11月7日【ドラゴンフルーツはサボテンの実】
床下の倉庫って秘密基地っぽくてなんか好き。
今日は学校が午前授業だったためか昼には全員帰宅のテンション爆上げ状態。
俺はそういう賑やかなのが嫌いじゃないけど自分からはしゃぐのはいまいち苦手ではある。
家に帰って創作メニューでも作って楽しむのが俺の幸せってヤツだ。
でもまぁ、そんなこと言っても今日はそんな気分じゃないから休むときはしっかり休む、ゆっくりするのに限る。
「昼飯は無いが作るのも億劫だしな。 でも腹は減る……コレでも食うか。」
床下の倉庫の段ボールから赤くてトゲトゲした塊を取り出す。
「なっ、なんなのだコレ。」
ちなみに教師と言えど生徒でもあるマルも帰宅の例外じゃないからいったん別れたあと秘密裏で合流してお持ち帰りしてきた。
学校で俺らが付き合ってるのを知ってるのはごく少数だし言いふらされる心配もない信用におけるヤツらばかりだから安心だが。
「コレか?」
俺は段ボールを持ち上げてはマルによーく見せてやった。
お決まりの言葉も投げつけて完封しておく。
「ほら、よーく見てると良いぞ。」
「気持ち悪いです!! これは本当に食べ物なのですか!? 段ボールにはサボテンの絵が描いてあるですが……。」
真っ赤な実に申し訳程度の葉っぱ、何を隠そうこれはドラゴンフルーツという名前なら聞いたことはあるんじゃないかと思われるフルーツだな。
食ったことがあるとなればまた別だろうが。
「ドラゴンフルーツはサボテン……サンカクサボテンの実だからな。 サボテンの絵が描いてあるのは間違いじゃない。」
「さ、サボテンの実は食べれるとは聞いたことがあるですが、まさかドラゴンフルーツがソレだったとは。」
キンキンに冷えたドラゴンフルーツをナイフでスパッと両断してやると片割れをスプーンと共に差し出す。
ゴマみたいな種がギッシリ詰まって見た目はあまりよろしくないがほどよい甘さとキウイに似た食感が癖になる。
マルを膝の上に乗せながら俺は昼飯のドラゴンフルーツを黙々と貪る。
一口食べてうまいとわかればマルだってスプーンの速度は加速する。
「美味しいです!! あとひとつは丸々いけるです!!」
「あんまり食い過ぎるとお腹壊すからなぁ、半分までだ。」
こんな肌寒い日に冷たい果物を食べるなんてどうにかしてるって思われるかもしれないだろうが膝上のマルが居るだけで心とお腹が温まる。
この幸せは抱き締める側の俺だけの特権だ。
スーパーとかでも売ってるところはたまにあるので見かけたら1つだけでも。