かったよ」
「じゃあ何で逃げたんだお前……」
影虎はオウレンがさっさと逃げたのを根に持っていた。
「別にいいじゃない。あの子達と仲良くなれたんだから」
「どの口が言うんだよ……あれを仲良くなれたと言えるのかお前?」
「いやいや、あれでもあの子達とキミとの距離は十分に近づいたよ……まあそれはそれとして本題に入ろうかね」
「「はい」」
二人が同時に頷くと、オウレンは話を切り出した。
「カゲトラ君、キミはミコモちゃんに霊術を教わっているのだろう? ここに来たって事は善行を積みにここに来た訳だよね? それでね、さっきのお詫びも兼ねてカゲトラ君の霊術の適正を教えようと思っているんだがどうだい?」
「ええ!? オウレンさんってそういうの出来るんですか?」
驚いてそう聞く影虎にミコモが代わりに答えた。
「そういえば説明してなかったけど、人は必ず二つ霊術の適正を持っているのよ。例えば私は水と補助。オウレンさんは回復と解析といった所かしら。あと適正の無い霊術を唱える事は出来ないから気を付けてね」
「そうなのか……何かすげえ……」
思わず夢が膨らむ影虎。
いち早く自分の霊術の適正が知りたくなった。
「じゃあお願いします!」
「では早速。ーーー霊力解析!!!」
オウレンは影虎の頭上に手を乗せ、霊術を放った。
白い光が影虎を照らし、影虎の霊力を分析する。
影虎はレントゲンを撮られている時のような気分になった。
「はい、分かりました」
「おおっ! で、何だったんですか!?」
影虎は期待が止まらない。
(俺の霊術か……強い霊術だといいなあ……)
そしてオウレンはしばしの間沈黙し。
少し間をおいて口を開いた。
「カゲトラ君の霊術の適正の一つ目は……霊力剣です!」
「おおー何か強そう! かっけー!」
強そうな霊術の適正にテンションが上がる影虎。
しかしこれにミコモが冷水を浴びせた。
「霊力剣……剣の威力を上げたり自分の霊術を剣に付与したりする事が出来るわ。割りとオーソドックスな霊術よ」
「おいおい! 名前の割りに普通なのかよ!」
「因みにエル姉も霊力剣の適正持ちでよく使っているわ」
「しかもまさかの身内で被りかよ! 最悪だ!」
「まあ霊力剣はもう一つの霊術適正にもよるから」
「そ、そうだな、ではオウレンさん、もう一つの適正を教えてください!」
「もう一つはね……」
オウレンは少し困ったような表情をした後、またも間を置いて言い放った。
「カゲトラ君のもう一つの霊術の適正は……毒です!」




