【ざまぁ回】冒険者ギルドのその後②
★
「ねえ! どうなってんのよ! これ!」
港町ルーネ。
その冒険者ギルドにて。
受付係のギーネ・ガッサムは、お得意様の依頼人から叱咤を受けていた。
「待てども待てども、まったく依頼が達成されないなんて! おかしいわよ! あんたたち、本当に冒険者ギルド?」
「も、申し訳ありません。ただいま冒険者の確保がままならない状態でして……」
ひたすら低姿勢に徹するギーネだが、女の怒りはこれしきでは収まらず。
「だーかーら! そういうとこが駄目だって言ってんの!」
と、さらに怒られてしまった。
「冒険者の確保ができない!? あんたたちの事情なんて知らないわよ! それもあんたたちの責任でしょうが!」
唾を吐き散らしながらワーワー喚かれる。
「ふん! 最近あんたたちおかしいわよ! 昔のギルドはどこいったわけ!?」
かなり取り乱してはいるが、彼女の言い分は最もだった。
《冒険者の確保》も、ギルドの事務員たるギーネの仕事。
それができませんと言うのでは、職務怠慢という他ない。
――だが本当に、これは予想外だった。
あのクラージ・ジェネルがギルドを去ってから、謎に負傷者が続出。これも想定外の出来事ではあったが、なんとか現状の人員で乗り切ることができた。
本当の地獄はその後。
どういうわけか、多くの冒険者が失踪するという珍事が発生。その誰もが、依頼の途中で姿を消したのだ。
これについては、つい最近になって原因が判明した。知能を持つ魔物たちに捕らわれ、そのせいで帰れなくなったのだろう。
むろん、この状態では依頼は不達成。
この時点でもギーネはめちゃくちゃ怒られた。
あんたたちの管理体制はどうなってんの!? と。
ギーネには当時、この理由がわからなかった。
あくまで自分たちは、依頼のランクに応じた依頼を冒険者に受諾してもらっただけ。なにもおかしいことはしていないし、マニュアル通りの対応でもある。
そして。
これまで評判が良かった当ギルドは不祥事を連発、多くの依頼人がクレーマーと化したわけである。
唯一頼りになるSランク冒険者――アルルとネーシャも、すっかりウチには来てくれなくなった。一説にはCという監視者と色恋沙汰になっているらしいが、そのせいでこちらの戦力は激減だ。
結果、
・負傷者の続出
・失踪者の続出
・Sランク冒険者に見放される
という不幸の三拍子が続き、港町ルーネのギルドはどんどん疲弊に追い込まれていった。
おかげで、依頼人から毎日怒られる始末。ギーネは肉体的にも精神的にも限界に追い込まれていた。
――こんなんじゃ、来月の給料また減っちまう……。これで生活していけるのか……?
一抹の不安が脳裏をよぎるが、
「ねえ! ちょっと聞いてるの!?」
女に怒鳴られ、ギーネはまた現実に戻されるのであった。
――二時間後。
「はぁ……」
ギーネは受付のカウンターで頬杖をつき、ひっそりとため息をつく。本来ならこんなことしていると怒られるが、他の職員もかなり疲れている。
だからギーネがひとり思案に耽っているからといって、誰も気にとめない。
疲れた。
結局、あのクソババアに二時間も怒られる羽目になった。
しかも香水くさいわ唾は飛んでくるわで散々だ。クレーム対応ほど心身を病ませるものはない。
――と。
ギーネははっと目を開き、姿勢をただす。
「帰ったぜー……っと」
見覚えのある男――ボドルス・グイーガが姿を現したからだ。
「ボドルス! 元気だったか!」
我を忘れてギーネは彼のもとへ詰め寄る。ボドルスとは仲がよかった。特にあの無能――クラージの悪口で話が弾んだものである。
ボドルスは「お、ギーネか」と呟くと、へへへと笑った。
「悪ィな。新聞見てんだろ? 俺も事件に巻き込まれてよ。Cに助けてもらったんだ」
「そうか……。やはりな……」
Cに助けてもらったというのは少々腹が立った。なにしろあいつのせいでアルルやネーシャが来なくなったのだ。
だが、それでもボドルスの帰還は喜ばしい。ギーネは疲れた表情をなんとか笑顔に変えて言った。
「な、まだ身体が痛むんだろ? 気休めに飲みいこうぜ。あのクラージのことで、溜まってるもんがいっぱいあるんだ」
「あ……?」
なぜかギロリと睨まれ、ギーネはどきっとした。
「クラージの悪口? おまえまだ気づいてねえのか?」
「は……? なにを……?」
「…………」
ボドルスはなぜか不愉快そうに顔をしかめると――あろうことか、ギーネの胸ぐらを掴んでくるではないか。
「!? おい、どうした! やめろ!」
「今度またクラージの悪口言ってみろ……。俺が許さねえ」
「え……」
「ふん。しらけたぜ。今日はもう帰る」
ガタッ。
ボドルスに手を離され、
「うあっ!」
ギーネは情けない悲鳴とともに尻餅をついた。
視線の先には、怜悧な目をしたボドルス・グイーガ。
「迷惑をかけといてなんだが――俺はCにつく。もうここには来ねえよ。じゃあな」
「え、おい! ちょ――」
ギーネの呼びかけも空しく、ボドルスはギルドを後にするのだった。
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