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Escape from heaven  作者: 咲野ありむ
4/4

通路3


暗く強いスピードで、動くルートに光が指し、

ルートを出る。


優真は、眩しくて最初は真っ白に見えた世界になっていた。でも、少しすると目が慣れてきてだんだんと周りの景色がみえてきた。


先ほどの草原とは違い、車は走っていないものの住宅街のような場所に出る。

人通りはちらほらといった感じだ。ルートをくぐったことは、周りには偶然にも気づかれていない。


さきほどもらったレッグウォーマーのおかげもあり、生存者ということも気づかれていないようだ。


ふと、ハルを見るとあちこちが傷だらけなことに気づく。さきほどの草原で受けた怪我だ。


「ハルさん…」


「何?」


「怪我…」


「大丈夫よ。今はできないけど、少し体力戻れば自分で治せるわ」


「でも…」


優真が心配そうに見つめるなかで

ハルは、無表情のまま優真の手を見ている。


「それ…」


先ほどサクにもらったものが気になるようだ。

優真も、ルートからの強いスピードから解放されて、ほっとしたこともあり握りしめていたことを少し忘れていた。


手を広げると、くまのキーホルダーがあった。


「くま…?」


「なにこれ…?」


小さく立体的でありながらも全身が茶色で、可愛らしい黒目と茶色の鼻がついている。渡されたときには、必死で気がつかなかったがキーホルダーにしては少し重く感じる。


鼻がハートになっていることに気づく。


「ハルさん。これ、もしかしたら、サクさんが言ってたボタンかな…?」


と優真が指差すのをスルーしてハルは警戒した様子で無言でくまを見つめている。


疑うのは無理もない話だ。ハルに攻撃を仕掛けてきた人物だ。


心は複雑だが、優真は思い返した。ルートが塞がるぎりぎりにこれを必死で渡したサクの顔を。


優真は、辺りを見回した。


一番最初の荒れ果てた場所、二番目の草原。

この三番目の住宅街に、何故か優真は懐かしい感じがした。優真の住んでいる場所は田んぼもあり、似ていないが何故かそう感じた。


「そうだ、ハルさん。次のルートの時間は…」


と言いかけたところで目の前を、優真と同じくらいの歳の女の子が通りすぎる。


優真がなんとなく振り替えると女の子は、誰かを見つけ手を降る。


女の子を見つけた、五歳の男の子は興奮した様子で近づく。


「おねえ!どこいってたの!」


「え?…どうしたの?」


女の子は、かがんで男の子に目線を合わせる

おねえという呼び方から兄弟のようだ。


そうみれば、女の子は一瞬しか顔が見えなくてよく分からなかったが、どことなく高い声とはきはきとした話し方が似ているのも頷ける。


「来たらしいよ!」


「何が…?」


「おねえが言ってたやつ!」


「私、なんか言ったっけ…?」


「生存者!!」


優真は少し、びくっとした。

ハルは、優真の持つくまから目線を外した。


「はぁ…?」


「生存者がきてるって。腕に青い光を持った…!!」


「生存者って…あの物語の話の?

父さんと母さんが、ご飯たべてるときに何か言ってた話よね」


「聞いたもん」


「誰に…?」


「え…?何かこそこそ公園で言ってる人いたもん」


「その人たちがこの場所にいるって…?」


「この場所かは知らないけど、天界にきてるって。聞きたかったけどすぐどっかいっちゃって」


「なにそれ。嘘だぁ」


「なっ…!本当だもん!!」


男の子は、声を張り上げて続けた。


「おねえ!頼みに行こうよ!」


「はいはい。もう分かったから帰るよ」


女の子は男の子を抱える。

少しじたばたする男の子は、優真とハルに目が合い気づいて叫ぶ


「ねえ…!!知ってるよね…?!生存者のこと…!!」


「…え?」


「何か噂になってるよね…今!」


「ちょっ…!やめなさい。すいませんこの子のことは気にしないで…!」


女の子は二人に軽く頭を下げ、優真とハルに目を合わせることなく男の子を抱え歩き出す。


「おねえ…!あの人たち

何か知ってるかもしれないよ?」


「もういいの!」


「あんだけ会いたがってたのにー!

青い光もらって生き返るんでしょ」


「あの人たちは関係ないから、余計なことしないの!」


じたばたと暴れながら、男の子は急にはっとなり、ハルを指差す。


「おねぇーあの人怪我してるよ!」


そう聞くと、女の子は早めていた足をぴたっと止めた。


「え…?」


ハルを見て、女の子の表情が変わった。


「どうされたんですか…?」


駆け寄る女の子に、ハルは優真の前にたち首を降る。


「大丈夫です。何も…」


「何もって…もしかして…!」


女の子は驚いた様子で、男の子を下ろしてこちらに走ってきた。

ハルは、反射で優真の前に立ちはだかる。

生存者だとばれたかと、女の子を睨み付けていた。


「巻き込まれたんですか…?」


「え…?」


女の子は、ハルが睨んでいるのに怯むことなく、近づく。


「生存者の争いが本当に起きてるの…?

生存者の光をめぐって…生き返るための争いが本当に…?たいへん…!」


「ほらー僕の言った通り!」


女の子は驚きを露にして、男の子は自慢げに女の子を見上げる。


「違います。なんのことですか」


ハルはさらっと言いはなったが


「こちらで手当てしましょう」


と、女の子はハルの手をとる。


「え…?」


「大丈夫です。手当てしましょう」


「いえ、大丈夫です」


「何言ってるんですか!だめです」


「いこーお姉さん」


男の子にもひっぱられている。

ハルはその手を無理矢理ほどくと、優真のところへ行く。


「行こう、優真」


「ハルさん…」


しかし、女の子はすぐに追いかけた。

男の子も怯んでいないようだ。


「もう。そんなに争いに巻き込まれて怖かったんですか?かわいそうに」


「離して。私は、能力があるの。

あなたを吹き飛ばすことだって簡単にできるわよ」


「ええ…!能力使えるんですか!それはそれは。

でも吹き飛ばさないで。私たちはあなたの見方です!傷の手当ては任せて下さい」


ハルの手をひっぱり、もう一度歩き出そうとする。


「さあ、あなたも」


女の子は優真に声をかける。

その間にもハルはぐいぐい女の子にひっぱられる。ハルは、それに抵抗して立ち止まり優真をみる。優真は耳元でこそっと言う。


「ハルさんの怪我だけ手当てしたら

気がすむんじゃない?」


「けど…!」


生存者だとばれたらどうするのと

言うハルの言葉を読み取り


「悪い人じゃなさそうだよ、ね?」


ここで逃げても怪しまれるよ?と言う言葉をこめ、目線で伝えると


「私、傷自分で治せるし」


とハルは言う。


「体力使うんでしょ?」


と優真が言うと、

ハルが口ごもる。


「二人でこそこそ何話してるの?」


男の子はきょとんとしてこちらをみる。


優真は、笑って首を降ると、男の子は、にっこり微笑み返す。


ハルは納得のいかない様子だが、女の子にひっぱられるまま、歩き出したので優真もその後ろについていった。

しばらく歩くと女の子が指を指す


「あれ!私の家」


少し細身である二階建ての一軒家の玄関に入る。


「じゃああっちで」


と部屋の中に案内された。


「さあ、座って。ええと…そうだ。名前言ってなかったね。私は三戸日奈子(みとひなこ)。こっちは広樹(ひろき)私の弟なの」


と言うと広樹は、二人にピースサインする。

日奈子は救急箱を持ってきた。

ハルは促されるまま、リビングの椅子に座る。


「あなたの名前は」


手当てしながら、聞かれるとハルは戸惑いながら


「ハル」


と答えた。


「ハルさんね。えっと…」


「俺は、優真」


「優真くんね。それにしても、二人とも災難だったね」


日奈子はそう言いながら手際よく手当てをする。優真とハルは怪しまれないように、相づちをうつ。


「よし、終わり。優真くんは、怪我してないみたいね」


「はい」


「ありがとう、では私たちはこれで」


と、ハルが立ち上がると


「まあまあ」


と日奈子が、ハルを椅子に座らせる。


「ちょっとくらい休んだ方がいいわ。ハルさんも優真くんも何か疲れきってるもの

そうだ!上の部屋空いてるから、好きに使っていいから、ね?」


と、日奈子は立ち上がる。


「広樹。布団用意しよう」


「オッケー」


と広樹は、先にいきおいよく、階段をかけ上がった。ハルは日奈子に背中を押されながら階段を上がる。ハルは階段を上がる時も気がかりで優真のほうを見ている。


優真も一緒に階段を上がる。


布団が引き終わり、ごゆっくりと扉を閉めて日奈子と広樹が階段を降りると、ハルは言った。


「今なら窓から逃げ出せるかも」


「ルートまでの時間がないの?」


「そういう訳じゃないけど。一日跨ぐと思う」


そう聞くと


「じゃあいいんじゃない?」


と優真は布団に横になる。


「のんきね。命を狙われてるのに」


「これでも、警戒してるよ」


「そうかしら」


ハルはため息をつく。


「横になったら?ハルさん。案外気持ちいいよ」


そう言われ、納得の行ってない様子だが、横になる。


「…悪くないかも」


「でしょ?」


優真はハルの横で、延びをする。


「天国にいても、疲れたりするんだね」


「天国にいるだけで、現実と同じように生活してるから」


「そうなの?」


「現実の世界で死んで体はなくなったとしても、魂は生きてるの」


「そうなんだ。それは、良かった。それを聞いたら喜ぶだろうな。さちさん」


「そうなの」


「ハルさんが生まれたときね、それは嬉しそうにしてたよ。てか、旦那さんと俺にうるさいくらい自慢してたよ。私の娘よ!めちゃくちゃ可愛いんだけどって。何度も。旦那さんは感動してやっぱり少し泣いてたけど。俺も、嬉しかったなー」


「それ…」


「ハルさんは、名字覚えてないけど、多分さちさんの娘で間違いないよ」


「どうして?」


「そっくりだもん。あの夫婦に。

それに、俺だってハルさんとは1年一緒にいたからなんとなく分かるよ」


「優真…でも、私は覚えてない…」


「あの草原で、サクさんが言ってたじゃん?

ハルさん過去に生存者に醜い扱いされたって」


「…そうね」


「俺は、そんな風にしないよ。だってハルさんは、俺が交通事故で親なくして、弟は植物人間になって、辛いときに助けてくれた親友の娘。あの家は俺にとって家族と同じだから、ハルさんも同じだよ。どんな扱いされてきたのか全部を理解してあげられないけど、ハルさんがこれから先、人嫌いにならないといいな」


「……」


「そういえば、ハルさんくま何だったんだろう」


「くま?」


「サクさんにもらった…ボタン…ハートの」


「そういえば…ってあれ?優真」


優真は、話している最中に瞼が閉じて、そのまま眠ってしまった。


「本当、不思議な人だな」


その優真の横顔を見て、ハルもいつのまにか眠ってしまった。

ハルが起きたのはそれから1時間後、階段の音で目が覚めた。

日奈子はそっと部屋を覗くと、ハルと目があったため小さな悲鳴をあげたが


「起こしました?」


と、申し訳なさそうにした。


「いえ…」


ハルがうつむくと日奈子は、ハルの顔を覗きこむ。


「でも、良かった。顔色がさっきと違うから」


にっこりと笑い、優真を見る。


「彼は、ぐっすりですね」


「すみません」


「いいんです。連れてきたのは、私ですし。

あ、そうだ。下でご飯の準備してるんですよ。今日は食べていってくださいね」


「え…でも、私たちは…」


ハルは優真を見る。


「ハルさん」


「はい」


「ハルさんは、案内人ですよね

優真くんは生存者ですね」


日奈子は、まっすぐとハルに言った。


「え…」


「あ、怖がらないで下さい。襲ったりしません」


あまりに日奈子はまっすぐとハルを見るので、ハルは少し戸惑う。


「優真くんは何も怪我していないのに、ハルさんは凄い怪我してるし、変だなって…あ、待ってハルさん。行かないで下さい!優真さんも寝てますし」


「あなたの弟さん、生存者を探してた

あなたが探してるって」


「確かにそうです。でも、誤解です。

私は生存者から光を奪いたいんじゃないから。

私が生存者を探していたのはあるお願いがあるからなんです」


「お願い?」


「そう。だから、私はあなた達を絶対にお守りします」


「お願いってなに?…そんな絶対なんて言葉に、騙されない」


「さきほど、広樹が公園で見た人、どんな人かは分かりませんが、生存者を探していたなら能力者の可能性がある。次のルートが開かれるのは、明日ですよね。ここは住宅街。歩いて、生存者に見つかる可能性は高いと思います」


「あなた…何者なの。何故ルートのことまで」




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