陰キャ召喚
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「不味い……今のままでは人族は滅びてしまう……」
人族の国の一つであるメコル王国の王、メコル=ライトスレッド五世は頭を抱えていた。
何故なら人族よりも遥かに強力な魔族が攻め込んで来たためだ。
魔族は人族とは比較にならない魔力を有しており、その上不思議な力を持っているという強敵だ。
幸い、メコル王国は魔族の領地の大陸から離れた位置にあるが、いずれはこのメコルにも攻め込んで来る事を考えると、非常に由々しい事態であると言えた。
遠い昔にも魔族の侵攻は起こったらしく、その文献が残ってはいるが、解読の成果は芳しく無い。
本当に人族は魔族に滅ぼされてしまう。
誰もがそう考え、人々は死を覚悟していた。
だが神は彼らを見放さなかった。
魔族の侵攻が起こってから1ヶ月。
人族の前線が壊滅の危機に立たされていた時だった。
「国王様!遂に文献の解読に成功しました!」
「なぬ!お主等どのようにして解読した⁉」
王の元に希望に満ちた様子の配下が来た。
その報を聞いた王は驚き、そして人族の未来に僅かに望みを抱いた。
「偶然文法を発見しまして」
「そうか……出来したぞ。して……その中に解決策はあったのか⁉」
「御座いました!」
「申してみよ」
「『翳の勇者』を召喚せよ、とあります」
「『翳の勇者』か……」
翳の勇者。
過去にこの事態が起こった際に和平に貢献したとされている英雄。
また、異世界から召喚された者で、強力な異能力を持つと言い伝えられている。
「噂には聞いているが、召喚は行えるのか?」
「はい、行えます」
「よし、ならば即座に用意せよ!時は一刻を争うのだ!」
「はっ!」
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「この神殿で召喚を行うのだな」
「左様でございます」
場所はメコル王城近辺の山の洞窟の中にある神殿。
この洞窟の神殿は今まで謎に包まれていたが、ようやく謎が明かされる事になった。
この神殿の壁は青白くぼんやりと光を放っておりとても幻想的な雰囲気を醸し出していた。
そして道中に一つだけ、解読不能な記号が書かれている扉があった。
その扉が何を意味するのかは文献にも記されていない。
(おそらく、翳の勇者の手により解明されるのであろうな)
王は心の中でそう結論付けた。
「国王様、文献によりますとどうやらこの部屋の魔方陣で勇者召喚を行うようです。準備が整いましたのでお下がりください」
「そうか、下がるとしよう」
そして魔術師が召喚魔法を唱え始めた。
王は成功を祈り、召喚の様子を見守った。
(頼む……成功してくれい……我が国と人族の命が懸かっておるのじゃからな……)
そして、召喚が終了した。
だが、何かが起こる様子は無く、ただただ部屋に静寂が続くのみだった。
王の部下が声を震わせながら恐る恐る王に事実を伝える。
「国王様……召喚に失敗した模様でございます!」
「何じゃと……そんな……人族はもう……終わりじゃあ……!」
「国王様⁉お気を確かに!」
ショックで王が崩れ落ちそうになるのを慌てて部下が支えた。
(じゃが……やはりこんな召喚に頼るべきではなかったのかもしれんな……早急に解決策を練らねば……)
王は部下に支えられながらもそう決意した。
しかし、この失敗により召喚が起こるのがこの日の一週間後となっていたとは誰も想像することが出来なかった。