監視者は欠点を乗り越えて
現在、僕らの前には二百人もの学生が立ちはだかっている。
まだまだ年齢的に成熟しきっていないとはいえ、彼らの実力は既知の通り。一流の先生に教えを乞うていただけあって、なかなか侮れない強者たちだ。
対して、僕らの戦力はアルルとネーシャのみ。
もちろん個々の練度はアルルたちのほうが数段上だ。いくら学生たちが強くとも、《人外》とされるアルルたちには敵うまい。
問題は戦力数。
これだけの大人数ではさすがに分が悪い。
だが。
――それでも必ず勝ってみせる。この絶望的な状況からでも。
「ふふ、ははは。やる気かよ、おい」
学生のひとりが嘲笑を浮かべる。
「ユージェス様から聞いた通りだ。バカ正直者のようだな、Cという奴は」
「…………」
「だが、聞いてるぜ。おまえの弱点をな」
『C! 聞こえる!?』
ふいにアルルの念話が聞こえてきた。
『五秒後、あいつから炎魔法が放たれるわ! ――でもそのままで大丈夫! Cはなにもしなくていい!』
『ほう……』
これはまた斬新だな。
アルルからの指示出しか。
だが、彼女のおかげで僕の弱点がひとつ減った。自分の未来だけは見通せない――という決定的な欠点が。
『面白い。アルルよ、その言葉――信じるぞ』
『うん。任せて!』
果たして、件の学生は炎魔法を発動。燃えさかる地獄の業火が、丸ごと僕を呑み込んだ。
――が。
痛くない。
まったく。これっぽちも。
「はは……これはすごい」
超高温の灼熱に晒されながら、僕は自身の両手を見下ろす。
さきほどの《強化》によって、僕はアルルとのコネクト時にのみ、防御力が高まることになっている。
その効果がどこまで期待できるか疑問だったが――これほどとは。
あの学生は、魔力だけなら少なく見積もってもCランク冒険者レベルの強さを誇っている。
そいつの魔法を受けて――まったく無傷とは。
――これなら。
技後の隙を待つまでもない。
僕は片腕を突きだし、二人に指示を送った。
『反撃開始だ! アルルは右翼に向けて斬り込みを、ネーシャは左翼に鞭攻撃を! 固まらず散開して攻撃せよ!』
『『了解!』』
僕の指示を受けて、二人がそれぞれ動き出す。
学生たちは大規模な魔法を得意とするため、近接攻撃に弱い。だから物理攻撃を主体とした攻撃を指示した。
また固まらず散開することによって、大規模な魔法を撃ちにくくするのも策である。
「ふふ……どうだぁ! って、は!?」
炎魔法を繰り出してドヤ顔を披露している学生がそこにいた。
うん、滑稽なことこの上ない。
「やあああああああっ!!」
そこにアルルが斬り込んだ。
「う、うわあああああっ!」
悲鳴をあげる男子学生。
アルルもよもや殺しにかかっているわけではあるまいが、学生にとってSランク冒険者に襲われることは恐怖でしかあるまい。
「よくもCの悪口を言ったわね! あんたなんか! こうで! こうで! こうなんだからぁぁぁぁぁあ!」
「ぬおあああああっ!」
『落ち着けアルル! 右方向から狙われてるぞ! 三秒後、高く跳躍!』
『はっ! つ、つい……』
なにがついだよ……まったく。
だが。
アルルと心が通じ合ったおかげか、以前よりも遙かに連携が取りやすくなったのは事実だった。こちらが余計な指示を出さずとも、彼女は視線だけで意志を汲み取ってくれる。
それはある意味でとてもセンシュアルな戦いで。
念話で声を送らずとも、僕たちは通じ合っていた。
アルルがちらりと僕を見ただけで、僕もすべてを察知する。そして――相手から放たれた魔法を避ける。
僕はアルルとの結託によって、自身の貧弱さという弱点をカバーできるようになった。
そして。
アルルとは負けず劣らず、彼女も相変わらずの戦いを繰り広げていた。
「うっふふ♪ なんでそんなに怯えているのかしら♡ ねえ、お姉さんがそんなに怖い……?」
「ぐ、ぐぬぬ……! 主席の俺が、こんな醜態をっ……!」
「おーっほっほっほ! 坊やたち、まだまだ寝かせないわよ!」
「ぎ、ぎゃあああああ!」
ピシー! ピシー!
舌なめずりしながら鞭を振るうネーシャは、さながら女王のよう。その威圧感には、さしもの学生たちもびびっているようだった。
そして。
数十分後には、二百人もいたはずの学生がほんの十人足らずに。
もちろん未成年を殺すわけにはいかないので、全員を気絶に留めている。とはいえ足や腕の骨を折っておいたので、目覚めたとしてもすぐには動けまい。
「う、嘘でしょ……?」
女子学生が目を見開き、わなわなと後退する。
「だって……Cを倒せば勝てるって……指示役さえいなければ勝てるって……」
「残念だったわね。私たちは――そんなに簡単にやられない」
「くっ……」
アルルに睨みつられ、力なくうつむく女子学生。
「大丈夫。さすがに殺しまではしない。だけど――しばらくの間は、眠っててちょうだい」
そして。
アルルの繰り出す高速の剣技によって、学生たちのすべてが無力化された。
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