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明るい未来へ

 ★


 僕は天空に浮かび上がる幼馴染み――ユージェス・レノアを見上げる。


 魔王ゼルエルガーの力を吸収したことで、奴自身にも大きな変化が訪れていた。


 ユージェスの周囲を、漆黒の霊気が漂っているのだ。瞳も深紅色に変わっており、より化け物としての感が増している。


 そしてなにより、ユージェスから放たれる圧倒的なまでの風格と威圧感。まさに人間としての域を越えた、人ならざる存在となってしまったかのようだ。


 ――リーレット集落からここまで駆けつけてくる間に、とんでもないことになってしまった……


 常軌を逸したスピードで走り出すあいつに、僕もアルルもどうすることもできなかったのだ。


「駄目じゃ……もう、お終いじゃ……」


 老いたゴブリンが頭を抱えて呻きだす。たしかこいつはナーロット収容所に捕らわれていたはずだが、いまは詳細を問うまい。頭上で奇妙な笑い声をあげている、あの化け物のほうがよほど問題だ。


「あの魔王様でさえやられてしまった……もう、あいつには誰にも勝てぬ……」


 そう言って泣き喚くゴブリン。


 他の魔物たちも同様だ。

 魔王がユージェスを倒すことに期待していたのか、すべての魔物が一様に暗い表情を浮かべている。


 ――やはり、な。

 その様子を見ながら、僕は脳内でひとつの結論に辿り着いた。


 すべての黒幕はユージェス・レノア。


 魔物たちは、ユージェスの力をさらに増幅させるための傀儡かいらいに過ぎなかった。


 考えてみれば、おかしかったんだよな。

 魔術学園の技術は、明らかに進歩しすぎていた。死者蘇生など明らかに群を抜いている。


 死んだはずのユージェスが復活していることを見ても、おそらく、はるか昔より死者蘇生の術が開発されていたんだろう。魔物たちの持っていた器具類も、魔術学園が秘密裏に開発していた道具に過ぎなかった……


 僕が以前から感じていた《とてつもなく大きななにか》。

 それがこんなにも大きく、身近にあったなんて……


「ハッハッハーッハ!」


 最強の力を手に入れたことがよほど嬉しいのか、ユージェスはいまだ甲高い笑いを響かせている。


 そして彼の背後には――さきほど突如現れた、漆黒の天空城。


「C……あれはとてつもないわね……」

 僕の隣で、ネーシャがぽつりと呟く。

「あの城から……多くの気配を感じるわ……。しかもこれは……」


「ええ……。魔術学園の生徒たちでしょう」


 アルルも首肯によって同意を示す。


「なるほどな。やはり学生どももユージェスの手の内か」


 どういった利害関係で両者が協力しているのかは不明だが、さきほど学生たちが急に襲いかかってきたのを見ても、敵側についているのは間違いなかろう。


 ユージェス・レノア。

 あいつは――最強の力を手に入れてなんとする。


 まさか、世界全土を手中に収めようとでもいうのか……?


 僕のその疑問は、ユージェスが甲高い声を響かせることによって打ち消された。


「聞こえるか諸君! 生きとし生きる――すべての者たちよ!」


「ぬっ……」


 ゴブリンが顔をしかめる。

 ユージェスの声が、反響する形で周囲に轟いたからだ。


「なにこれ……。まさか全世界に喋ってるの……?」


 アルルも同様に目を見開いた。


 あれもなんらかの器具を用いているのだろうか。ユージェスの言動はいちいち常軌を逸している。


「私はユージェス・レノア。最強の力を受け継ぎし者である! 諸君も見ただろう。私はたったいま、史上稀に見る力を手に入れたのだ! これを見よ!」


 言いながら、ユージェスは生命を失った魔王の頭を掲げて晒す。


「くうっ……」


 ゴブリンが悲痛な声とともにうなだれる。


「私の力は、さきほど消滅した街を見てもわかるだろう。今後私に刃向かう者がいた場合、この魔王と同じ末路を辿ることになる。これをせいぜい覚えておくがよい」


 そして頬の両端を吊り上げるや、醜悪な笑みを浮かべて言った。


「世界中の人々よ。私は新しい世界をつくりあげる。……だからまずは、ここ――セントラル王国を支配することを宣言しよう!」


「なにを……」


 ネーシャが憎々しげに目を見開く。


 ――世界をつくりあげる、か。

 ずいぶんと大きく出たものだ。


「刃向かう者は容赦なく殺す。それをせいぜい、胸に刻んでおくがよい……!」


 なるほど。

 世界征服か。

 臭い言葉だが、いかにもあいつが好みそうな言葉だ。


 あいつはたしかに、相当な力を手に入れた。純粋な戦闘力だけなら、たしかに世界最強といえるだろう。


「ふふ、ははは。やっと会えたと思ったら……とんだ凶行に出たものだな……」


 あの優しい表情に。

 あの飄々とした態度に。

 僕はいままで、どれだけ救われてきただろう。


「C……」


 アルルが悲しそうな顔で僕の手を握る。


 ユージェスの死によって、僕は抗うことに決めたんだ。

 たとえ自身の評判が落ちようとも。

 たとえ無能と蔑まれようとも。

 僕の行動によって、救われる誰かがいるのならと思って。


「ユージェス。おまえは私を出し抜いたつもりかもしれない。だが……」


 ――でも、それでも。

 僕には視えている。

 わずか数パーセントの確率だけど、切り開ける未来が。


 であれば。

 いままで通り、明るい未来へ向けて、全力で抗うまでだ……!


「ゴブリンよ。ひとつ提案がある」


「て、提案じゃと……?」


「うむ」

 そして僕は、自分でも奇妙な感覚を覚えながら、魔物へ向けて手をさしのべた。

「共闘といこう。人間と魔物が結託する未来にこそ、明るい光がある」

 

 


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― 新着の感想 ―
[一言] 共闘、熱い展開!! 楽しみ。
2020/03/12 20:47 退会済み
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