陽キャVSテオその2
「ハハハハハハハ! 別に俺はアンサラー一本だけしか創れないとか一言も言ってねえし!
本当に甘い考えだなあ勇者様よ~。オラッ!」
「ぐわぁ!」
テオはアンサラーの身体強化を重ねて比類無い程の怪力で晴人を捻じ伏せた。
晴人はあまりの衝撃に地面に叩きつけられ、昏倒してしまった。
「ハルトの兄貴ー!」
「ハルト……嘘でしょ!?」
「そんな……」
三人はテオの圧倒的な強さに目を剥いた。
何しろ勇者の装備まで完璧に再現する事が出来る上に、それも複数創り出す事が出来る。
あまりにも、卑怯で。
あまりにも、反則な能力であった……
「さて……お前等三人もあの世に送ってやるよ……だって可哀相だもんなあ。未亡人とか母子家庭になるなんてよ~いっそまとめて殺してやった方が良いだろ? お前等も」
「うわあああああああ! 貿易!」
怯えたリトテはテオに銃を発砲する。
しかしテオはそれを片手でキャッチしてしまった。
「こんなチンケな銃が効く訳無いだろ~こちとらあのお方が考え出した最新の兵器を
使ってるんだぜ~」
「そ、そんな……」
リトテは絶望した。
修行したというのにも関わらず自分の霊基で傷一つ付ける事が出来なかった事実に。
「ハルトが回復するまで何としてでも持ちこたえるわよ……真、ケラヴノス・ラーミナ!!!」
「そんなの当たり前じゃない……真、トレイス・コンヘラル!!!」
そして二人が息を合わせて魔術を放った。
巨大な雷の刃や巨大な氷解がテオに襲い掛かり、大爆発を起こした。
「ぐおわあああああああ!」
「やったかしら……?」
カミルレがそう呟いて煙の中を見た。
「くっ……今のはそれなりに痛かったぞ……許さねえ……」
しかしテオは少し息が上がっている程度でさしてダメージは受けていないようだ。
「これだけ溜めた霊術でもこの程度なの……」
「なら手数で攻めるしかないわね。トレイス・コンヘラル!」
「そうね。倒せなくても時間は稼げるわ……ケラヴノス・ラーミナ!」
二人は再び魔術を唱えた。
彼女達もまた本の修行をしている為、詠唱速度、精密性その全てが極まっているのだが。
テオはそれらを全てアンサラーを振るって衝撃波を起こし、威力を和らげてしまうのだ。
「ハハハハハハハ! 中々やるなあ! でも無駄な努力って事にそろそろ気付こうぜ?」
「それが何よ!」
「勝手に言ってなさい!」
「はあ。諦め悪いなあ~。そろそろ死ね!」
テオは蠅でも追い払うかのようにアンサラーを振った。
衝撃波が二人の下に飛んでいく。
だが二人も負けていない。
「ケラヴノス・ラーミナ!」
「トレイス・コンヘラル!」
魔術を高速で放って衝撃波を相殺した。
「またその魔術か! 魔術師ってのは芸が無えなあ!」
「魔術は一つの魔術自体に色々な効果を持たせられるのよ」
「つまりこんな風にね」
「何!?」
テオの地面から雷が迸る。
それに追討ちとばかりにテオの下半身が凍った。
「これが魔術ってものよ。あなたと違って芸はあるのよ」
「ふふ……芸が無いのはあなたじゃない」
「クソが……痛てえ……」
そんな風に二人が晴人以上の奮闘をしている横で。
リトテは自分の無力さを嘆いていた。
「うう……何でこんな大事な時にオレは何も出来ないんだ……! せっかく修行したって言うのに何も成長してないじゃないか……!」
実は修行によりリトテの“貿易”も進化しており、前までは半額に割引されていたのが四分の一の値段で買えるようになっており、しかも後払いが可能となっていた。
しかし、所詮道具は道具。
余程の物でない限り目の前に居る正真正銘の化け物には目の前に立つ事すらも許されないのだ。
「くうう…努力してもこの結果……オレはやっぱり戦闘向きじゃないんだ……ああ……」
リトテは頭を抱えて蹲まり苦悩した。
その時だった。
彼の脳内に、一つの発想が芽生えたのは。
リトテははっと顔を上げ、先程とはうって変わり勇気に満ちた顔に切り替わる。
「そうだ……やってみないと分からないけど……オレの貿易は……この世のありとあらゆる物を買える……つまり!」
リトテは自らの手をテオに突き出し、呟いた。
「貿易! 針金のアンサラーを二本購入する!」
[現金が足りません。後払いにしますか?]
「ああ!」
次の瞬間、テオの手元にあった筈の二本の針金のアンサラーはリトテの手の中に納まった。
リトテはそれを見て大喜びした。
「こういう事だ……はは……出来たんだ! 出来たんだ! やっぱりオレの貿易で買えない物は無い! やれば何でも出来るものなんだな! やったぞ……!」
「な、何だとおおおおおおおおお!」
「嘘でしょ!?」
「一番の大活躍じゃない!」
敵のテオのみならず味方であるカミルレとアルメリアも衝撃を受けた。
「さあ! あとはお二人の出番っすよ!」
「分かったわ!」
「任せておきなさい!」
「不味い……不味い不味い不味い! だがまだ俺のクラフトオブドローは創り出せるんだ……舐めるな―――」
勢いに乗る三人に対抗すべくテオは更にアンサラーを創り出そうとする。
だが。
テオのそれは阻まれる事となった。
「ありがとよ三人共! 後は俺に任せろ!」
「なっ!?」
回復した晴人によって。
晴人は三人の前に躍り出ると同時にアンサラーでテオの手と針金を斬りつけた。
そしてテオは晴人に驚かされた。
何故なら彼のアンサラーが、途轍もない極光を宿していたからである。
「お前……その剣の輝きは……!」
「ははは……俺の本当の奥の手だよ」
晴人はそんなテオの驚愕の表情を見て、ニヤッと笑ったのであった。




