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電子精霊になってソシャゲ界を徘徊する  作者: 文武ロデオ
FAITHS & BRAVES編
10/20

第10話 聖騎士

前回:無表情に笑う

 ―――時は少し遡る。


 試験官との模擬試合。 はじめの二分半は一方的に叩きのめされた。 しかし打ち合いを繰り返す度に今の自分の身体能力を理解を重ね、徐々に試験官を追い込む。


 ついには相手の隙をつき、片手木剣を上に払いのけた。 


「ぐ、ぉお!?」


 首元に木剣を突き付け「一本」決めるために剣先を戻そうとしたその時。


 試験官のもう片方の手に持っていたバックラーが視界に迫ってきた。


「ーーーッ!!」


 とっさに自分のバックラーを下から上へ、アッパーカットの要領で相手のバックラーにぶつける。


 しかし、向こうの反撃が勢いあったか自分のバックラーをいともたやすくはね退けた。


 ガァンッ!!


 鈍器がぶつかる鈍い音が頭に響いた。 あまりの衝撃に足がふらつき、不格好にも尻もちをついた。


「ふー! ふー! っふうぅ......。 やるなルーキー!」


 勝った試験官は木剣を収め、空になった手を差し伸べる。 自分は手をつかんで立ち上がった。


「スキル無しでコレなら文句なしの合格だな。 おめでとう!」

「......スキル?」


 自分は首を傾げた。


「......スキルも知らないで試験とってたのか!?」


 一瞬心臓が跳ねた。 これは減点ものなのか? とりあえず誤魔化してみる。


「い、いや。 試験で使えるとは思わなかったもので......」


 これは半分本音だった。 スキルはこのゲームの知識として知っていたが、使い方......いや、発動条件は知らなかった。 なにせゲームの場合ボタンを押すだけで済んだんだ。


「だよな! あースマン。 そう言えば使っていいとは言ってなかったな」


 ホッと胸をなでおろす試験官は今度は「まいった」とか言いながら頭をかいた。


「最後に使ったのが『バッシュ』だが、まさかそれを打ち返そうとは思わんだな」

「突然過ぎて反射的に対応してしまった。 スキルの発動全然気が付かなかった」


「まぁ短い『言霊』だから気づけにくいよな、魔法職の『詠唱』と違って」


『言霊』に『詠唱』、か......。


 つまり言葉にしてアクションスキルが発動する。 ゲームやアニメみたいに必殺技を叫ぶようなものなのか?


「リアクションとサポートスキルのこともあるし、別に口にしなくてもいいけど、使ったら使ったで威力が断然違う」


 やっぱり必殺技扱いなのか。


「まぁとにかく! 合格だ。 こいつでギルドの受付で参加賞と合格祝いの軍資金を受け取ってもらえ」

「負けたけどいいのか?」

「最後は俺のズルみたいなもんだ。 それに勇猛な新人ほどこの業界に残ってもらいたいもんだ。 気にするな!」


 いいのかそれで。



 ともかく、こうして自分はギルドカードと参加報酬を取れた。


 同時にスキルについてまたひとつ詳しくなった。 技名、もしくは魔法の詠唱を声に出すと発動し威力もます。


 しかし技名を叫ぶと相手にこちらの手の内を教えるようなもの。 余程の効果じゃない限り連発も避けたい。 ましてやスキル習得は武器と防具の熟練度に比例する。 熟練度の低いうちは武具を見るだけでもかなり対策されてしまう恐れがある。


 ......やはりアクションスキルを使うとしたらここぞ!という場面のみ。


 それは必殺技らしく、止めの瞬間。


 もしくは―――



 ―――



「『バッシュ』!!」


 バックラーを前にかざし、一番近くの荒くれ男に突進した。


 スキル発動の『言霊』も十分効いた。


 完全に不意を突いた奇襲だった。



 バックラーは男の顎を直撃、脳に激しい振動が渡った。 男は膝をつき、ビクンビクン痙攣しながら突っ伏した。 クリティカルヒットの決まりだった。


「なっ......!」


 向かいに立ってたもう一人の荒くれが慌てて剣を振りかぶった。


 自分は突進の勢いを活かし、重心を回してショートソード横なぎに振るった。 流れるような動作は一で距離を詰めた。 剣を振り下ろす前に、刃が男の堅い革鎧の脇に深くめり込んでた。


「ガハッ!!」


 男は脇腹を抱えたたらを踏んだ。


 いくら勢いをつけても、流石に初期装備のショートソードは革鎧を両断することはできなかった。


「何者だ!」


 以外と第一声で自分の素性を訪ねたのは、追われてたマントの女性だった。


「さっきこいつ等につけられてるところ見かけてしまった。 心配になったから加勢にきた」

「......! 余計なことを!」


 自分はまだ成りたての戦士見習いにすぎない。 流石に「助けに来た」とは言えるほどの腕じゃない。 おっしゃる通り、余計な真似だったかもしれない。



 だから助っ人も頼んでみた。


「ぐあ!! なんだぁ!?」

「目が、目がぁぁぁ!!」


 マントの女性の後ろに構えてた悪漢が目を抱えもがいてた。


「これは......! 『ブラインド』か!?」


 リーダー格の男は瞬時にスキルを見抜け、距離をとった。


『ブラインド』とは魔法職が使う視界を奪う状態異常魔法の一種である。 もちろん使ったのはどこかに身を潜めているロアの仕業だった。


「チッ! かすってしまった!」


 するとリーダーが指で笛を吹いた。 ピューイ!と高い音を合図に、更に四人の敵が建物の影から現れた。 たった一人の女性を追うために、この男は大勢の仲間を集めてたんだ。


「男は殺せ! この際女も殺しても構わん! 『宝箱』を奪えぇ!!」


 リーダーの号令で敵は一斉に動き出した。


「やむを得ん!」


 女はフードに手を付け、マントをはぎ取った。


 マントの下から現れたのは騎士制服に白いプレートアーマーををまとった金髪ポニーテールの美女だった。


 剣を鞘から抜き、業を煮やした海より深い蒼い瞳で向かってくる敵を見定めた。


『悪しき魂達を凍てつかせ......無限回労の眠りへ誘え!』


 天に剣かざし、振り下ろした。 空から氷の刃が悪漢に襲い掛かる。


「「ぎゃああああ!!」」


 自身に向かっていた男三人に氷が直撃した。


 そのうちの一人が皮膚に霜が覆いかぶさる。 歯がガチガチ鳴り、身体も激しい痙攣を起こした。 男はあまりの低体温になり、その場から動くことができなかった。



 彼女は『言霊』は剣を通じて天に祈りを送る。


 天はその祈りに応え、女神の加護をその剣に宿す。


 授かった加護の名は「聖剣」。


 彼女は信仰の騎士――聖騎士だったのだ。

次回:敵対者たち

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