表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/45

魔物とすら仲良くなる監視者

 ナーロット収容所。


 犯罪者を一時的に預かる場所なので、当然ながら雰囲気は暗い。どんよりとした鉄の道を、僕は案内されるままに進んでいく。僕たちの足音が嫌に大きく反響する。


 それにしても遠いな。

 もうずいぶん歩いた気がするが。


「……はは。すみません」

 僕たちの心境を察したのか、看守が苦笑いを浮かべる。

「今回の犯罪者・・・はかなり特殊でしたから。特別収容室で、厳重に監視しているんですよ」


「特別収容室……」


 聞いたことがあった。


 テロの首謀者や、他国からの工作員など、第三者から奪還される可能性がある者。

 そういった犯罪者を収容する場所があるのだと。


 そう思えば、かの喋るゴブリンはたしかに危険だ。まだ僕たちの知らない力を使って、魔物たちを呼び寄せるかもしれない。そう思っての判断だろう。


「なに。謝ることはない。おまえたちの判断を尊重しよう、看守」


「恐縮です、C様」


 ここでも《C様》か……

 まだまだ呼ばれ慣れないな。


 そしてほどなく、頑丈に封鎖された大扉に行き着いた。他の部屋とは違い、いくつもの鍵が幾重にも張り巡らされている。


「ちょっと失礼……」


 看守は会釈すると、脇にあったボタンを慣れた手つきで押していく。そしてひとつの操作を終えるたび、鍵がひとつずつ外れていく。


「と、とんでもないセキュリティーね……」


「フ。こうでもしなくば、大罪者を安心して預けることができまい」


 呆れ声を発するアルルに、僕も苦笑まじりに答える。


 せっかく捕らえたのに逃げられました――という結末では、笑いたくとも笑えない。


 そしてやっとすべての操作を終えたとき、ガシン! と扉が振動した。ようやく僕たちを出迎えてくれるわけか。


「C様、アルル様。くれぐれも……」


「気にするな。おまえたちが24時間、遠隔で監視しているのだろう」


「え!? は、はい。そうですが……」


 未来予知で先回りして答えた僕に、看守が目を丸くする。


「心配は無用。ここにはSランク冒険者もいる。万一のことなどありえない」


「……はは。申し訳ありません。あなたがたには無用の心配でしたか」

 看守は改めて敬礼すると、僕を見てやや口調を崩した。

「C様。あなたほどの人物に出会えて光栄です。息子があなたのサインを求めておりまして……」


「フフ。求めているのは本当におまえの息子かな」


 思いっきり見えたぞ。

 この看守が、僕のサイン色紙を家で抱きしめている未来が。


「え……。は、ははは。参りましたね。なにもかもお見通しとは」


「あとで考えておく。それより、いまは――」


「はい。どうか、お気をつけを」


 看守が扉を開き、僕たちは覚悟を決めて中に入るのだった。






「ふん。お次は貴様のお出ましか」


「……久しいな。ゴブリンよ」


 くだんのゴブリンは両手を手錠で吊されていた。鋼鉄の椅子に座らされており、両足もきつく施錠されている。この金具自体になにかしらの効果があるのか、緑色にほんのり光っているのがわかる。


「どんな手を使っても無駄だ。わしは絶対に口を割らんぞ」


「…………ふむ」


 これは驚いた。


 本当にその通りだ・・・・・


 いかなる手段を用いようとも、このゴブリンが自白する未来がまったく見通せない。仲間を売るくらいなら、このゴブリンは死を選ぶだろう。


 本当に驚いた。

 あの卑劣な事件の首謀者とは思えない。


「……そのようだな。貴様の溢れんばかりの忠義心には、いかなる交渉術も敵うまい。自白は諦めよう」


「え……?」

「なんじゃと……?」


 アルルとゴブリンが同時に目を見開く。


「フフ、ハハハ。そのような甘い文句で儂の警戒心を解くつもりか。そんなものは通用せぬぞ」


「いや。そうではない。貴様の忠義心は本物だ。心から魔王を敬愛しているのだろう」


「…………」

 ゴブリンがまたしても目を見開く。老年の魔物とはいえ、さすがに動揺しているようだ。

「……ならばなにをしにきた。儂を殺すか」


「まあまあ。そう早まるな」

 僕は仮面の内側で笑うと、看守に用意させた簡易イスに座る。

「ならばせめて、魔王復活に向けてどれほど時間がかかるのか……それだけ教えてもらおうか。これなら支障はあるまい?」


「ふん。それを聞いてどうする。貴様にとって良くない情報しかないぞ」


「だから聞いているのだ。人間の苦しむさまを見るのは、さぞ楽しかろう?」


「…………」

 ゴブリンは数秒だけ考え込み、僕をじっと見つめた。

「……ふ。なかなかどうして、面白い人間じゃの。願わくは解剖実験の道具にしたいものじゃ」


「クク。それはご遠慮願おうか」


「……なに仲良くなってんのよ」


 アルルが呆れた様子で突っ込みを入れる。


「……よかろう。我らの策に支障のない範囲ならば――話してやる」


「ほ、ほんと……?」


 アルルが驚きの声を発する。


 それも当然。

 収容所のプロたちがどうしても口の割れなかったゴブリンに、限定的とはいえ話してもらえるようになったのだから。


 ゴブリンは数秒だけ瞳を閉じると、重々しそうに口を開いた。


「――率直に言おう。魔王様の復活まで、もう秒読みの状態じゃ」


「……む」

「え……!?」


 僕は息を呑み、アルルが素っ頓狂な声を発する。


「魔王様の復活に必要なのは、世界各地に広がる宝玉ほうぎょくが三つ。それが血の色に染まりきるまで、人間の血を献上する必要がある」


「なるほどな……」


 魔物たちが人間を襲っていたのは――魔王復活のため。

 今更ながら、その仮説が現実のものとなった。


「……そして、三つの宝玉は限りなく血の色に変化してきている。我らの悲願達成まで……もう間もなくじゃ」


「そうか。もう猶予はないのだな」


「うむ。貴様らがどう足掻いても無意味。――どうだ、こんな情報、聞いてもどうしようもなかろう?」


「ああ。そうだな」


 できるだけ、各冒険者ギルドに警戒態勢を敷くよう要請するしかないか。

 また僕の目が届く範囲では、未来予知をあますことなく使うほかない。


 僕は仮面の内側から、ゴブリンの未来を観察する。


 やはり――これ以上は聞けないか。

 そう判断した僕は、イスから立ち上がり、改めて礼を述べる。


「協力に感謝する。それだけ聞ければ充分だ」


「ふん。好きにするがよい。もう人間にはなにもできん」


「ふふ、そうはさせんさ」


 互いに不気味な声で笑いあうと、僕は改めて身を翻す。


 魔王復活まで、あとわずか。

 できることをやっておかねば――


 

 

お読みくださいましてありがとうございました!


【恐れ入りますが、下記をどうかお願い致します】


すこしでも

・面白かった

・続きが気になる


と思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。


評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。


今後とも面白い物語を提供したいと思っていますので、ぜひブックマークして追いかけてくださいますと幸いです。


【レビュー】もいただけるとすごい嬉しいです!


あなたのそのポイントが、すごく、すごく励みになるんです(ノシ ;ω;)ノシ バンバン


何卒、お願いします……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ