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陰キャが異世界で無双してみた  作者: するめ狂い
陰キャ終止符編
110/117

陽キャVS魔王

「お、俺の海闊水輪が……! いつの間に!」

「あいつあんなに強かったのか……」

影虎は敵の武器をあっさりと奪ったリトテに思わずそう呟いた。

たった今、影虎の中でリトテ最強説が浮上した。

善方は目を見開いて呆然としている。

「あと晴人はとうとう空中に足場を作れるようになったのか……やべえなあいつ」

影虎は空中に浮いている晴人を見てそう思った。

おそらく霊力剣と光の魔術を混ぜ合わせたものなのだろうと影虎は推測する。

そして影虎はふとある事に気付いた。


「萌葱さん、まさか晴人あいつもチートに覚醒したんですか!?」

「それはどうかな……」

「うわあ先を越された……」

影虎は萌葱のその言葉にガックリと項垂れた。

「まあ見てなよ。晴人君の無双ぶりを」

萌葱はそう言って晴人の方を見た。

影虎もそれに従ってそちらの方を向く。


「俺の海闊天輪を奪うとは中々やるじゃないか……でもな、それは勇者の武器なんだぜ……貴様如き魔族に扱えるものでは無いんだぜ……」

「え?」

善方は先程の呆然とした様子から豹変し、口元に笑いを浮かべながらそう言った。

その次の瞬間。

バシュ!

海闊天輪から大量の水が噴き出し、晴人とリトテを強襲する。


「どあっ!」

「うわああああああ!」

「俺の海闊水輪は遠隔操作も出来るんだよ……抜かったな」

「晴人ー! リトテー!」

二人は光の床から落ちてしまった。

下は強酸性の温泉である。

「まずい! 貿易―――」

「その必要は無いぜリトテ。不屈の騎士インウィクトゥス・エクエス!!!」


晴人が勇敢なる騎士から成長したらしき不屈の騎士なるものを発動させる。

そして二人は強酸性の温泉に浸かってしまった。

だが二人は無傷であった。

晴人は思いっきり強酸性の温泉に浸かってしまっているがまるで何とも無く、リトテはその晴人に掲げられている為に温泉に浸からずに済んだのだ。

晴人は普通ならドロドロに溶けている筈の温泉に浸かりながらもまるでそこが普通の温泉であるかのような平然とした顔をしていた。


「やっぱりチート化してんじゃねーかよ……一体どんな能力なんだ……?」

影虎はその様子を見て苦虫を潰したような顔をして呟いた。

そんな晴人は光の床を再び作り出してそこに登った。

善方は海闊天輪を手に取った。

「お前……何なんだ……? この強酸性の温泉に浸かっても無傷で居られるとは……」

「俺は陽の勇者だよ。てめえこそ何なんだよ。いきなり挨拶も無しに襲い掛かって来やがって……」

「ふふ……失礼したぜ……俺は魔王九鬼善方。お前の敵だ」

「俺は向坂晴人だ。覚悟しろ魔王め!」

「かかって来な……はははははは……」


そうしてまた更なる戦いが幕を開けた。

不屈の騎士インウィクゥス・エクエス! 霧双飛燕突き!」

「海闊水輪!」

晴人は光の床を蹴って間合いを詰め、不屈の騎士を発動させて技を放つ。

だが善方の海闊水輪の津波によって阻まれてしまう。

と、なる筈だったが。

津波は晴人をすり抜けた。

まるでそこに晴人が存在しないかのように。


「ど、どうなってやがる!?」

「こうなってんだよ。しっかり見やがれ!」

晴人のアンサラーが善方の体を幾多にも斬った。

善方の体に血が迸る。

「ぐああああああああああああ!!!」

「いい時に成長してくれたぜ……勇敢なる騎士……」

晴人は光の床に戻りながらもそう思った。


彼の不屈の騎士インウィクトゥス・エクエスは発動中、自分に対する攻撃その全ての影響を無効化させる霊基である。

ただし一度に発動出来るのは30秒間のみという制限はあるが。

まさしく“不屈”の名にふさわしいと言えるだろう。

「あれがあいつの不屈の騎士……何で俺だけ隠行Ⅱのままなんだよ……滅茶苦茶強いじゃねーか……」

「まあまあ……修行の成果で成長したって言っても人によるだろうし……大器晩成なんだよ影虎君は」

「だといいですけどね……このままだとそんな事をする意味も無さそうですけどね……」


影虎達が話している間にも晴人は善方に次々と剣撃をお見舞いしていく。

善方も負けじと応戦するが相手は全ての攻撃を無効化出来るのだ。

水で吹き飛ばそうにも通過してしまうし、触れる事すら適わない。

唯一の弱点は光の床を壊されてしまう事のみである。

そう、それだけが弱点だったのだ。

「止めだぜ……神威霊絶!!!」

「ははは……ここで終わりか……ん?」


晴人が善方に止めを刺そうとしたその時。

善方は何故晴人は攻撃の度に光の床に戻るのか? という事を疑問に思った。

(もしかすると……この無敵のような霊基にも弱点が……! 海闊天輪!)

そう考えた善方は海闊天輪で光の床を破壊した。

「なっ! てめえ……し、しまった!」

「ははは……馬鹿め……明神秘湯! 水を傷を瞬時に直す温泉に変える……!」


善方は周囲の温泉を癒しの温泉へと変え、晴人から受けた傷を全て回復した。

「あ、危ねえ……危うく強酸性の温泉にやられるかと思った……」

「ははは……じゃあ何でそれをやらなかったと思う? こうする為さ」

善方は海闊天輪で晴人を吹き飛ばした。

「な、何いいいいいいいいい!?」

「弱点バレバレの能力なんざ怖かねーよ。ははははは!」

「は、晴人ーーー!」


善方は遠くに吹き飛ぶ晴人を見ながらそう笑った。

因みに善方が温泉の効果を変えたのは自分の出血死してしまうリスクを少しでも抑える為である。

即座に回復しなければかなり危ない状態だったのだ。

「嘘だろ……あの無敵の霊基に覚醒したあいつが……!?」

「いや~無敵ではなかったと思うよ、俺は」

「は……?」

目の前で起きた事が理解出来なかった影虎に善方がそう声を掛ける。


「やだなあ。さっき言ったじゃないか。俺の明神秘湯の中には相手の位置を映し出す温泉があるって……そらっ!」

「「「「「きゃあああああああああああああ」」」」」

「!?」

善方はニヤニヤと笑いながら海闊天輪で影虎以外の皆を押し流した。

「はははははは……これで大分追い詰められたんじゃないかい? 影虎君~」

「ま、まずい……」

影虎は人生で最大の窮地に立たされてしまった。






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