決着と幕開け
「さて……お前の負けだ! ………神威霊絶!!!」
晴人はアンサラーを光の如き速さで振るった。
剣に宿された極光が揺らめき、残像を残す。
その次の瞬間、テオの体は真っ二つに切られ、崩れ落ちた。
神威霊絶は光の霊力を反射させており、そしてそれらが絶大な切れ味を誇る刃となっているのだ。
「ぐああああああああああああああ!!!」
「お前の霊基は反則級だったよ確かに……アンサラー出された時は本当に驚いたし、
二本出された時なんかはっきり言って絶望したぜ……でもあの三人は諦めないで戦ってくれた……だから俺はお前に勝てたんだ。これが仲間の力って奴だよ……さてお前には色々と喋って貰わないといけない事がある。この襲撃はあのお方とやらの命令なんだろ? 誰なんだそいつは?」
晴人はアンサラーをテオの首筋に当てながら言う。
テオはその質問にこう答えた。
「残念だったな……俺はあのお方の正体なんざ知らねえ……ただ言える事は滅茶苦茶強いって事だけだ……俺を倒したお前達でも絶対に勝てない……そんな奴だ。戦争を止める方法とやらがどんな物かは知らないが、多分成功させた所でお前等は殺される運命なんだよ……じゃあな」
「なっ、この野朗……!」
テオは喋っている最中に針金を曲げて銃を創り出し、自身の頭を撃ち抜いて自殺してしまった。
晴人が止めるのも聞かずに。
「まさか死ぬとは……あのお方ってのは一体何なんだ……」
晴人は空を見ながらそう呟いた。
*
*
*
「おーい大丈夫か晴人ー! 助太刀に来たぞー!」
「ああ、もう倒したぞ! 大丈夫だぜ影虎!」
影虎は晴人の下へと駆けつけると、そこにはもう敵を倒した様子の晴人達が居た。
テオの死体はもう塵となって残っていない。
魔族とはそんな生き物のようだ。
「良かった、あいつ倒せたんだな! いや~あいつ等強かったな。何だったんだ……」
「何か“あのお方”とかいう奴の差し金って事しか分からなかったな。とりあえずは影虎の技で戦争を止めないか? そうしたらそいつも何とかなるかもしれないし」
「そうだな。急ごうぜ!」
そうして影虎達が再び神殿に入ろうとしたその時。
ズドドドドドド!!!
彼等の耳に、津波の様な音が聞こえた。
「何だこの音……何処だ? 何処から聞こえているんだ?」
「何か段々近づいて来るな……もしかしてあのお方って奴じゃないか影虎!」
「確かにそうかもな……なら尚の事急いで……」
影虎が皆に言いかけたその時。
萌葱が空を指差して皆に言った。
「ねえ、あれ見てよ!」
「「「「「え?」」」」」
皆が口を揃えてそう言った次の瞬間、空に津波の様に水を噴出して空中を飛ぶ物体が現れた。
それは影虎達の方へと近づいて来た。
「何かヤバい……逃げろ皆!」
影虎達は散り散りとなってその場から離れた刹那、大量の水がその飛行物体から落ちてきた。
さながら津波の如き水量だった。
「「「「「うわあああああああああ!!!」」」」」
影虎達は波に流されそして揉まれ、体のあちこちを打ち付けた。
「ごふっ……ぷはっ! 助かったか……皆は大丈夫なのか……?」
その津波は直ぐに別の所へと行った。
影虎は早々と起き上がって辺りを見渡す。
ピチャ……
パシャッ……
そんな影虎の耳に水が跳ねる音が入って来た。
「だ、誰だ!?」
影虎が慌てて音のした方角を振り向くと、そこには。
茶色の肩まで伸びた髪を持ち。
目付きの悪いいかにもな悪人顔をしており。
手に……何故かシャンプーハットを持った男が居た。
その男は何故か一滴も雫が垂れていなかった。
(シャンプーハット!? 何で!?)
影虎はその男の所持品に理解が出来なかった。
何故この男がこの場でそんな物を持っているのかと。
影虎が理解に苦しんでいると、男は薄笑いを浮かべながら言った。
「やあどうも翳の勇者……私は魔王……君達にあの二人を差し向けた者さ……」
「魔王……だと?」
「そうさ。まあこれはあくまで呼び名で、本当は坎の勇者なんだけどね」
「何……!? まだ勇者が居たのか!」
影虎は勇者は自分達三人のみだと考えていた為、男の存在に大いに驚かされた。
まだ勇者が存在するという情報は無かったので、おそらく魔族側の勇者という事なのだろうと影虎は考えた。
(いや待てよ……そう言えばあのメコル王城の書庫に……)
影虎はメコル王城の書庫を調べた際、このような文章があった事を思い出した。
『私の武器についても紹介しよう。何故かシーーーーハートである。意味が分からない』
(まさかこれ……シャンプーハットの事だったのか!? 嘘だろ!?)
影虎は驚愕する他無かった。
あれがヒントだったとは、と。
そんな影虎に男が更に言葉を掛ける。
「驚いただろう? それに私も君と同じ転生者さ。outoukiもヒットショットも知っている……」
「まあ勇者だしな……で、お前は何がしたいんだ? 何が目的なんだ?」
「ははは……率直に言おう……翳の勇者君、君が邪魔だから消しに来た。それだけだ」
「ふざけやがって……何で俺を殺そうとするんだよお前……」
「それは言えないな。どうせ君には理解出来ないし。おっと名乗っていなかったね……
私の名前は九鬼善方。冥土の土産にどうぞ……」
「俺は翳の勇者、尾野影虎だ……そのふざけた根性を叩き潰してやる! 俺の“決意”でな!」
最後の戦いが今、始まった。
遂にラストバトルです。
九鬼善方の恐ろしい霊基とは……!




