スプラッター・ホラー
オカルトホラーとは真逆に進化したもの。それがスプラッターホラーと謂えるでしょう。
オカルトホラーが人間の内面を深く掘り進むのに対し、スプラッターは残虐シーンという派手な演出を是とします。
スプラッターの元祖と謂えば『悪魔のいけにえ』でしょうね。
別荘に遊びに来た若者達のバンにヒッチハイクを頼む男。
彼は屠殺場で働いていたと云い、その頃の写真を見せたり自分の手をナイフで切ったり若者に切り付けたりとトラブルを起こし、バンから放り出されます。
その後別荘に着いた一行は思い思いに過ごすのですが、その内の二人が近所の家に行くと……いきなり拉致されます。
そうして一行は次々にこの家の連中に捕まり殺されていきます。実は昼間バンに乗せたヒッチハイクの男、この家の一員だったのです。
この家族は全員狂気にさらされており、殺人嗜好と人肉食嗜好の持ち主だったのです。
この『悪魔のいけにえ』、前項の『エクソシスト』と同じく事実を元にした作品というところが興味深いですね。
この映画はスプラッターという新しいジャンルに、必須要素を呈示しました。
その名は「レザーフェイス」
個性的な殺人鬼の存在『恐怖の対象』の明確化です。
以降スプラッターでは個性的な殺人鬼が現れました。「ジェイソン」「ブギーマン」「フレディ」……
一見してゴシックホラーの怪物に先祖返りを起こした様に感じられるでしょう。
しかし彼等スプラッター殺人鬼は……
・容姿が、より人間に近い。
・仮面等で顔を隠し一種の匿名性を持つ。
・殺人行為に多彩なバリエーションを持つ。
という違いがあります。
仮面等による匿名性ですが、名前も格好も周知と謂っていい彼等、何を隠しているのかと云うと表情・感情を隠しているのです。
現実の連続殺人犯は同一の手口を用います。それは慣れた方法を取る方が確実性が増し、安心出来るからですが、スプラッター殺人鬼はバリエーション豊富です。
感情を隠し自己顕示欲を感じさせず、淡々と作業の様に殺人を犯す。
にも関わらず、芸術的な殺人演出。
事実を元にした作品から始まったこのジャンルは次第に現実性を失っていきます。
派手なスプラッターホラーはシリーズを重ねる毎にコメディ色が強くなっていきました。
思うにスプラッターホラーはリレーの途中走者だったのでしょう。
ゴシックホラーのモンスターからバトンを預かったスプラッターの殺人鬼は、次の走者にバトンを渡します。
次の走者は『サイコホラー』
同じく殺人鬼モノでありながら精神性・推理性の高いものへと。
……なに?時系列がおかしい?
それは次項サイコホラーで。