第6話 調査という名のチュートリアル
前回:ほっぺムニムニ
端末のタブレットを弄り、マイルームのメニュー画面を開く。 幾つものの項目中に「ヘルプ」を選択した。 良くも悪くもこういうところがまんまゲームだった。
まずはマイルーム・マイレイヤー。
「『アナタの活動拠点となる自室です。 家具を揃えて華やかな生活を自ら作りましょう。』、か......」
家具の中にはしばらく放置すると色々な特典をくれる効果付きの備品もあった。 しかしメニューによると家具を購入するための資金―「エナ」という特殊なポイントが足りなかった。 エナはアプリのアクセス数やアプリ自体から受け取れるらしい。 「ハベフロ」でのアクセス数と活動時間が短かったせいで得とくしたエナは僅かなものだった。
「......エナは次のアプリで期待するしかないな。 効果付きの備品は後でまとめて買うか。 あるだけでものもらえるし」
実質効果付きの備品さえあれば毎日寝るだけで資金と資源をただで受け取れる。 差し詰めソシャゲでいう「ログインボーナス」でもある。
次に調べたのはマイルームの「マイレイヤー」にあたる部分だった。
これはマイルームの広さや大きさを示すものだった。 人数や功績によってさらに広がるらしいが、今は自分ひとりだったため、リビングと寝室の2室までしか開放されていなかった。 ちなみに所持家具が全部寝室に収めることができたため、リビングの方は何を置いてなく、広々としていた。
厄介なことに端末の容量と連動して、一定の数の家具やアプリをダウンロードすると更なる購入はできない。 二日前の暴走からダウンロードしたアプリがまだ残っていたため、残量は64の内の2まで減っていた。 有用性のないアプリは後程設定で管理しなくてはならない。
「キッチンとトイレの選択がなかったが、電子精霊だから食事も必要ない、用を足す必要もないということなのか?」
実際この3日間、自分は何も口にしていないし、便意もなかった。
......食事事情はともかく、何故か便ができないと残念がる自分がいたことに複雑な気持ちを抱いた。
―――
それはそうと、一番知りたがった項目に移る。
『プロフィール』
つまり、自分の情報である。 早速メニューを開いてみる。
「名前『ああああ』、種族・職業......電子精霊。 『誕生日設定しますか?』 これも適当に一月一日と......」
更に下にスクロールすると実績ようなものが並んでいた。
ダウンロードしたアプリの数、ログイン時間、その他諸々。
......駄目だ。 電子精霊について何一つ説明がない。 これが一体どういう種族なのか見当もつかない。
自力で分析してもただただ適当に科学と幻想の単語を並べただけと思ってしまう。 更に「精霊」というファンタジー要素の異質さが目立ってしまうため、不思議ちゃんとか、電波人間という現実世界でも危ないものが脳裏をよぎってしまう。
―――
プロフィールの下に設定ボタンが設置されてた。 ここでは先ほど設定した生年月日や名前、プロフィールで公開している情報を編集することができるみたいだった。
ふとアシアのことを思い出した。 別れてからまだ一日しか経っていないのに随分昔の出来事と思ってしまう。 もう寂しいと感じている自分が恥ずかしい。
そんな彼女からもらった「フォント」を採用し、新しく自分の名前に設定した。 次に編集できるのは30日後らしい。 どうしてそんな縛りがあるのかは分からないが、しばらくは「フォント」として通すことにした。
更に「メッセージ・一言」の設定もあった。 これは自分のプロフィールを閲覧する他のユーザーに向けて公開することができるものだった。
......ユーザーが真剣に読むとは思わない。 しかし、自分は一応今の目的を書き込むことにした。
『電脳世界に閉じこまれています。 脱出を試みていますが行動が制限されてるため不可能。 至急救援求む』
......これもまた危ない人間に聞こえてしまうけれど、事実だからしょうがない。
―――
「とりあえず、こんなものかな」
腕を上に大きく背伸びした。
あらかたマイルームやプロフィールを調べた自分は一時調査を切り上げた。 アバターのメニューも少し調べてみたがほとんどの機能が閉ざされていた。 まだ開けるのが早かったか、もしくは条件が揃っていなかったか分からなかった。 何もできなかったため、こちらの調査は一旦保留となった。
「次は軍資金かな?」
マイルームの効果付きの備品と毎日の特典やエナを確保する為に、新たな計画の実行に移った。
まずは「ハベフロ」以外余分なアプリをアンインストールした。 六つ消したら空き容量が25まで増えた。
そしてアプリストア内でユーザーアクセスランキング上位のアプリ二つ選択してダウンロードを開始した。
今回の目標はエナの収穫である。 そのために連日アプリのログインが必要になるわけだが......
どうせ続くなら楽しくやっていきたい。
新たなソシャゲ界に期待に胸を膨らませで、ダウンロード完了したアプリゲートを潜った。
ステータスとかレベルとか避けたかったけど、基本ゲームだから仕方ないよね!
人物紹介ページとか主人公ステータスまとめ考えときます。
次回:御触書