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電子精霊になってソシャゲ界を徘徊する  作者: 文武ロデオ
FAITHS & BRAVES編
15/20

第15話 並外れた事情と条件

前回: ログインボーナスゲット

「……おはよう」


とりあえず挨拶はしたが、女騎士は見向きもせず佇んだ。


「はぁ……。 おはようございます。 貴方が噂の新人ですね?」


女騎士の態度に呆れたもう片方の女性が挨拶を返した。


「……どんな噂だが具体的には分からないが、おそらく自分かと。 フォントだ」


自ら名乗り出て注目を自分だけに絞り込んだ。 他の人間を巻き込まないように、そして彼女らの要件を周りに漏らさない為に。


昨日の今日で会いに来たのは別れ際に伝えた言葉で気が変わったとか。


しかしそう簡単には人の考えは変わらないと思う。 何かあるとすれば多分荷物を背負ってた女性の方にあるかと。


「お初にお目にかかります。 わたくしはグレイスと申します。 こちらに拗ねてらっしゃるアリシア様の従者になります。 以後、お見知りおきを」


ロングスカートの裾を摘んでお淑やかに一礼する。


「誰が拗ねているか」


グレイスの一言にムッとなった女騎士は抗議した。


しかしそうか……彼女の名前はアリシアというのか。 そういえばずっと名乗ってなかったな。 追われる身だから素性を秘めたかもしれない。


「追い詰められたところに颯爽と白馬の王子様が助けに来たのに、差し伸べた手を払い除けたではありませんか。 しかも自分の不甲斐なさに嫌気をさして彼らに八つ当たりしたのではありませんか。 情けない話です」

「ぐ、む……」


グレイスはつらつらと情け容赦も無くアリシアへの批判を述べた。

そんなグレイスに気圧されたかアリシアは反論出来ず少したじろぐ。


「はぁ……。 このようにアリシア様は大変無頓着で無愛想なお方で。 これまでの数々の無礼をどのようにお詫びしていいのやら……」

「いや、気にしなくてもいい。 むしろこちらの方が他人の事情に踏み込んでしまい、申し訳なく思っている」

「寛大なお言葉、痛み入ります。 どこぞの騎士団長にも見習いたいでございます」

「うぅ……」


これだけトゲのある言葉を浴びさせれば否応にも申し訳なくなる。 気のせいかアリシアが段々小さくなっているように見えた。


落ち込む聖騎士とオロオロする自分を見てグレイスはまたため息をする。


「……しかし彼女の名誉のために申し上げると、並外れた事情のため一般人を巻き込むわけにはいきませんでした」

「……一体何をしでかしたらそうなるんだ?」

「続きは別室で。 貴方の部屋をお借りしても?」


グレイスは自分ではなく、自分の後ろに向かって尋ねた。

視線を追って首を振り向いた先に腕組んだロアが立っていた。 いつのまにか会話に参加してた。


「おう。 詳しく聞こうじゃないか。 条件次第で手を貸そうじゃないか」

「なんでそんなに上から目線なんだ……」



ーーー



四人でロアの部屋まで場所を移した。 角部屋で日当たりがよく、会談のためのテーブルや椅子まで設えてた。


「もう知っていると思うが、昨日フォントの仲間になったロアだ。 今はバトルメイジをやっている」

「……アリシアだ」

「アリシア様、端的すぎます。 もっと愛想よくしたらどうですか?」


ロアから軽い自己紹介が始まった。 しかしアリシアはまだ警戒を解いてないか、最初に会った頃よりも表情が硬くなっている。


「はぁ……。 改めましてフォント様、ロア様。 わたくしはグレイス。 アリシア様の従者で荷物持ちをやっています」



……荷物持ち?


真っ先に頭をよぎったのはパシリと虐めだった。 アリシアはこう見えてまさか高飛車な性格だったりするのか?


「お前が何考えてるのかは知らんけど、『荷物持ち』ってのは立派な職業だぞ」

「そ、そうなのか?」


顔に出てたのか、アリシアを変な風に凝視したのか、ロアがフォローを入れた。


「ええ。 戦場では何かと回復薬と矢筒などの物資が必須なのです。 わたくし達荷物持ちはそれを運んだり届けたりする存在です。 また、前衛の方々が持ちきれない戦利品を代わりに預かったりします。 そのせいで他の方からあまりいい目で見られていませんが、それはそれでございます」


グレイスは補足の説明をくれた。


グレイスとアリシアには失礼な態度をとってしまったかな。 ちゃんと職業のことを勉強せざるを得ないな。


「すまない」

「いいえ、どうかお気になさらず。 それよりも本題に入りたいのですがよろしいですか?」


話を切り替えてグレイスは自分達のことを説明した。


「現在、三ヶ国の間で英雄の存在が発覚したという噂はご存知でしょうか?」

「ああ。 そいつらのお陰で徴兵が例年より多くなっているとか」


新規ユーザーのキャンペーンか。 イベントの前触れだろうか?


「並の戦士よりも強靭な身体を持ち、一騎当千の力を持つとされている」

「アリシアみたいにか?」

「アリシア様よりも、ですね。 文字通り一人で千人ものの相手ができる化け物でございます」


「噂では一人の英雄、人類の希望になっているが、その認識がそもそも間違っている」


アリシアは震える手を抑えて静かに口を開いた。


「奴らは英雄ではなく、どちらかというと魔王に近い存在なのだ」



そしてアリシアは黒い箱をテーブルに置いた。 手のひらに収まる程度の小さな物体だった。


「この『黒い宝箱』がその鍵だ。 姫は……聖女アリアはその実態を見抜いて私に託した。 これは国が……人間が使っていい代物ではないと……」



次回: 差し伸べた手

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