Cの最強スキルを思い知れ!
タイトル変更となっています。ご注意ください。
こういうタイトルだと読みたくなるかも! というのがあれば教えてくださいますと幸いです。
旧タイトル
「最強の受付係 〜無能と言われたギルド受付係、同じミスを繰り返して追放されましたが、実は最強スキル《未来予知》で冒険者を影で救ってました〜」
★
まずい。まずいまずいまずい……
老いたゴブリンはかつてない焦りを感じていた。
突如現れた謎の侵入者たち。
奴らはたった三匹で、数々の罠を突破していった。
そう。
まるで最初から、罠がそこにあるのを知っていたかのように。
強い。強すぎる。
洞窟の仕掛けは芸術的かつ完璧だったはずだ。
縦横無尽に張り巡らされたトラップは相手の不意を突けるはずだし、待機させておいた配下も強者揃い。大勢の人間が詰め寄せているのならいざ知らず、たかだか三匹という戦力で突破されるわけがない。
ありえない。ありえないありえない。
この私の頭脳を超える者がいるなどと……!
――まさか……
そこまで考えて、ゴブリンの脳裏にある予感が閃く。
これほどの強さとなると、あいつらは《あれ》を持っているとしか思えない。
いや。
……まさか。
それだけはありえない。あってはならない。信じたくない。
なんにしても――まずい。
この状況を乗り切るには、いったいどうしたら……
だが、老いたゴブリンには考える余裕さえ与えられなかった。すさまじい音をたて、扉が破壊されたからだ。
★
「ここが……終点か」
僕は静かにそう呟く。
樹海に隠された謎の地下通路。
残すところはこの部屋のみとなった。近辺にはまたしても大がかりな罠が仕掛けられてあったし、ここが終点と考えて間違いないだろう。
随分と広い部屋だった。
いままでの通路と違って充分な明かりが灯されており、そこかしこに
は書棚まである。また部屋の奥には正体不明の器具が散見された。
そして最奥のテーブルの前で屹立するは――片眼鏡をかけたゴブリン。
ボドルスの証言通り、若干の老化と知性が感じられる。
「あんたが……親玉ね」
厳しい眼光を放ちながら、アルルがすこしだけ歩み出る。剣の鞘に手を添えていて、警戒心も忘れていない。
「ひ、ひいっっ」
対するゴブリンといえば、情けない悲鳴をあげて後退するではないか。この大事件を企てたにしては、随分な小心者である。
「く、来るな! 汚らわしい人間がっ!」
「ふん。あんたなんかに言われたくないわよ」
アルルの視線は依然冷たい。
こういうときの彼女はかなり怖いな。
見たところ、あのゴブリン自体に戦闘力があるとは思えない。たしかに知性面においては頭ひとつ飛び抜けていそうだが、戦闘面では僕といい勝負だろう。
となると、考えられることはひとつ。僕の《未来予知》でも同様の光景が視えている。
『アルル、ネーシャ、油断するな。五秒後、かなりの強敵が現れる。いまのうちに構えを』
『オーケー』
『了解』
僕が飛ばした念話に、二人は覚悟の決まった表情でそれぞれの武器を取る。
かくして、五秒後――
「ウガアアアアアアアアッ!!」
けたたましい雄叫びとともに、一体の魔物が姿を現した。なにか魔法でも使っているのか、どこからともなく出現したのである。
「あ、あれは……!」
アルルが驚きに目を見開く。
「クリムゾンワイバーン……? でも、なんかすこし違う……!」
そう。
僕たちの知るクリムゾンワイバーンは、体表を薄い皮に覆われ、尖った骨が身体のあちこちから飛び出た魔物だ。
炎を主体とする攻撃を得意としているためか、通常は紅のオーラが迸っているはず。
なのに――
「く、黒い……? なんなのよ、こいつ……!」
ネーシャも僕たちと同様、驚きを隠せない様子だ。
いま僕たちに現れた魔物は、クリムゾンワイバーンに似ているけれど――明確な違いがある。
赤いはずの体表は漆黒に包まれ。
白いはずの眼光は蒼に染められ。
Sランク冒険者の二人ですら、会ったことのない魔物だった。
ネーシャは鞭をしならせながら、厳しい表情で呟く。
「アルル、気をつけて……。こいつは普通のクリムゾンワイバーンじゃない。尋常じゃない力を感じるわ……!」
「う、うん。わかってる……!」
アルルも改めて表情を引き締める。
心なしか、僕はかつての骸骨剣士を思い出していた。Sランク冒険者たるアルルでさえ敵わなかった、あの正体不明の魔物を。
「ふふ……はは。はーはっは! どうだ、怖かろう!」
老いたゴブリンが醜い笑声をあげる。
「だが、ワシの策はそこで終わらん! いでよ、我がしもべたち!」
奴が両腕を広げて甲高く叫んだ――その瞬間。
ドゴォン! と。
すさまじい破砕音が響きわたると同時、破られた室内の壁から大勢の魔物が飛び出てきた。
そのどれもが、見たことがありそうで、見覚えのない魔物……
おそらく、骸骨剣士やこのクリムゾンワイバーンと同じく、変異した魔物だろう。
「多い……!」
「これはまずいわね……!」
さすがのSランク冒険者たちもこれには参ったようだ。青ざめた表情で後ずさる。
たしかにこれは絶望的な状況だ。
普通なら――な。
「ふん……その程度か」
僕は仮面の額の部分に手をあて、静かに言う。
「残念だったなゴブリン。貴様の命は――ここまでだ」
そうして僕が指を鳴らした、その瞬間。
「うるぁぁぁぁぁぁぁあ!」
たくましい叫び声とともに魔物に斬りかかるは――ボドルス・グイーガ。さすがというべきか、彼の剛胆な一振りは、多くの魔物を後退させた。
「ボドルス……? な、なんで……」
「いえ。彼だけじゃないわ……!」
目を瞬かせるアルルに、ネーシャが大声を張る。
そう。
ネーシャの言う通り、僕が《頼み事》をしたのは彼だけではない。
「はああああああっ!」
「おらああああ!」
僕の合図によって、いままで隠れてもらっていた冒険者が次々と室内になだれ込む。
僕が選定した冒険者はみなBランク以上。変異した魔物に対しても、粘り強く戦えるだけの戦力を持っている。
「な……ば、馬鹿な……」
震えるゴブリンに向けて、僕は決然と言い放った。
「迂闊だったな。これだけの人間を収容しているなどと――貴様は冒険者を甘く見すぎていた」
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