陰キャVSボブゴブリンその1
それを聞いたエルドレットは真剣な表情で影虎に向けてこう言った。
「カゲトラちゃん、私達はコイツ一人なら相手にできるかもしれないけど……ボブゴブリンまでは手に余るわ。だからカゲトラちゃん、あなたが何とかしてボブゴブリンの足止め、出来れば倒すのをやってもらえないかしら?」
「分かりました。やれるだけやってみます」
影虎はそう言って鞘から刀を抜いた。
「ありがとう……ごめんなさいね、カゲトラちゃんをボブゴブリンに一人で相手させるなんて……」
「いえいえ、魔族が相手じゃ仕方ないと思います」
「おやおや、人族二人で相手に出来ると豪語されるとは随分とナメられたものだねえこのボクが。しかしお前達にはこのボブゴブリンの配下のゴブリンもいることが分かってないのかな~ゴブリンもたくさんいるのになぁ~」
「問題ないわ」
「おいおいすぐに倒せるとでも言うのかい?」
エルドレットが断言すると、グレムリンは冗談だろとばかりに笑う。
「もちろんよ」
「え?」
だがエルドレットは揺るがない。
グレムリンもそんなエルドレットに思考が一瞬取り残される。
「奥義………千鶴飛翔!!!」
エルドレットはレイピアを前方に向け、千にもぶれて見える程の突きを放った。
放った突きが鶴の様な形状をした光を射出し、その光がゴブリンたちをことごとくを貫いた。
「ぎゃああああ! 何なんだこの人族は !桁がおかしいぞ! このボクの腕に傷を負わせるなんて!」
「す、すげえ……二十体ぐらいいたゴブリンが全部倒されてる……ボブゴブリンも深手を負わされてるし」
影虎がエルドレットの圧倒的戦闘力にまたも舌を巻いていると、
「ーーー神速」
「ーーー剛力」
「ーーー豆腐の角に頭ぶつけて死ね」
ミコモが影虎に向け補助の霊術を掛けた。
「何だ? 体に力が湧いてくる…あとなんか身体が鉄みたいに硬いぞ…もしかしてミコモ、俺にバフをかけてくれたのか?」
「バフっていうのが何か分からないけど…あんたの身体能力を上げてあげたのよ」
ミコモが影虎に誇らしげに言う。
「サンキュー! これで俺でも戦えるぜ! あと豆腐の角に頭ぶつけて死ねってネタじゃなくちゃんと役に立つ奴だったのかよ……びっくりだぜ」
「あと私達はもうあいつとの戦いで手一杯だからあんたの事を助けてられないわ。だからくれぐれも死ぬんじゃないわよ」
「ミコモお前……」
影虎がミコモの言葉に涙が出そうになるが。
「あんたが死んだら将来私の仕事が増えるじゃない」
「ちょっと感動しかけた俺が馬鹿だった……まあいいや、俺はボブゴブリンの相手をするぜ! 頼んだぜ二人共!」
「ええ!」
「はいはい」
そう言って影虎はボブゴブリンの方に向き、
「隠形、発動しろ!」
[かしこまりました]
隠形を発動させた。
ボブゴブリンはそんな影虎の様子を見て敵意を感じとったのか、棍棒を構え、影虎に向けて力強く振った。
しかし補助霊術の掛かった影虎はそれを容易く避ける事が出来た。
空振りとなった棍棒は地面に散乱していた何かの動物の骨に当たり骨を打ち砕く。
「うおっ、今の当たってたらヤバかったな……当たんないけどな」
そして影虎はボブゴブリンの後ろに回り込みボブゴブリンの背中を袈裟切りにした。
「グギャアアアアアアアア!」
よく効いているようである。
「ふふ、俺の厨二病時代に培った知識によると確か刀は浅手を多く負わせて失血させるのが効果的らしいな……だからこのまま隠形で不意打ちしまくって散々攻撃してやる! どうせエルさんの攻撃で弱ってるし」
中々腹黒い戦い方だった。
さらに影虎はボブゴブリンの死角に隠れ、隙を見て腕を刀で切り裂いた。
「グギイイイィィィッー!」
「よし、効いてるぞ……もっと行くぜ!」
影虎はボブゴブリンを速さで攪乱し、ボブゴブリンが混乱している間に胸部を撫で切った。
「グオオオオオオ!」
「よっしゃまた効いたぜ……ってちょっと待て」
影虎はボブゴブリンとの戦闘中、一つ気付いた事があった。
それは……
「この刀……ちょっと切れるだけでいまいち強く無くね?」
という事である。
「まさか……あれだけ伝説の剣っぽく刺さってたのに……もしかして伝説の剣じゃなかったのかー!?」
影虎は思わず某有名RPGの悪役のセリフを吐いた。
「嘘だろ……あんだけ期待してたのに……刀引っこ抜いた時の俺のワクワク感を返せよ……」
伝説の武器が刀とか厨二病心をくすぐるじゃねーかとか、鍔と鞘無いとかもう完全に成長フラグだろとかひそかに思っていたのにと、影虎は落胆した。
だが落ち込んでいる場合ではない。(当然の事ながら影虎がそのように思考に耽っている間も不意打ちは続けているが)
今はボブゴブリンとの戦いの最中なのだ。
戦い何かを考えながらするもんじゃないと影虎は自分に言い聞かせながら、集中してボブゴブリンに切りかかった。




