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電子精霊になってソシャゲ界を徘徊する  作者: 文武ロデオ
FAITHS & BRAVES編
19/20

第19話 敵は西へ東へ

前回: 黒幕会議

 グレイスとの交渉が終わった。結果報酬のジェム10個を前倒しに受け取ることができた。


「ところで黒幕の目処は付けましたか?」

「あなた方が捕らえた盗賊のお陰である程度絞ることができました」


 グレイスは部屋のテーブルの上に地図を広げて一点に指差した。


「こちらが現在地のバーンズ。片田舎で、ある程度アズール王国の法の手から離れている自由都市とも呼ばれています」


 そのせいで無法者も集まりやすいが、元々冒険者のための街。宿も店も凄腕の傭兵が充実していて、問題を起こして街全体を敵に回すような輩はいないと思われてるらしい。


「んなこと知ってる。何いきなり授業くさい講義はじめてんだ?」


「重要な事ですから」


 ロアの横槍に得意げに眼鏡を光らせたグレイス。


「商人という格好の獲物が出入りする街の周りに盗賊が居座らないわけがありません。だからこの辺は盗賊と護衛の傭兵の小競り合いが絶えません。そんな中であなた方が捕えたのは『闘牛のオークス』だそうで」


「……そんな名前だったっけ?」

「報奨金に目を眩んで話半分聞いていなかったが、何その頭痛が痛いみたいな二つ名?」


「都落ちした剣闘士だそうで。ともかく彼の盗賊団はバーンズの西の山林を陣取り、その縄張りはここからここまで、広がってました」


 グレイスの指はバーンズの西の山脈と木々まで移して、その周辺に円を描いた。


「更にその周辺の村や町に絞るとこうなります」


 バーンズも含め、4箇所の村や町を指してそれぞれに円を描く。


「盗賊とはいえ、獲物の売買や物質の補給は必須です。だから村を襲いません」

「なんとなく掴んできたぞ。つまりはこの村々で黒幕とやり取りしている、ということだな?」

「ええ。楽観的な予測ですけどこの4箇所の領地、その領主や大貴族・大商人に絞ればあるいは……」


「「……」」


 気が遠くなるような話だ。領主ならまだしも、貴族商人までも調べなきゃいつまで経っても定まらない。



「アルフォンス領……」


 ふとしたアリシアの呟きに一同が振り向く。


「アルフォンス領?」

「ってーのは北西にある領地だけど……」


 目線を地図の左上に向けるとアルフォンス領地があった。 そして再びオークスの活動範囲を見ると……。


「間にガンドゥ村とハロウ村がある。どちらもアルフォンス領だな」


 確かにある。


 あるけど……確証にはまだ足りない。アリシアを尋ねる。


「根拠は?」

「ない。が、心当たりはある」


「よろしいのですかアリシア様?」


 彼女の考えに感づいたのか、グレイスが何かを確認する。小さく「ああ」と答えたアリシアが語り出した。



 ーーー



 アルフォンス領領主のイヴァルは野心家ではあるが民にはそれなりに人望があった。彼の領地運営方針は、平たく言えば「民あっての国」。


 自身の昇進と国への貢献のために目紛しい速さで領地を発展させ、戦時の際かなりの兵力を各地に送り戦績もあげた。


 しかし実際建設するのは民で戦争するのは兵士である。政しかできないイヴァルは領民を支援する事で多くの支持を得た。


 イヴァルの限りのない向上心に領民はついてくるのが無理、いや無謀だったが、新しい政策その度に市民の衣食住を途切れる事なく支えることで生活に支障が出なかった。



「こう言っては申し訳ないですけどイヴァル様は時に横暴ではありますがちゃんと領民には見返りがつくので、責めるには責められないちょっと困った領主様です」


 頬杖に頬を乗せたグレイスがため息をつく。


「そのイヴァル様はワケがわからないけど出来る領主ってのはわかった。ソイツがどう今の事件に繋がってんだ?」


 長話に苛立っていたロアはずっと腕組んで指をトントントンと叩いていた。


「今のイヴァルは力を欲する動機がある。長く続いた干ばつで食糧生産が著しく低下。交易で多方面から支援を要求するにしても輸出する資源が皆無」


「要するにイヴァン様の快進撃が急に止まって領民の生活に支障が出始めた、でございます」


 ここでアリシアとグレイスはお互いに頷き合い、アリシアが口を開いた。



「アズール王国国王はイヴァル様の救援要請を拒否、アルフォンス領の支援を止める方針を密かに決めたらしい」



「「……はぁ!?」」


 自分とロアは声をあげた。


 あまりにも馬鹿げている話だ。正気の沙汰ではない。


「いやバカなのか? この国の王はバカなのか!? 百歩譲って気に入らないとしても領ひとつ丸ごと切り捨てるのか!?」


 流石のロアも取り乱していた。無表情なのは相変わらずだったが。


「その理由を明かされないままで……流石にイヴァル様のお怒りを買ってしまわれたんでしょうね」

「いや当たり前だろうが!!」


「反乱を起こすにしても時期が最悪だ。陛下は弱っているところ叩くつもりだろう」


「だから『黒い宝箱』に手を出してもおかしくない、か……」


 イヴァルの話を聞いて彼は行動力がありすぎる人物と認識した。自分の中では彼が今最も欲しているであろう『黒い宝箱』を狙っている可能性が跳ね上がった。



「急いでアルフォンス領へ行こう。間違ったなら間違ったで移動しながら考えていこう」


 全員が了承したその時、宿の外から金の割れる声が響いてきた。



「「踊るカッコウの宿り木」に隠れておる犯罪者共に告ぐ! 君達は包囲されている! 速やかに武器を捨て投降しろ!!」

向こうからやって来るとは探す手間が省けたゼ


引越し終わりました! 不定期更新再開します! ゴメンなさい!



次回: 御用改

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