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陰キャが異世界で無双してみた  作者: するめ狂い
陰キャ覚醒編
16/117

陰キャ修行その1

メコルの森の少し開けた野原。

短い草が生えていて日の光が差し込んでおり、周りには木々が茂っている。


影虎は修行の為エルドレットと共にそこに来ていた。

エルドレットはいつもの鎧姿では無く、動きやすいように黒いシャツにベージュのズボンにレイピアのみを腰に下げた格好で、影虎も前の安物ではなく修行用に買った紺色のシャツに茶色のズボンを着用しており、それに加えて刀とバッグに入れた水筒を持って来ていた。


「それじゃあ、修行を始めましょう!」

「よろしくお願いします」

「それじゃあまずは基礎体力を鍛えましょう。それをしないと何も始まらないわ」

「分かりました」

「まずは腕立て伏せからね」


影虎は腕立て伏せをする為に地面に手を付き、足を上げた。

「ちょっとお尻が上がりすぎているわ。フォームは大事よ」

「は……はい」

(何でこの子一回も腕立て伏せしてないのにすでに苦しそうなのかしら……)


エルドレットは生まれたての子鹿のようにプルプルと震えながら腕立て伏せのポーズを取っている影虎を見てそう思った。

「じゃ、じゃあ早速やっていきましょう。腕立て伏せは胸が地面につくギリギリまで上体を落とさないと効果が薄いからしっかりと上体を落としましょうね」


「は、はい……」

「ぞれじゃあ、いーち」

影虎は上体を地面に落とした。

落とした。

………


「エルさん……」

「ど、どうしたの固まって」

「体が上がりません」


「え?今何て?」

「体が上がりません。というか、上げられません……」

「ええ……」


影虎は地面から腕の力だけで上がる事が出来なかった。

あまりの身体能力の低さに唖然とするエルドレット。

いやまさかここまで低かったとは…と衝撃を隠せなかった。


だがそれを強くするのが本当の強者である。

「し、仕方ないわね……それなら膝を付いてやってみて」

「は、はい」


影虎は膝を付いて上体を地面近くまで下ろした。

「あれ? 出来たぞ? まじか……」

すると今度は上体を上げる事が出来た。


「おっ、出来たわね。これを十回くらいやってみて」

「はい!」

影虎は膝をつけば出来る事に些かモチベーションが上がり、負荷が苦しい中何とか腕立て伏せ(膝付きver)を十回こなす事に成功した。


「おおー出来た! やったぞ! しかし腕立て伏せが出来たくらいで喜ぶ日が来るとは!」

「よく出来たわね……」


何故か二人の間に感動が生まれた。

「よし、じゃあもう一セット……」

「無理です。腕が何か痺れてできません」

「そう……まあ予想はしてたけど……じゃあ他の部位を鍛えましょう」

「すみません……」

「それじゃあ腹筋ね。まずはこれを十五回やってみて」

「はい」


今度は影虎でも普通にこなす事が出来た。

「これは意外と出来るのね……びっくりだわ」

「もう限界ですけどね……ははは」

「じゃあ次はスクワットね」


影虎はスクワットも回数は多く出来ないが一応する事が出来た。

しかしこれだけでも影虎の体は筋肉痛であるというから運動不足という物は恐ろしい。


「カゲトラちゃんの基礎体力は分かったわ。それじゃあちょっとお水を飲んで休憩して、それから剣術を教えるわね」

「はい……」


影虎は水をゴクゴクと飲みながら、運動ってこんなにきつかったんだなと思った。

両親もあまり運動が出来る方ではなく、子供の頃も外で遊ぶ事より室内で本を読む事を好むという筋金入りのインドア派であった為、影虎が運動する機会は体育の授業のみであった。


当然最も苦手な教科だった事は言うまでもない。

「そういえばうちの親元気かな……今頃神隠しにあったとか騒がれてそうだな俺」

影虎は思わず自分の両親の事を思い浮かべた。


影虎に兄弟はおらず、一人っ子としてとても大事に育てられた。

小学校でいじめにあった時には、影虎の両親が即座に学校に直談判しに行った程だ。


「最初はちょっと異世界だやったぜー! とか言ってたけどやっぱたまには日本に帰りたいなあ……」

ここから日本に帰る方法はあるのだろうか。


そしてそれが出来るのだろうか。

影虎がそんな風に物思いに耽っていると。

「カゲトラちゃん? どうしたのぼーっとして。そろそろ始めるわよ」

「あ、すみません」

影虎はふと我に返り、筋トレで重い体を起こして立ち上がった。





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