抱きついてくる彼女を、僕は。
すみません。
やっぱりランキング上位を狙いたいので、ちょくちょくタイトルを変えます。ご迷惑おかけしまして申し訳ございません。
旧タイトル
「ギルド受付係は未来を変える! 〜同じミスを繰り返して追放された受付係、実は最強スキル《未来予知》で冒険者を救ってました〜」
「綺麗ね……」
アルルの呟きが、妙に大きく響きわたる。
ナーロット魔術学園。
その屋上。
地上を見下ろせば、学生たちの活気溢れる姿を確認することができる。そして遠くを見通せば、魔法の色彩に彩られた夜の街並み。
この街は昔より遙かに変わった。
けれど――変わらないものも確かにあって。
それがここ、魔術学園の屋上だった。
「はは……昔とそっくりだよ、ここだけは」
「え……?」
目をぱちくりさせるアルルに頷きかけると、僕は柵の一点を指差す。
そこには、
「ユージェス&クラージ見参!」
という落書きが掘られていた。
「こ、これは……」
「うん。まだ仲良かった頃、ユージェスが掘ったんだ。よせと言ってるのに、あいつは言い出したら聞かなくてね……」
長い年月が経ったとはいえ、こんな細かなところまでは誰も気づかないんだろう。
記憶そのままの落書きが、たしかに、そこに。
「ふふ……本当に仲良かったのね……」
アルルが微笑ましそうに落書きを撫でる。その表情は、やっぱり天使のように優しくて。
「うん。親友だった。僕にとってはかけがえのない友達だったよ」
当時、《未来予知》というスキルで気味悪がられていた僕を、彼だけは気にかけてくれた。僕のことをすごいと誉めてくれた。
「だからこそ、失いたくはなかった。陽気で誰よりも思慮深いユージェスを……」
いまでも悔いは残っている。
なぜあのとき、ぶん殴ってでもユージェスを止めなかったんだろう。
僕が嫌われようが構わない。
僕は、彼が死ぬ運命にあると知っていながら、見逃してしまった。
「クラージ……」
優しく手を握ってくるアルル。
「はは。でも、これで――すこしは報われた気がするよ」
眼下では、魔法を打ち合ってじゃれている生徒たちがいる。その誰もがあまりにも優秀だった。
魔導二輪車や、蘇生魔法にしても、従来からは考えられない革命だ。
彼の後輩は、ここまで優秀に育ってくれた。
それを思えば、僕のいままでの頑張りは無駄じゃなかった……
――はは、クラージよ。おまえは自己犠牲が激しすぎるんだよ。たまにゃ好きなように生きてみたらどうかね?――
――ん? いや、あの子の胸に見入ってたよ。すげーでかくね?――
「…………」
嫌でも思い出してしまう。
彼の笑顔。言葉。ちょっと偉そうな態度まで……
だからちょっとだけ、視界が滲んでしまった。
「ね……クラージ」
アルルの可憐な瞳が、僕をしっかりと見据える。
「最初に私が提案したこと、覚えてる? 『私があなたを守るから、あなたは私を守ってほしい』って……」
僕はしっかり頷く。
忘れたくても忘れられるはずがないじゃないか。
「あれね……変更したいの。いいかしら?」
「へ、変更……?」
「うん」
気恥ずかしそうに視線をさまよわせるアルル。
「私が一生あなたを守るから、あなたは私を一生守ってほしい」
「……ん?」
どういうことだ?
首を傾げていると、アルルは「ああもう、こんなの私らしくないわ!」とひとりごちた。
そして改めて僕を見据え、しっかりと――言った。
「クラージ。あなたが好き。これからもずっと、傍にいたい」
「…………ぁ」
その言葉に、僕は。
「……で、でもさ、アルル。僕は昨日、魔物たちに宣戦……」
「いいのよ。そんなことはわかってる!」
言いながら、彼女は僕の両手をしっかり握りしめてくる。
「……そんな自己犠牲を省みないところも含めて、あなたが好きになったのよ。文句ある?」
「いや……文句はないけど……」
なんだこの押しの強さは。
どこかユージェスを思い出させるところがある。自己犠牲のくだりも、彼の言ったことそのままだ。
「それとも……駄目なの? 私じゃ……」
「いや、いやいや。ちょっと待った」
涙目を浮かべるアルルに、僕は慌てて呼吸を整える。
「ちょっとびっくりしてるけど……アルル。こんな僕でよければ、ずっと一緒にいよう」
「あ……!」
そのときの最上の笑顔を、僕はきっと、忘れないだろう。
「や、やったー! クラージ! 大好き!」
「わ、わわっ……!」
ほんのり涙を浮かべたアルルが、黄色い声をあげて抱きついてきた。
僕はそんな彼女を、しっかり受け止めた。
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