ゴシックの終わり
ホラーモンスター三役の後、モンスター映画製作が流行しました。
吸血鬼・狼男・フランケンシュタインの各々はシリーズ化され、観客は飽きがきてしまったのです。
人々は新しい恐怖を求めました。
以下に人気の出たモンスターを軽く紹介してみましょう。
ミイラ男
当時世界の注目を集めたツタンカーメン墳墓発掘から着想を得たモンスター。
古代エジプトの神官イムホテプのミイラが生き返り、魔術をもって王女の墓を探します。白黒映画最後の人気モンスターとなり、後年『ハムナプトラ』、トム・クルーズ主演『マミー』としてリメイクされています。
機械文明の現代に魔術という理解不能な力をふるう怪人イムホテプの恐怖を描いた作品です。
透明人間
自ら製造した薬品によって全身が透明となった男は、副作用で狂気に取り付かれ暴れ回り殺人を繰り返します。
ケビン・ベーコン主演で後年リメイクされた『インビジブル』においても攻撃性が高まりました。
見えない恐怖を扱ったホラーですが、同時に薬品の副作用、薬害の恐怖が根底にあります。
半魚人
アマゾンの奥地で発見された古代生物。都会に連行された彼は人間のエゴにふりまわされ人間を憎悪しながらも、世話をしてくれた女性を慕う様になります。
この作品の前に『キングコング』があって、未開の生物が人間社会で暴れるというテンプレートが出来ており、それを踏襲していますが、根元には童話『人魚姫』の悲恋が逆さまの形(グロテスクな容姿・男性)で反映されています。
こちらも最近『シェイプ・オブ・ウォーター』が公開されましたね。
蝿男
物質転送装置というSFを使い、新しい技術につきまとう危険を題材にしています。
転送実験のトラブルで蝿と合体してしまった男は妻に自殺の補助をさせます。
実は蝿男、何も悪い事はしていないんですね。しかし自分の半身である蝿を見つける事が出来ず、日々人間性を失っていくのを恐れて自殺をします。
ラストシーン、見つけられなかった蝿が蜘蛛に襲われ助けを叫ぶ姿が恐怖をあおります。
こちらも後年『ザ・フライ』としてリメイクされました。
……全部リメイクされてるな。
これらのモンスター映画は成功した部類ではありますが、粗製乱造が過ぎた人型モンスター映画はやがて低迷してしまいました。
ホラーにおいて気をつけたい事、それは『恐怖は持続しない』という事でしょう。