ひよこ鑑定士Ⅳ
「で、萌葱さん……その勝てる算段というのは何ですか? あいつは……」
影虎は萌葱に善方が反則クラスの能力を持っている事を告げようとするのを萌葱はそれを制止した。
「大丈夫だよ。それを聞いた上で言ってるんだから」
「ええ……本当ですか……」
影虎は萌葱のその謎の自信が何処から来るのか分からなかった。
「本当だよ……何せ……私の“ひよこ鑑定士”が進化したからね」
「は、はあ……」
影虎は萌葱の霊基はひよこ鑑定士と聞いた時に笑いを堪えるのに必死だった事を思い出した。
そして影虎には萌葱のひよこ鑑定士が成長した所であの反則の能力に対抗出来るとは到底思えなかった。
「で、成長してどんな能力になったんですか」
「未来予知だよ」
「はあああああああああああ!?」
影虎は萌葱の言った事に衝撃を受け、素っ頓狂な声を上げてしまった。
「一体何があったらそんなとんでもない能力に……」
「それはね……」
萌葱が影虎に語った内容はこうだ。
善方の海闊天輪によって皆が流されてしまった時。
萌葱は流されながらももがいて抵抗し、ひよこ鑑定士Ⅲで善方の状態を確かめようとしていた。
(せ……せめてこれを放った奴がこの波の影響を受けるのかどうか見ないと……!
ひよこ鑑定士Ⅲ!)
萌葱はひよこ鑑定士Ⅲを発動させた。
しかし……
[ひよこ鑑定士Ⅲが更新されます……更新しました]
(このタイミングで!?)
[ひよこ鑑定士Ⅳに更新されました]
(ええ……っていうか流される! うわあああああああ!)
そうして萌葱は流されてしまった。
次に起き上がった時には皆と離れ離れになっており、萌葱一人だけであった。
「不味いな……ここで敵が来たら……ていうかひよこ鑑定士Ⅳはどんな能力なんだろう……
ひよこ鑑定士Ⅳ!!!」
[ひよこ鑑定士Ⅳで未来を見ますか?]
「え……嘘でしょ……」
萌葱はひよこ鑑定士がそこまで成長した事に感動を覚えた。
あんなに駄目な霊基だったのに……と。
「どの位の期間の未来まで見られるんだろう……」
[一分までです]
「おお、答えてくれるのか……じゃあ色々と聞いてみよう」
萌葱はそうしてひよこ鑑定士Ⅳの詳細をひよこ鑑定士に聞いた。
ひよこ鑑定士Ⅳは一日に何回でも行使できる。
予知された行動と異なる行動を取れば未来は変わる。
また、異なる行動を取る際の未来予知も可能。
発動中は予知自体は一瞬で終了する為、予知を行っている間に進んでいる時間はごく少数の時間である。
と、このようにとてつもない能力というだという事が分かった。
「これなら勝てる……まずは皆を探さないと……ひよこ鑑定士Ⅳ!」
萌葱はひよこ鑑定士Ⅳで皆の居場所を探った。
そうして仲間を探していたミコモ達と合流して今に至る。
因みに晴人とリトテは遠くに居たのか見つける事が出来なかった。
「とまあそんな訳でどうしてこのタイミングで成長したのかは全く分からないけど、もしかしたら修行の成果が今になって出たのかもしれないね」
「なるほど、では俺の隠行Ⅱも……」
「まだ進化の余地があるかもね」
萌葱はニヤリと笑って影虎にそう言った。
影虎は自分の手を見つめてまだ成長するのか……? と疑問と期待を抱いた。
「それじゃああいつを倒してくるよ。ミコモちゃん。アルメリアさん」
「ええ。任せておいて」
「分かったわ」
萌葱はミコモとアルメリアにそう言った。
そして二人は霊術を放つ用意をした。
影虎はそんな三人に異を唱える。
「ちょっと待って下さいよ……いくら未来予知でも……」
「水と温泉なら大丈夫。ミコモちゃんとアルメリアさんが凍らせてくれるから。その間に私があいつを叩くよ。あいつに触られた瞬間に殺されてしまうなら絶対に攻撃を避けられる私が行った方がいいからね。影虎君達には援護を頼むよ。大丈夫、全部分かるから」
「凄い戦法ですね……」
影虎は萌葱の口から語られた戦法に驚きを通り越していっそ呆れを覚えたのであった。
「じゃあ行くよ……!」
萌葱は凍りついた床の上を滑り、氷から脱出しようとしている善方に立ち向かった。
「烈空脚八閃!!!」
萌葱の放った蹴りは激しい衝撃波を生み出し、善方に襲い掛かった。
「ぐはあ! くっ……はやくこの氷から脱出しないと……」
善方は海闊天輪で水を出してお湯に変え、氷を溶かしている。
だが幾ら百度の熱湯と言えども中々霊術で創られた氷は溶けなかった。
「待てよ……氷も水と言えば水だよな……明神秘湯!」
善方は氷に明神秘湯を行使した。
すると、巨大な氷塊は一瞬にして温泉となった。
善方はその様子を見て高笑いした。
「ははははははは! 貴様等の霊術は無駄だったなあ!」
「え……嘘でしょ……」
「そんな……今の一瞬で……」
驚愕するミコモとアルメリア。
そんな二人に萌葱はこう言った。
「大丈夫だよミコモちゃん。これも予知で見た内容と同じだから! とにかく温泉を
凍らせて! 別に一瞬でもいいから!」
「わ、分かったわ……」
「本当に大丈夫かしら……」
二人は不安を胸の内に抱きつつも霊術で温泉を氷へと変えた。
善方はそれを見て溜息をついて言った。
「はあ……まずは邪魔な君から倒す必要があるみたいだね……」
「倒されるのはあなただよ。私のひよこ鑑定士Ⅳを前にあなたは為す術もないよ」
「それはどうかな? 名乗っておこう。私の名前は九鬼善方だ」
「月瀬萌葱。巽の勇者だよ……行くよ!」
「望む所だ!」
そうして更なる戦いが始まった。




