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電子精霊になってソシャゲ界を徘徊する  作者: 文武ロデオ
FAITHS & BRAVES編
8/20

第8話 女神の啓示と初めてのガチャ

前回:電子精霊ファンタジーの大地に立つ

「......なぁ、あの御触書の内容どういうことなんだ?」

「はぁ? 見りゃ分かるだろう。 啓示だよ、女神の啓示」


 隣の男に御触書の内容を聞いたら呆れた声で言葉を返す。


「この一年戦争の膠着状態が続いたせいでなんの進展もなかったけど、この間女神の啓示が降りてきたんだ」

「なんでも三国にそれぞれ英雄が現れたとかで、今後の戦が激しくなるんだ」


 偶々立ち聞きした近くの男たちも会話に入ってきた。


「そこで協会と国が大々的に徴兵と勧誘おっぱじめやがったってーワケでい。 なんと一人30ジェムも貰えるんだぜぇ!? 気前よすぎっちゃあありゃしねぇ!」

「一人3ジェムだけでも一財産なのにな。 けどそれ試験を突破した奴らだけに送るんだろ?」


「ジェム」というのは「フェイブレ」で課金すると発生する宝石だ。 ゲーム内の通貨である「コイン」よりも遥かに希少であり、その価値に天と地の差もある。  ガチャもこのジェムを消費しながら行うのである。


 ......そして自分は先ほどその試験というチュートリアルを終えたばかりだったのだ。 もちろん彼らがいう十人分の宝石、30個のジェムも貰い受けていた。


 変に絡まれたらたまらない。 タイミングを見計らってその場を去った。


「あーあ、俺におこぼれでも恵んでくれるお人よしはいねーかなー」

「......つまり落ちたのか。 なっさけねー話だな、おい?」

「うっせ、しばくぞテメェ!」


 口喧嘩で盛り上がる男たちをよそにもう一度御触書を見上げた。



『フェイブレ一周年記念イベント開催! 新規ユーザースタートダッシュキャンペーン実施中!』



 自分の目には運営からのお知らせにしか見えなかった。 しかし男たちの話からはこれは運営という神の存在から降りた啓示になってるみたいだった。 ファンタジージャンルに入るこのゲームに合う解釈ともいえる。



 ―――



 一通りギルド内を散策したら斡旋所に足を運んだ。


 いよいよソシャゲの醍醐味である「ガチャ」を試す時が来た。


 このゲームでは一回の戦闘に自分も含め最大五人までしか出撃ができない。 なので最初は四人まで引こう。 と、思っていたが、斡旋所の窓口の横にまた「女神」なる存在に関する御触書を見かけた。



『新規ユーザー向け初回限定! 10連ガチャ、SRユニット1体確定!』



 自分の目にはまたゲームに出てきそうな文章が現れる。 この自動修正のせいで空気を張り付く緊張感がそがれてしまう。 とても戦争中とは思えないゆるさだ。


 だが内容はこちら向きのようだった。 なにせとびっきり強い味方が仲間になるからだ。


 ユニットの強さはレアリティ、つまり希少性で決まる。 弱くてガチャの確立が高い順からCコモンUCアンコモンRレアSRスーパーレアURウルトラレアと五つに分かれている。 強いユニットほど引き当てるのは困難である。


 一人SRを迎え入れるのは嬉しいが、今後楽にゲームを進めるようにせめて後三人はR以上であってほしい。


 しかし、始まったばかりで今は自分一人。 とりあえずは人数を揃えたいところだ。


 斡旋所の空いてる窓口についた。


「......らっしゃい」


 対面した受付人の挨拶はおざなりのものだった。 だが50代前半の大男の数々の傷跡が彼の歴戦と実力を物語っているようだった。 少し男の威圧的な雰囲気に押されたが、自分のギルドカードを差し出し要件を述べた。


「とりあえず十人仲間に入れたい。 頼めますか?」


 受付人は自分と自分のギルドカードを交互に睨んだ。


「新人試験合格者、リーダー適性有り、戦闘の実力は申し分ないと。 たかが王都のボンボン共が勝手に決めたお遊びだけじゃ戦士は務まらんぞ?」


 大男はギルドカードをひらひらと揺らし、方眉を上げてすごむ。


 実戦と試験は所詮別物。 その意図を伝えるためにこの男は挑発してきたのだろう。


「同感だ」

「......ふん。 筆記テストはインクが染みた紙屑だ。 模擬試験もただのチャンバラ。 それだけでいい気になっていたらすぐにでも死ぬぞ」


 手元の書類に何かを書きながら受付人は最後に口で忠告し、ギルドカードを返した。


「明後日の昼までにまたここに来い。 その時に集まってきた連中と顔合わせする」

「え?」


 思わず間の抜けた声を出した。 ガチャとは普通回した直後に結果が見えるものだ。 だからすぐに会えると思っていた。


「何当然なことに驚いている? ウチに預かっているボウフラどもは確かに多いが、テメーが話持ってきて向こうが伸るか反るかってー形だ。 一発で無名の新人と組む物好きなんぞウチにはいねーぞ。 分かったならさっさとどけ。 後がつかえているだろうが」


 呆れた受付人はシッシッと手で払った。



 ―――



 引き払ったあとでも驚きを隠せなかった。 しかしそうだった。 この世界の設定では自分を見定めてユニットが仲間になるシステムになっていた。 坦々と進めるゲームとつい結び付けてしまう。


 そして以前から持っていた疑問も思い出す。 先ほど普通に会話していたが、ギルド内の人間すべてゲームでいうNPCのはずだった。 なのに決められていたセリフを繰り返すこともなく、他のNPCと対話したり、何かしらの反応をしていた。


 アプリゲームの世界であり、しかし世界はゲームではない―ソシャゲ界。


 自分はソシャゲ界がソシャゲ界で足り得るところ、その特性と法則性をまだ分からないままでいた。



 しばらく自分の疑問に思い更けていると、後ろから声をかけられた。


「おやっさんはああ言ったけど、おやっさんなりにお前に期待しているぞ」


 振り向くとそこには黒い衣装をまとった青年がいた。


「慢心って言葉が嫌いから厳しいんだ。 悪く思わないでくれよな」

気になる勧誘はCMの後


冷やし章管理はじめましたー


次回:演出

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