絶対的なる強者が生まれ、そして。
感想欄でお声をいただきましたのでタイトル変更しました。
ご協力してくださった皆様、ありがとうございました。
旧タイトル
「世界最強のギルド受付係 ~追放された僕は、最強スキル《未来予知》ですべてのフラグをへし折っていく~」
ナーロット拘置所。
特別収容室にて。
両手両足に縛られた金具の、あまりの頑丈さに、ゴブリンはため息をついた。
――儂も潮時か。
これまで何百年と生きてきた。
多くの歴史を目撃してきた。
魔王の威厳ある姿も、そして勇者に破れてしまった姿も、それからすべての魔物が英気を失ったことも。
あいつが襲ってきたのは――それから三百年ほどか。
主を失い、日々の生活さえままならなかった魔物たちを、ユージェスら制服姿の人間たちが襲いかかってきた。
――フフ。俺が憎いかね?――
――であれば取引だ。俺は史上最強の魔物、魔王を蘇らせたい――
――おまえたちもぜひ手伝ってほしい。うまくいけば、魔王に俺を殺してもらえるかもしれんぞ――
うますぎる話だと思った。
これはユージェスの口車に過ぎない。だから決して乗ってはならないと。
そうは思いつつも、逆らうことは許されなかった。
ユージェスの用いる《未来予知》の前には、あらゆる策略が気泡と化す。いかに反逆の策を練ろうとも、たちまちのうちに潰されてしまうのだ。
逆らう仲間たちが殺されていくのを横目に、いつしかゴブリンは、魔王にすべてを賭けることにした。
誰よりも恐ろしく。
誰よりも強く。
誰よりも素敵だった――あのお方なら。
かのユージェス・レノアだって滅ぼしてくれるはず。
人間なぞ屑ばかりだ。
誰だって信用できない。
――だから、お願いします。
魔王様、ぜひ、儂らに一筋の光を……
――目覚メヨ。
――我ガ忠実ナル下僕ヨ。
ふいに脳裏に届いてきた声に、ゴブリンは目を見開いた。
「こ、この声は……?」
思わず掠れた声を発してしまう。
恐ろしいような――それでいて妙に懐かしい、この響き。
邪悪さと寛大さを兼ね備えた、威厳のある声。
まさか……
「魔王様……なのですか……?」
――数百年ノ時ヲ経テ、我ハ目覚メル。
――我ガ忠実ナル下僕ヨ、ココヘ来ルガイイ……
再び謎の声が脳裏に轟き。
瞬間。
ゴブリンの視界は急転した。
「なっ……! こ、これは……!」
そして瞬きをしたときには、ゴブリンはまったく別の場所にいた。
ここは……草原か。
普段は穏やかな場所なのだろうが、現在においてはその限りではない。空中に漂う漆黒の瘴気が、場の雰囲気を暗黒に染め上げている。魔物としての闘争本能が燃えさかるような……そんな空気だ。
そしてどういうわけか、この場には他の魔物たちも大勢いた。全員が謎の声に呼ばれ、転移させられたらしい。
――これほど大規模な魔法を展開するなんて。
そんなことができるのは、あの方を除いていない……!
「そ、そうか……ここは……」
胸のうちに高揚感を秘めながら、ひとりそう呟く。
たしか、ここの地下部分に三つの宝玉が封印されているはずだ。人の血を無限に吸い込むことで、魔王の復活を成就させる禁断の宝が。
そして現在――この近辺にはいわく言い難い瘴気が漂っている。
「お……おお……!」
気づけばゴブリンは泣き出していた。
「魔王様……魔王様なのですか……」
「魔王様ー!」
「我らはあなたを待っておりました!」
他の魔物たちも同様に叫び出す。
みな本能で感じ取っているのだ。
間もなく、絶対的な主が現れることを。
散々にこき使ってきた人間――ユージェス・レノアを蹴散らしてくれるはずの、最強の存在を。
瞬間。
「――ヌオアアアアアッ!」
生きとし生きる者すべての頂点に立つ王者が――目覚めた。
魔王ゼルエルガ・ローゼ。
数百年前に《勇者》によって滅ぼされた、魔物たちの王者。
その外見を一言で表現するなら――影。
体躯はそれほど大きくないが、頭上に煌めく金の王冠、深紅に閃く瞳が、圧倒的なまでの威圧感を放っている。一目見たら吸い込まれてしまいそうな……
魔王の逸話はいまでも色濃く語り継がれている。
いわく――瞬きだけで街を滅ぼす。
いわく――目が合っただけで対象者を麻痺させる。
そのあまりの強さに、当時の人間たちは大恐慌に陥った。勇者によって滅ぼされるまで、魔王はそれこそ億単位にのぼる人間を殺したといっていい。
だからこそ、現代においても魔王は恐怖の対象として根強く語られているわけだ。
きっと、魔王様ならユージェスを始末してくれる。急に魔物たちを屈服させ、こき使ったあの人間を……
「魔王様……お目覚めになったのですね……」
知らず知らずのうちに、ゴブリンはそう呟いてしまう。
それを聞いた魔王ゼルエルガ・ローゼが、のっそりとこちらを見下ろした。見下ろす――という表現になるのは、魔王が空高くに浮いているためだ。
「ウム。久しいな、名もなきゴブリンよ」
「は、ははは……。儂のことを、覚えていてくださったのですか……」
「当然だろう。おまえは良き忠臣であった」
「ま、魔王様……」
無意識のうちに声が震えてしまう。
ああ、魔王様……
なんと高潔なるお方……
「――やあ♪ 君が魔王ゼルエルガ・ローゼ君だね。会いたかったよ」
場違いなほど明るい声が響いてきたのは、そのときだった。
「ヌ。貴様は……」
「ユージェス・レノア。君の能力を――いただきにきたよ」
あの憎き人間が、魔王の前に立ちふさがっていた。
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