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電子精霊になってソシャゲ界を徘徊する  作者: 文武ロデオ
チュートリアル編
2/20

第2話 マイルーム、マイターミナル、マイアノイングサポート

前回:電子精霊、マイルームにたどり着く

『マイルーム・マイレイヤー』



 何度読み返しても変化が見れない。 


 マイルームというとゲームでよく聞く活動拠点のことだろうか。


 続いてマイレイヤー...。 レイヤーとはlayer()のことかな。 いや、この場合多分lairのことだろう。 たしか住処か寝床の意味だったような...。


 ということは、今立っている半径150mの足場がこれから自分の生活拠点となるのか。


 改めて辺りを見渡すと自分以外の存在がいない。 家具も寝具も何もない。 水色の床に白い円型の模様が入っているがそれ以上の特徴もない。


 ...殺風景にも程がある。 布団もなしに床の上で寝ろと? 今の体質じゃ苦しいかどうかはともかく、気分的に都会で捨てられた動物の気分は味わうだろう。


 ...とりあえず生活については一旦置いておこう。


 まずはこの表紙だ。 手の届く距離まで詰めて『マイルーム・マイレイヤー』の文字を観察する。 よく見ると宙に浮いた画像のようだった。 スクリーンを覆う機会部品も裏面もなかった。 SF小説でいうところのホログラムのようだった。


 もしかして、ボタン、なのか?


 恐る恐る手を伸ばして、タップした。 カチっと効果音を発したが、長押ししてしまったせいで何も起こらなかった。


 手を離すと、またもや効果音が鳴った。


 ポーン



 ―――



 表示が弾けて幾つもの小さい光になって消えた。 そして新たな画面が正面に開いた。


『ようこそ、アナタのマイルームへ。 ワタシはアナタのサポートAIです』


 画面に映ったのは長方形になんの変哲もない両目と口だけの地味なキャラだった。


『人工知能機体呼称名は SYSTEM MANAGEMENT PARTNER ――― 略してスマホとお呼びください』


 ......


 なんかこのAI冗談を言ったみたいけど敢えてスルーした。


「サポート、どうして自分はここにいる? ここは一体どういう場所なんだ?」

『―――ワカリマセン。 当機では答えられません』


 ん? 何か不自然な間があったような...。


 自分に構わずAIが続いた。


『ここはアナタのマイルームです。 端末を通じてアプリのダウンロードとアクセス、アバターの設定、そしてルームの設定を行うことができます』


 まんまゲーム設定の説明だった。 あまり有益な情報とは言えない。 ある一点を除けば。


「端末を出してくれ」

『了解です』


 シュンっと目の前に黒い板が現れた。 手元にしっくりくるこの機器は馴染みのあるものであった。


 情報端末、つまりはタブレットだった。


 馴れた手つきを想像しながらボヤけた腕で操作してみた。 ちゃんと起動したタブレットはロック画面からパスワード入力のような画面に切り替わるが、ここでAIが割り込んできた。


『ここでアナタのユーザー名を登録してください』


 そんなことはどうでもいい。 一刻も早く情報が欲しいのだ。 すぐにでもインターネットか電話を使いたかったがこれ以上は進められない。 焦りと苛立ちが増していく。 しかも入力文字数は四文字までという誰得の設定までされていた。


「『ああああ』でいい。 早く開けろ」

『当初の登録のあとでも月に一回だけ変更することができます。 ユーザー名は「ああああ」で』

「構わない」

『了解しました。 登録名「ああああ」が受理されました。 メインメニュー開きます』


 ピローンと起動音と同時に周囲に浮かんでた長方形の物体が一斉に自分の正面に集まった。 ブゥーンと響き、画像を映し出した。 なるほど、あれは全部モニターみたなものだったと納得する。


 タブレットを操作して分かったが、期待していたブラウザと通話機能はなかった。 代わりに先ほどAIが述べてたアバターとルーム設定とやらの他、アプリストアなるものがあった。


『アプリストアをアクセスすると絶賛配信中のソシャゲ界のアプリゲートをダウンロードすることができます』

「ソシャゲ界? アプリゲート? なんだそれは?」

『ソシャゲ界とは、ソーシャルゲームアプリ特有の世界を示すものです。 アプリゲートはその世界へアクセスするための扉です』


 ...詳しいことは分からないが、要はアプリを開くことでこことは異なる世界へ行けると。 現実の世界で人間がゲームを遊ぶといったら同じ意味合いになるとは思うが、今の状況と体質だと流石に冗談とは思えない。


 しかしやることは変わらない。


 チャット機能のあるアプリを選び、ユーザーなり運営なり助けを乞う。 願わくば現実世界に戻り、自分の過去も思い出したい。


 すでに常識と知識以外に記憶がほぼ消えていると思う。 覚えているのは最後の瞬間。 あの運命の日に自分を目撃した人達にさえ会えば...


 例え記憶が戻らなくても、

 例え身体が戻らなくても、

 自分のことを知り得ることができる。


『ソシャゲ界「ハーベスト・フロンティア」をダウンロードしますか?』


 アクセス可能なアプリを閲覧する内に幾つかの候補を並べる。 どれも社交性が強い日常系のゲームを選んだ。


 端末の選択画面に「はい」と「いいえ」のボタンが表示された。 当然「はい」をタップした。


『端末の容量が最大64の内残り12になりました。 データ管理の際は設定から編集してください。 ダウンロード開始します』


 離れてたモニターの一枚が足場まで近づき、『ハーベスト・フロンティア』のダウンロード振興具合を表示する。 早くもゲージが48%まで伸びていた。


『ダウンロードが完了次第、アプリゲートが開きます。 アクセスの際は足元に注意してください』


 電車かよ。 というかアクセスってやっぱりこのモニターの中へ潜るってことなのか。



『ダウンロード完了しました。 それでは「ああああ」さん、良い旅路を』




「ああああ」くん、幸せになるといいなぁ...


次回:住民



不定期更新、予定は未定

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