策略家Cは誰も死なせない
案をいただきまして、タイトルを変更しました。
旧タイトル
「最強預言者Cの暗躍 〜無能扱いされて追放された元受付係、実は最強スキルの持ち主につき〜」
タイトル案くださった方ありがとうございました!
「す、すごい……」
目をぱちくりさせながら、アルルがぽつりと呟く。
「私たちを誘導しながら、こんなことまで見通してたっていうの……?」
「ええ……。たとえあの力があったとしても、ここまではできないでしょう」
ネーシャも放心気味にそう言った。
「あのときは冗談半分で言ったけど……本当に男らしいところあるじゃない」
「なにをブツブツ言っている」
僕は一歩だけ前に踏み出しながら、眼前に屹立するクリムゾンワイバーンと対峙する。
「立ちはだかる敵は強い。だが、私たちが手を取り合えば、決して勝てぬ相手ではない。アルル、ネーシャ、気張っていくぞ!」
「「はいっ!」」
アルルとネーシャの返事が重なった。
だが実際問題として、僕はSランク冒険者だけを視ていればいいわけではない。
そこかしこで戦っている冒険者たちも同様だ。
ゴブリンが潜ませていた変異種は、クリムゾンワイバーンほどではないにせよ、強大な力を持っている。
普通に戦うだけでは勝てない。
よしんば勝利できたとしても、なにかしらの怪我を負ってしまうのは必須。この場に協力を頼んだ責任者として、僕は彼らの命も背負わねばならない。
「ボドルス! 攻めすぎるな、右に回避!」
「……? お、おう」
よくわからないといった表情を浮かべるボドルスだったが、一応は僕を信頼してくれているようだ。戸惑いながらも右ステップを敢行、巨大昆虫を模した魔物の鎌を、すんでのところで避ける。
「あ、あっぶねえ……。すげえスピードだぜ……」
そして無事着地するや、彼はふっと笑う。
「また幸運……じぇねえな。おまえはやっぱりすげえ奴だよ、C」
「御託はいい。おまえはもうすこし身を守れ。そうすれば勝機が開ける」
「へへ、了解」
鼻をこすって快活な返答をするボドルス。
同様にして、僕は各所で激戦を繰り広げる冒険者たちに指示を出していく。
最初こそみんな戸惑っていたが、助けた恩義からか、すこしは信頼してくれているようだ。次々と僕が的確な指示を出しているのを見て、やがて全員が僕に従ってくれるようになった。
「すげえ、なんでこんなことができるんだ……」
「かっこいい……」
ときおり冒険者たちが変な目で僕を見てきたので、漏れなく叱咤激励しておいた。
複数人へ、それぞれの指示を振る――
それはかつてないほど難しく、頭を疲弊させる戦いだった。
それでも。
もう絶対に――誰も死なせやしない。
それがユージェスへの償いになると信じて。
それが、唯一僕のできることだと信じて――
夢中になって指示振りをしているうち、いつしか戦いは佳境になっていた。あれだけ多かった魔物の群れは、もはや数えるほどしか生き残っていない。反してこちらの犠牲は皆無なので、あとは残りの冒険者で結託すればいい。
そちらのほうは未来予知をするまでもないな。ボドルスたちに任せよう。
あとは――
「ヌオオオオオオオッ!!」
クリムゾンワイバーンが憤怒の雄叫びをあげ、僕たちをぎょろりと睨みつける。
奴にも明らかな焦りの色が見て取れた。
それもそのはず。
アルルたちの攻撃がクリティカルに当たる反面、クリムゾンワイバーンの攻撃はかすりもしない……
だから戸惑っているのだろう。いったい自分はなにと戦っているのか――と。
ちらりと、僕は老いたゴブリンを見やる。奴にとってはこれ以上ないピンチのはずだが、なぜか醜悪な笑みを浮かべている。まだ手が残っている顔だ。
やはり、な――
『アルル、ネーシャ。聞こえるか』
『うん』
『どうしたの?』
僕の念話に、二人が反応する。
『あのゴブリンはまだ手を残している。おそらく――クリムゾンワイバーンに自爆の能力があるはずだ』
『え……』
そして自分だけ防御魔法を展開し、爆破を逃れるつもりなのだろう。その未来がすでに視えている。
自爆のためにはゴブリンの指示を要するらしい。決着をつけるならその前だ。
『奴に自爆の余地を与えてはならない。いまのうちに、二人で最高の技を』
『了解……!』
アルルとネーシャは素直に承諾し、それぞれ魔法の準備体制に入る。それだけで周囲に地鳴りが発生し、わずかな地震が発生する。
「ぬ……!」
ようやくゴブリンがこちらの出方を悟ったようだが――もう遅い。
「いまだ! アルル、ネーシャ! いけっ!」
瞬間、あまりにも絢爛豪華な魔法の渦が、クリムゾンワイバーンを呑み込んだ。
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