表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【1万PV達成!】天は二物を与えず(仮)  作者: Kuu
第3章 『何も望まなかった中の上』
95/110

第95話 競技会には出たいけど



「え、雑種で競技会に出たい? 出れば?」

「いえ、色々調べたら、協会に登録していない雑種は出られないんです」


 俺はレンコントにやってきた小玉さんを捕まえ、競技の相談をしていた。


「あぁ、古い競技のことね?」

「古い?」

「うん。IPOとかBHとか、ドッグショーとか、そっちだけでしょ? 出られないの」

「そうなんですか?」

「うん。アジリティーとフライボールとフライングディスクは出来た筈。でも何で急に?」


 俺は事の経緯を語った。


「そういう事か! やるな、楓さん……。よし! 私も協力するよ!」

「本当ですか!? 小玉さんが協力してくれたら百人力です!」

「いや、あたしどんだけ力持ちなのよ……」

「いえ、そう言う意味では」

「わーかってるって! ちょっとボケただけだよ……ってあれ? じゃ、本当はそれ以外にも出たいってことなの?」

「とにかく勝てる可能性のあるものは出たいです!」

「なるほど……。確かに片桐くんの力を持ってすれば、日本一……いや、世界一も夢じゃないか……」

 小玉さんは例の留守番の後、俺の力を見くびっていたと言った。何しろ、俺が居なくなった途端、誰も言うことを聞かなくなってしまったのだそうだ……。いや、悪いことをした……。

「ねぇ、何に出たいか決めてくれる? そしたら会社に相談して見るからさ」

「ありがとうございます!」


 その後俺達は、何なら勝てるかを相談した。


「まず、アジリティーとフライボールとフライングディスクは出るよね?」

 楓は俺を見た。

「いや、ちょっと待て。ネットで動画を見たんだが、あれってどうやって練習するんだ?」

「え? ただ、ひたすらやるんじゃないの?」

「いや、問題はそこじゃない。道具だ」


 アジリティーは平均台やポール、トンネルなどの複数の種目が含まれており、それらの設備が必要。そして、フライボールには板を押すとボールが飛び出す器具とハードルが必要。そんなものを購入するような余裕など、どこにもない。


「あ、そうか……。じゃ、フライングディスクだけかな?」

「あ、それ。調べてみたらな、日本では『フリスビードッグ』っていうらしい」

「そうなの?」

「ああ。英語だとディスクドッグだがな」

「なんで英語じゃないの?」

「知らん。フリスビーのほうが日本では有名だからじゃないか?」

「なるほど……。じゃ、フリスビーしか出来ないかな?」

「そう思う……。それでも広い場所がないと練習はできないがな」

「広い場所かぁ……。それってさ、犬を放してさらにフリスビーを投げても怒られない場所ってことだよね?」

「ああ」

「じゃ、公園とかじゃダメなのか……」

「だな……」

「まぁいいや、それは後で考えよう。じゃ、ディスクドッグは決定ね。後、IPOとかのしつけの延長みたいなやつは、ちょっと練習すればできそうだね」

「ああ、そっちは出来る。間違いない。と言うか、そっちは預かった子でもできると思う」

「だよね」


 こうして最も勝てる可能性のある、アジリティーやフライボールはそもそも練習ができないので却下。フリスビードッグと、調教関連競技のみ出ることにし、小玉さんに報告した。



 二週間後。



「特別枠だけど、いい?」

「出られるんですか!? いいですいいです! ……でも特別枠って、何ですか?」


 小玉さんは会社に相談し、そのまま協会へ相談すると、いつもの様にレンコントに来て、俺の出場権を得たと報告してくれた。


「いや、普通は返事をする前にそっちを聞くでしょ……」

「すみません。あまりの嬉しさに……」

「まぁ、気持ちはわかるけどさ。特別枠ってのは、正式な記録に残らないってこと」

「……それって、出る意味あるんですか?」

「あるよ。会場ってさ、多くの飼い主が集まってて、ビデオを回してる。それは公式じゃない、個人のビデオね。だけど、実際には主催者のビデオよりも、それら飼い主の撮影したビデオのほうが流れる」

「あ、ネットで……って事ですか?」

「うん。だから、それら飼い主経由で、片桐くんのすごい演技が見られるってわけ」

「いや、凄いかどうかは」

「えっ、それは困るよ!」

 小玉さんは俺にしがみついた。

「……え? どういう事ですか?」

「もう『すんごいの見せますから!』って言っちゃったもん……。だから、誰も見たこともないような、すんごいの見せてね」

「……それって特別枠って言うより、エキシビジョンじゃないですか?」

「うん。片桐蒼汰、ワンマンショー!」

 小玉さんはそう言うと両手を広げた。

「いえーい!」

 楓は隣で拍手した。

「ほら、楓さんがノリノリだよ……。いいとこ見せなくていいの?」

 小玉さんは両手で俺の腕を掴み、揺さぶった。

「わ、わかりましたよ……やります。やりますから、離してください……」

「わかればよろしい」

 小玉さんは両手を離した。

「もう……で、いつですか?」

「三ヶ月後」

「…………三ヶ月後!?」

 俺は固まった。少なくとも半年は必要だと思っていた。

「大丈夫だって、片桐くんになら出来るから!」

 小玉さんは固まっている俺の肩を「バン!」と勢い良く叩いた。

「いだっ! ……全然大丈夫な気がしないんですけど……」

 俺は少し吹き飛ばされ、肩をさすりながら小玉さんを見た。

 俺は忘れていた。この傍若無人な大魔王の性格を……。もしかすると、頼む人を間違えたかもしれない……。

「てか……(出来なかったら私がクビになるかもしれないから……)」

 小玉さんは俺の耳元で囁いた。

「えっ……!?」

 あんた、そんな危ない橋を!?

「ちゅー事で、よろしくね~」

 小玉さんはそう言うと、レンコントを後にした。


 もう、後には引けなかった。


「小玉ちゃん、何だって?」

「俺が失敗したら、小玉さんの首が飛ぶって……」

「は!? ちょっと、小玉ちゃん!」

 楓はそう言うと小玉さんを追いかけ、玄関を出た。


 楓は五分後に戻ってきた。


「居ないよ……どうしよう……。電話する?」

「いや、多分もう決定しているんだ。小玉さんだって断られたら困るんだろう……」

「そっか、もうそういう段階なんだね……もう、小玉ちゃん……。動物に命かけ過ぎ!」


 と言うか、既に退路は無くなっていた。

 普通に出られるのに、エキシビジョンになってしまった……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ