表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/45

【ざまぁ回】冒険者ギルドのその後②

 ★


「ねえ! どうなってんのよ! これ!」


 港町ルーネ。

 その冒険者ギルドにて。


 受付係のギーネ・ガッサムは、お得意様の依頼人から叱咤を受けていた。


「待てども待てども、まったく依頼が達成されないなんて! おかしいわよ! あんたたち、本当に冒険者ギルド?」


「も、申し訳ありません。ただいま冒険者の確保がままならない状態でして……」


 ひたすら低姿勢に徹するギーネだが、女の怒りはこれしきでは収まらず。


「だーかーら! そういうとこが駄目だって言ってんの!」

 と、さらに怒られてしまった。

「冒険者の確保ができない!? あんたたちの事情なんて知らないわよ! それもあんたたちの責任でしょうが!」


 唾を吐き散らしながらワーワー喚かれる。


「ふん! 最近あんたたちおかしいわよ! 昔のギルドはどこいったわけ!?」


 かなり取り乱してはいるが、彼女の言い分は最もだった。


《冒険者の確保》も、ギルドの事務員たるギーネの仕事。

 それができませんと言うのでは、職務怠慢という他ない。


 ――だが本当に、これは予想外だった。


 あのクラージ・ジェネルがギルドを去ってから、謎に負傷者が続出。これも想定外の出来事ではあったが、なんとか現状の人員で乗り切ることができた。


 本当の地獄はその後。


 どういうわけか、多くの冒険者が失踪するという珍事が発生。その誰もが、依頼の途中で姿を消したのだ。


 これについては、つい最近になって原因が判明した。知能を持つ魔物たちに捕らわれ、そのせいで帰れなくなったのだろう。


 むろん、この状態では依頼は不達成。

 この時点でもギーネはめちゃくちゃ怒られた。


 あんたたちの管理体制はどうなってんの!? と。


 ギーネには当時、この理由がわからなかった。

 あくまで自分たちは、依頼のランクに応じた依頼を冒険者に受諾してもらっただけ。なにもおかしいことはしていないし、マニュアル通りの対応でもある。


 そして。


 これまで評判が良かった当ギルドは不祥事を連発、多くの依頼人がクレーマーと化したわけである。


 唯一頼りになるSランク冒険者――アルルとネーシャも、すっかりウチには来てくれなくなった。一説にはCという監視者と色恋沙汰になっているらしいが、そのせいでこちらの戦力は激減だ。


 結果、

・負傷者の続出

・失踪者の続出

・Sランク冒険者に見放される

 という不幸の三拍子が続き、港町ルーネのギルドはどんどん疲弊に追い込まれていった。


 おかげで、依頼人から毎日怒られる始末。ギーネは肉体的にも精神的にも限界に追い込まれていた。


 ――こんなんじゃ、来月の給料また減っちまう……。これで生活していけるのか……?


 一抹の不安が脳裏をよぎるが、

「ねえ! ちょっと聞いてるの!?」

 女に怒鳴られ、ギーネはまた現実に戻されるのであった。

 




 ――二時間後。


「はぁ……」


 ギーネは受付のカウンターで頬杖をつき、ひっそりとため息をつく。本来ならこんなことしていると怒られるが、他の職員もかなり疲れている。

 だからギーネがひとり思案に耽っているからといって、誰も気にとめない。


 疲れた。

 結局、あのクソババアに二時間も怒られる羽目になった。


 しかも香水くさいわ唾は飛んでくるわで散々だ。クレーム対応ほど心身を病ませるものはない。


 ――と。


 ギーネははっと目を開き、姿勢をただす。


「帰ったぜー……っと」


 見覚えのある男――ボドルス・グイーガが姿を現したからだ。


「ボドルス! 元気だったか!」


 我を忘れてギーネは彼のもとへ詰め寄る。ボドルスとは仲がよかった。特にあの無能――クラージの悪口で話が弾んだものである。


 ボドルスは「お、ギーネか」と呟くと、へへへと笑った。


「悪ィな。新聞見てんだろ? 俺も事件に巻き込まれてよ。Cに助けてもらったんだ」


「そうか……。やはりな……」


 Cに助けてもらったというのは少々腹が立った。なにしろあいつのせいでアルルやネーシャが来なくなったのだ。


 だが、それでもボドルスの帰還は喜ばしい。ギーネは疲れた表情をなんとか笑顔に変えて言った。


「な、まだ身体が痛むんだろ? 気休めに飲みいこうぜ。あのクラージのことで、溜まってるもんがいっぱいあるんだ」


「あ……?」

 なぜかギロリと睨まれ、ギーネはどきっとした。

「クラージの悪口? おまえまだ気づいてねえのか?」


「は……? なにを……?」


「…………」


 ボドルスはなぜか不愉快そうに顔をしかめると――あろうことか、ギーネの胸ぐらを掴んでくるではないか。


「!? おい、どうした! やめろ!」


「今度またクラージの悪口言ってみろ……。俺が許さねえ」


「え……」


「ふん。しらけたぜ。今日はもう帰る」


 ガタッ。


 ボドルスに手を離され、

「うあっ!」

 ギーネは情けない悲鳴とともに尻餅をついた。


 視線の先には、怜悧な目をしたボドルス・グイーガ。


「迷惑をかけといてなんだが――俺はCにつく。もうここには来ねえよ。じゃあな」


「え、おい! ちょ――」


 ギーネの呼びかけも空しく、ボドルスはギルドを後にするのだった。




 

お読みくださいましてありがとうございました!


【恐れ入りますが、下記をどうかお願い致します】


すこしでも

・面白かった

・続きが気になる


と思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。


評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。


今後とも面白い物語を提供したいと思っていますので、ぜひブックマークして追いかけてくださいますと幸いです。


【レビュー】もいただけるとすごい嬉しいです!


あなたのそのポイントが、すごく、すごく励みになるんです(ノシ ;ω;)ノシ バンバン


何卒、お願いします……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ボドルス、まさかCの正体に感づいた?
[一言] ボドルスがかっこよく見えた
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ