守るべき人が、ここにも、たしかに。
「…………っ!」
一瞬にして状況を掴んだネーシャが、すぐさま土魔法を発動。
半透明の輝きが、うっすらと僕らを包み込む。
――プロテクト・ウォー。
かつてゴルゴンロード戦で使用した、一度だけすべての攻撃を無力化する魔法だ。
「ぬおおおおおおっ!」
魔術学園の学生たちが魔法を発動する。
だがすでに遅い。
猛烈な水流が僕たちを呑み込むものの、ダメージは皆無。水流は近隣の大樹を丸ごと飲み尽くし、天空へと消えていった。
「…………」
僕は彼方へ消えていった水を見やる。
――やはりとんでもない威力だ。
学生にしては優秀すぎると思っていたが、やはり魔法の腕も超一級。冒険者にも引けを取るまい。
「わ、悪い夢でも見てるようね……」
ネーシャが険しい顔で呟く。
そりゃそうだろう。
学生を相手にやり合うことになるなんて、夢にも思うまい。
「ふん。無傷とはな。伊達にSランク冒険者を気取ってないか」
魔導二輪車の挙動を止め、学生のひとりが苦々しげに言う。
「だが、所詮は多勢に無勢。数で押し切れば勝てぬ相手ではない」
「あんた……!」
アルルが憤怒の目つきで学生を睨みつける。
だが――学生の言うことも最もだった。
いま現在、こちらに押し寄せる学生の数は二百にのぼる。さらに数分後にはこれ以上の加勢が見込まれる。
間違いなく――ピンチという他なかった。
それでも。
「違うな。貴様はなにもわかっていない」
僕は一歩前に踏み出し、学生に向けて言い放つ。
「ピンチであろうが関係ない。どんな絶望的な状況であろうとも、わずかな可能性を見出し、全力で抗う……それが私の役目だ」
「C……」
アルルが感動したように見つめてくる。
だが――
それを教えてくれたのが、他でもない……ユージェス・レノアだった。
彼との出会いが僕を変えた。
どうせ自分なんかが頑張っても無駄。誰も救うことができない。
そんなふうに絶望しきっていた僕を、彼が救ってくれた。
恩人だった。
大好きだった。
そんな親友が――敵として、僕と立ちはだかろうとしている……
そう思うと、心にわだかまる錘が、さらに重量を増す……
「――大丈夫だよ、あなた」
乾ききった僕の手を、ぎゅっと握りしめてくれる天使がいた。
「言ったじゃない。ずっと傍にいるって。一生あなたを守るって。だから……泣かないで」
「アルル……」
「大丈夫。私が……ついてるから」
――そうだ。
僕はもう、ひとりじゃない。
守るべき人が、ここにも、たしかに。
と。
突如として、僕の脳裏に無機質な女の声が流れ込んできた。
『強力なコネクトを検出』
『これにより、クラージ・ジェネルとアルル・イサンスのコネクトを強化』
『アルル・イサンスとのコネクト時、クラージ・ジェネルの防御力倍増』
『クラージ・ジェネルとのコネクト時、アルル・イサンスはクラージの未来のみ可視化可能』
「こ、これは……」
僕はいっぱいに目を見開く。
――コネクトの強化。
たしかに聞いたことはあった。利用者同士の想いが強くなったとき、それは独自の進化を遂げると。
ただの惚気話だと思っていたが……本当に実在したとは。
「そっか……あなたたち……」
ネーシャが微笑ましい表情で僕たちを見つめる。そして得意の獲物――鞭を構えるや、勝ち気な表情を学生たちに向ける。
「ふふ、調子づいたところで本番といこうじゃない。まだウブな若い子ちゃんに……大人の遊びってもんを教えないとね♡」
「コネクト……Cとコネクト……」
面妖な笑みを浮かべるネーシャと、ひとりぶつぶつなにかを言っているアルル。
この二人は相変わらずだな。
だからこそ――救われる。
どうしようもなく絶望に染まりきったこの世界でも――頑張ろうと思える。
「ありがとう……みんな」
僕は小声で呟くや、片腕を突きだし、監視者に戻った。
「どのような状況であろうと関係ない。私はC。世界を監視し、世界を導く者だ!!」
※幼馴染タグ追加しました。
流行りに乗っかったんではなく、構想時からこうなる予定だったので、この流行にはびっくり(ノシ 'ω')ノシ バンバン
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