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電子精霊になってソシャゲ界を徘徊する  作者: 文武ロデオ
チュートリアル編
7/20

第7話 追われるものと御触書

前回:電子精霊新しい名前とアプリを得る

「はぁ...! はぁ...っ!!」


 雨の夜。 森の中を走る女騎士は無慈悲に冷たい雨に打たれる。 暗闇の道を照らす唯一の明かりは落雷の稲光。 息を荒げながら女騎士は走る。


「いたぞ! 追えーーッッ!!」


「こっちだ、逃がすなーーッ!」


 真後ろに追手が迫る。 手に武器を持った賞金稼ぎと追跡者が足跡を嗅ぎ付け、ついに彼女を目で捕らえる。


「待ちやがれ!!」

「くっ...!」


 前から賞金稼ぎの男が道を阻む。しかし女騎士はここで立ち止まることは許されない。


『悪しき魂達を凍てつかせ!』


 剣を抜刀する。 言霊と同時に空を斬る。


「ぎゃあぁーー!!」


 すると空からいくつもの氷の破片が刃となり、男の皮膚を切り刻んだ。 腕に突き刺さった氷は瞬時に接触部分を凍てつき、体温との落差で痛覚を刺激して激痛を与えた。


「痛てぇぇぎゃべっ」


 痛みに悶える余地を与えず、女騎士は男を横に殴り飛ばす。


 しばらく走り続けると、賞金稼ぎ共の声が遠くに聞こえる。 うまく追手を撒いたようだ。



「一刻も早く......姫様を......なのにっ!」


 女騎士は呟いて更に加速する。 


 託された、ただ一つの使命を果たす為に―――



 ―――



 剣と魔法の世界「ヴァリアント」。 ここにはかつて諸悪の根源魔王とそれにに立ち上がった選ばれし勇者が世界の命運を賭けた暗黒の時代があった。


 魔王から解き放たれた世界に次に訪れたのは冒険の時代。 未知なる大地と秘められた宝を探求する黄金の時代があった。


 そして現在......人は人同士争い、世界は戦火の渦に巻き込まれた。 血で血を洗う百年も続く戦争が新たな戦乱の時代を呼び寄せてしまった。


 これは、勇気ある心を持つ小さき者たちの大きな物語。


『FAITHS & BRAVES』へようこそ―――



 ―――



 アプリゲートを潜った先にたどり着いたのは戦場の跡地だった。 朽ち果てた武具や焦げた土だけが残った平原に冷たいつむじ風が通る。 命の気配が皆無だった。


 自分の近くに水たまりを見つけた。 鏡の代わりに水面に反射した自分の姿を確認する。


 黒い髪で褐色肌の青年が写されてた。 これは以前の姿なのか、それともこのソシャゲ界のキャラクターなのか分からない。 以前は動く案山子という変わった設定だったが今回は人間がベースになっている世界みたいだった。 他のアプリでもよく人間の姿をとったことがあったのが、容姿がどれも異なっていた。


 革鎧一式身にまとい、手には革製のバックラーと腰に鉄製のショートソードを装備してた。 ここは中世ヨーロッパのような王道な設定を持つ世界らしい。


 アプリの説明欄によるとこの『FAITHS & BRAVES』、通称『フェイブレ』は戦略シミュレーションRPGというジャンルだった。 駒のようにユニットを動かし敵を倒すシンプルなルールではあるが、多彩の役職と様々な技を繰り出し、より有利に戦局を動かす戦略性がユーザーの人気を呼んだ。


 さらにギルドの斡旋所でユニット勧誘を掲示板に貼ることでランダムに新しいユニットが仲間になる。


 要するに、ソシャゲ名物の「ガチャ」システム。 どんなユニットが登場するのは完全に運任せである。


「そのためには、まず町に行かないと」


 電子精霊になって不便なことといえば新しくアクセスするアプリでは必ずしもゲーム開始できないところ。 ほとんど人目がつかない離れた場所から始まってしまう。


 幸い戦場の近くに歩道を見かけた。 道に沿って開けた場所の方向へ向かうとした。 森の中とか視界が狭いところだと街がある可能性が低いと睨んだからだ。



 ―――



 予想通り、そのまま道を進むとバーンズという街までたどり着いた。 設定だとゲームで一番最初に訪れる場所で一通りゲームシステムを教えて貰えるギルドと呼ぶ組織がある。


 ギルドではユニットの勧誘の他にパーティーと装備の編成、更に王国や神(運営)からの連絡や啓示(お知らせ)を読むことができる「御触書」もあるらしい。


「ようこそ始まりの街バーンズへ。 本日はどのようなご用件で?」


 門番から挨拶してきた。


「ギルド登録しに来ました」

「なるほど。 察するに御触書に乗っていたヤツで一儲け考えてるとかそんなところだろう」


 すでに御触書に何かが載せてある上に他の連中と勘違いをされてしまった。 言い直すのは面倒だから勘違いされたままにした。


「まぁそういうこと、ということで」

「りょーかい。 ギルドホールは真っ直ぐ行って右の建物だ。 看板の二本の剣と盾が目印ね」

「助かる。 ありがとう」



 ―――



 ギルド職員と話し、軽くチュートリアルして貰った。


 ギルドの説明、依頼の受け取りの流れと、軽い模擬戦で少量の消費品を貰い、身分証を発行して貰った。


 ちなみに通貨は硬貨と宝石に分かれていた。


 硬貨はゲーム内の金で強化や武具の購入などで支払う通貨だった。


 宝石は課金から得る魔の産物であり、ユニット勧誘の際にはこの通貨を使うらしい。 硬貨よりも遥かに値打ちが高いからだ。


 そしてチュートリアルを終えた自分は全部で10人分の宝石を無料で貰った。 ギルド職員がいうには新人をサポートするために領主が決めた制度だそうだ。 ソシャゲではスタートダッシュキャンペーンとかで行われる救済処置ともいえる。


 金を荷物に収納したあと、掲示板の方へ足を運んだ。 門番が言ってた「例のヤツ」が気になったからだ。



 そこに大きな御触書が張り出されていた。

女騎士登場。 「くっころ」は好きですがウチの子には絶対しません(使命感)。


次回:初ガチャ

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