陰キャ目覚め
(ここどこだよ!さっきまで日本にいたのに!)
そう尾野影虎は今の自分の状況に対して突っ込んだ。
影虎は初のコ○ケにて無事戦利品を手に入れ帰路を自転車で爆走していた所、運悪くピンポイントで彼の走路の道路が陥没し、その穴に落ち人生を終えた。
三冊の戦利品と共に。
……と、なる筈だったが。
(え?もしかして異世界召喚って事?俺呼んだ奴は?)
影虎は異世界召喚により一命を取り留めていた。
しかし影虎の周囲には誰もいない。
(あっ、こういう時ってラノベだとステータスオープンとか言うと自分の強さや能力が出るはず!)
「ステータスオープン!」
だが何も起こらなかった。
(え?嘘でしょ?)
「ステータスオープン!」
やはり何も起こらない。
(やばい……あれが出ないとは……これだと俺のラノベ恒例のチート能力があるのかどうかすら分からないな…ただの陰キャ男子高校生だというのにチート能力無かったらつらい……)
因みに、影虎は異世界で現代の知識を活かせる程の頭脳は無く、顔も若干童顔なそれ以外に特徴の無い顔で、運動神経はからっきしという、異世界では通用し得ないスペックである。
(そうだ俺のスマホ!もしかしたら使えるかも)
影虎は自分の肩掛けバックからスマホを取り出し、電源ボタンを押した。
しかしスマホの電源は入らない。
スマホは使えない上に他の所持品もあまり役に立ちそうに無かった。
小銭が大量に入った財布。
それに加えて今着ている灰色のパーカーに布地の黒いロゴが入ったシャツにジーンズのみである。
(いやドッキリの可能性も……いやでもスマホの充電あるはずなのに電源入らないのは変だよな……)
圏外でも電源は入る筈である。
そしてそれ以前に道路に落とし穴は作れない。
影虎は次第にここが本当に異世界なのではないかと確信を持ち始めていた。
(まあ、とりあえず探索するか。……死なない程度に)
影虎は慎重に神殿の探索を始めた。
※
※
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しばらく歩いていると、通路の壁に扉があった。
その扉にはこの言葉と共にパソコンのQWERTY配列が書かれていた。
【ネットで有名な断末魔を入力してください】
え?もしかしてくぁwせdrftgyふじこlpの事?これ作った奴絶対オタクだろなどと考えながら影虎はそれを打ち込んだ。
すると、その扉がゆっくりと開いた。
本当に開いたので驚く影虎。
しかし自動のスライドドアとは異世界にしてはハイテクだなあ、
と影虎は妙な所で感心した。
その扉の奥に入って行くと、中には一振りの小振りな刀が台座に刺さっていた。
刀身はおよそ60センチ程で、何故か鍔と鞘が無かった。
(おっ、チート能力ではなくチート装備ときましたか神様。チート無いかと思って焦った~。でも抜けるかなこの刀?期待させといてこれを抜けないというパターンかもしれないけどとりあえず抜いてみるか!)
影虎はその刀の柄を持って引いた。
すると……
スポッ。
いとも簡単に引き抜いた。
(おおおおお!俺の無双確定キターーー!これで勝つる!やったぜ!ヒャッホ~イ♪)
影虎は歓喜に満ち溢れた。
やはり誰であれ異世界に来たからには無双をしてみたいと考えるだろう。
そんな異世界召喚らしいイベントが我が身にも起これば興奮するのも無理もなかった。
だがこの刀が強いとは限らないのだが、それはまた別のお話。