皆様お好きな
吸血鬼から狼男へ渡され、更に渡されたバトン「伝染病のメタファー」。
『怪物・生物パニック』の持つ大群の恐怖。
スプラッターホラーから生まれた鮮血と臓物のグロテスク描写。
追い詰められていく閉塞感と、ひょっとしたら?という疑心暗鬼。
それらを地獄の釜でごった煮に仕上げたジャンル……
それが『ゾンビもの』です。
このジャンルの主役たるゾンビは、それ以前の『モンスター』に比べ、明らかに弱い存在です。
強力な特殊能力を持ち合わせておらず、基本噛み付く事で仲間を増やすのみ。倒すのに入手困難な武器等も必要無く、通常武器で事足ります。
仲間といっても上下関係や横の繋がりといったコミュニケーション能力がありません。文字通り『烏合の衆』でしか無い存在です。
しかしながら現状、ゾンビは最強のモンスターです。
ゾンビは『伝染病・パンデミック』のメタファーと謂えるでしょう。
ゾンビは増え続ける事で広大な土地面積に充満し、生き残る人々を閉鎖空間へ押しやります。
また、ゾンビは作品を重ねる毎に進化しています。『バタリアン』において走る事を覚えたゾンビは『バイオハザード』シリーズで全力疾走を会得しました。
走るゾンビは『パンデミック』に加え『災害時の暴徒』というメタファーまで獲得したのです。
また、ゾンビ・ウィルスに感染した家族・恋人をなんとか助けようと隔離して世話をする人物がこのジャンルにはよく現れます……そして大概やらかします。
モンスターの悲哀・悲劇もものにしている訳ですね。シュワルツェネッガー主演『マギー』は少しずつゾンビ化していく娘マギーをなんとかしたいと苦悩する父親の物語です。
ここまでごった煮に出来て成立しているジャンルは未だ現れていません。これが最強たる由縁です。
しかしながら困った事に、ゾンビものは既にギャグの臭いがし始めています。
恐怖は持続しない。観客は既に飽き始めているのです。
ゾンビを主題にした場合、何をもってホラーとするか?
その選択次第で作品はまるで違うものになるでしょう。