あくまで抗うのであれば。
ユージェス・レノアは現在、人生で最高ともいえる気分を味わっていた。
――魔王ゼルエルガーの吸収。
それはユージェスに新たな境地を見出した。
いままで様々な力を取り込んできたが、さすが魔王は次元が違う。《未来予知》のときと並ぶくらい、ユージェスは強大な力を手に入れることができた。
その気になれば、自分ひとりで小国を滅ぼせるくらいには。
「フフ……はっはっは」
だから現在、ユージェスは天空城でゆっくりくつろいでいた。
――玉座の間。
王者たる自分が座るにふさわしい、豪勢な玉座に腰掛けて。
「ユージェス様。よろしいでしょうか」
ふいに扉の向こう側から声が聞こえてきた。
《未来予知》を使えるユージェスは、当然、この来訪者をすでに読んでいる。
「リアか。入れ」
「は……はい」
ややびくついた返事とともに、扉が横にスライドされていく。現れたのはリア――ナーロット魔術学園の女子学生だ。
リアは浅く一礼すると、ユージェスの前でひざまずく。
「ご報告です。王国の重鎮たちは――」
「よい。どうせ大慌てで会議に打ち込んでいるのだろう。結論が出るには、まだまだ時間がかかるに違いあるまい」
「は、はい。おっしゃる通りで……」
「ふん」
ユージェスは鼻を鳴らす。
これくらいは未来予知を使うまでもない。
セントラル王国の乗っ取り発言から数分が経過したが、重鎮どもは事実確認に躍起になっているはず。
魔王が滅ぼされたこと。
それによって、ここ近辺の街や村が消滅したこと。
これらが事実だと知ったとき、おそらく世界中の人々が震え上がる。ユージェスの完璧なる力に。
ユージェスは肘掛けに頬杖をつくと、のっそりとリアの未来を見通した。
「他に報告は……なさそうだな。とっとと出ていくがよい」
「はい……恐れ入ります」
そうしてリアが退室しようとした――そのときだった。
「私はC! 世界の監視者にして、世界を導く者である!」
「なに……!?」
ユージェスは大きく目を見開いた。
部屋の壁面に、黒装束の男の姿が大きく映し出されたからである。
クラージ・ジェネル。
よもやそっちの《分岐点》を選ぶとは……!
「くっ……まさか……」
小さく呻くユージェス。
この通信方法は《各拠点》の管理者にしかできないはず。
魔王復活のための連絡を取り合うため、かねてよりこの部屋で通信を取り合っていたのだ。
つまり、この通信手段を用いてきたということは……!
「善良なる国民の方々よ。先ほどのおぞましい演説を聞き、さぞ面食らっていることだろう。しかし臆することはない。あの滑稽者――ユージェス・レノアは、私たちが成敗する!」
「えっ……」
リアが大きく目を見開く。
「なに言ってるの……私たちを成敗するですって……!?」
そしてユージェスを振り向き、叫び出す。
「ユージェス様! 魔王の力を手に入れたいま、奴らごと滅ぼすのは容易でしょう! お早く――」
「いや。無理だ」
「え……」
「見てみろ。Cの背後に映っているものを」
リアが首を傾げながら壁面に目を凝らす。
そこに映っていたのは――ナーロット魔術学園。
休校中とはいえ、現在も少なくない学生が常駐している場所だ。
そこを丸ごと破壊した場合――学生たちの士気が下がるどころか、謀反のきっかけにすらなりうる。
クラージ・ジェネル。
あいつは全国民に安全を訴えるだけでなく、同時にこちらへの足止めも行っている……!
「おのれ……あいつめ……!」
さすがは未来予知とともに人生を歩んできただけはある。
その使い方は、さしものユージェスですら目を見張ってしまう。
「ユージェス・レノアよ。聞こえているか」
Cがやや強めの口調で言い放つ。
「貴様がいかに強かろうと……私は絶対に負けぬ。せいぜいふんぞり返って待っているがよい!」
通信はそこで途切れた。
さっきまでCや学園が映っていた壁面は、本来の灰色に戻っている。
「ふふ……ははは……」
いつしかユージェスは笑っていた。
これは怒りか。
それとも本当に愉快なのか。
自分でもなぜ笑っているのかわからなかった。
「クラージ。臆病な子犬だったあいつが、なかなかどうして、面白いことをしてくれる……」
いいだろう。
あくまで抗うのであれば、こちらも全力で答えてやるのみだ――!
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