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【1万PV達成!】天は二物を与えず(仮)  作者: Kuu
第3章 『何も望まなかった中の上』
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第69話 救出作戦



「ああ、多分間違いない。すみません。子猫用のミルクとか、ありませんか?」

「あ、昔買ったものがまだ……使えるかしら?」

 飼い主さんはそう言うと別の部屋へ行った。

「ブチ、お前の子供、外にいるんだな? どこだ?」

「(言えない)」

「なぁ、俺はお前の子供を助けたい。教えてくれないか」

「(教えない)」

「んー……じゃ、相談だ。この家でお前の子供を飼ってくれるとしたら、お前はこの家で一緒に暮らしたくないか?」

「(子供は捨てられる。だから教えない)」

「捨てられる……?」

「(子供は一人を残して、皆捨てられる)」

「まだ、賞味期限は切れてません。使えますか?」

 飼い主さんが粉ミルクの箱を持って戻ってきた。

「あ、使えますね。あの、その前に一つ質問があります」

「何でしょうか?」

「この子達の兄弟は、今どこに?」

 俺はシロとクロを指差した。

「ああ、知り合いのところと、近所に居ます」

 やっぱりそうだ……。

「わかりました。すみませんが、急いで子猫用のミルクを作っていただけませんか?」

「あ、はい……でも、子猫はどこに?」

「実は、外で産んでるんです」

「外で!?」

「はい」

「でも……ブチは二度、ここで産んでますけど……」

「ブチは二度ここで子供を生み、その子供を二度とも捨てられたと勘違いしています。それで今回、捨てられないために外で産んで、育てているんです」

「え……ブチ……そ、そんな……。子、子供はどこに!?」

「教えてくれません。でも、外に出たがっているので、追えば見つかると思います。ただ、問題が……」

「問題……?」

「はい。見つけたとして、それを回収しようとしたら全力で阻止されるでしょう。そして、見つかったとわかった時点で、ブチは子猫を他の場所に移動します。そして二度と、追わせてはくれないでしょう。現時点では、あなたはブチの敵なんです……」

「わ、私が……敵……」

 飼い主さんは呆然とした……。

「楓、ミルクを作ってくれ」

「うん。お台所お借りしますね!」

「あ……はい」

 楓はミルクの箱を受け取ると、台所へ向かった。

「ど……どうしたら?」

「方法は二つ。一つはブチを説得して納得して貰う方法。ただ、成功する可能性はとても低いです。何しろ自分の子供を二度捨てられたと思っているのですから……。もう一つは、この家で生まれた子猫を一匹も譲らず、育てると約束し、実際に育てる方法。そして最後に、ブチに去勢手術を行うことです」

「な、何匹増えるんでしょうか?」

「わかりません……猫は三から六匹、多い時は十匹産みます。実際に見てみないとそれは何とも……」

「あ、あの……数を確認してからじゃ、ダメですか?」

「ブチになんと説明しますか?」

「…………」

 飼い主さんはブチを見た。

 ブチはずっと窓をひっかき続けていた。

「……飼います。全部飼います!」

 飼い主さんは俺を見た。目には決心が見えていた。

「わかりました。では、説得してみます」

 俺はブチを見た。

「ブチ、お前が外で産んだ子、全部ここで飼ってくれるってさ」

「(嘘! 二度も捨てられた)」

「捨てたんじゃない。他の家に貰われていったんだ。お前の子どもたちは近くで幸せに暮らしているぞ」

「(嘘! ここから出せ!)」

「ダメだ……信じてもらえない……。あ、近くにこの子の兄弟が居るんですよね? 一匹、連れてこられませんか?」

「あ、わかりました!」

 飼い主さんはそう言うと、部屋を出ていった。


 少しして、隣の部屋で電話をする声が聞こえていた。

「ブチ、今からお前の子供に会わせてやる。本当に幸せに暮らしていると、自分の目で確認しろ」

「(…………)」

 ブチは黙って俺を見ていた。


 ピンポーン。十分後、家のチャイムが鳴り、飼い主さんが出ると、別の人がケージを持って入ってきた。

「ブチー。久しぶりだねー! あんたの子供連れてきたよー。シロミ出ておいで」

 その人はケージを床に置くと、扉を開いた。

 中からゆっくりと、真っ白い、丁度シロによく似た猫が顔を出した。

 ブチはキャットタワーから飛び降りると、その子の前に行き、そのままシロミを舐め始めた。

「あ、やっぱり分かるんだねー」

 シロミの飼い主さんは、嬉しそうに言った。

 ブチはシロミを舐め続け、シロミはブチに甘えていた。


「(他の子は?)」

「他の子も同じだ。近くの家に住んでいる。な、捨てられてなんか居ないだろ?」

「(……新しい子供は捨てないの?)」

「少し相談がある」

「(なに?)」

「この家にはお前を含め、三匹の猫が居る。これはけっこう大変なことなんだ。お前のお母さん、こちらの飼い主さんが、お前の子どもたちの幸せを願い、大切にしてくれる人を探してお前の子どもたちを譲った。そしてその子供の一人、シロミはこんなに元気に育っているし、幸せそうだ。それは分かるよな?」

「(わかる)」

「それは、この家で飼い続けるよりも、ずっとこの子達が幸せになれると、そう思ったからしたことだ。お前が子どもたちに会えなくなって寂しいのは分かる。でもな、子どもたちの幸せを願う親ならば、飼い主さんの、お母さんの気持、お前には分かるんじゃないのか?」

「(…………わかる)」

「じゃ、俺はお前の子供を助けたい。お前の新しい子に会わせてくれ。何匹居るんだ?」


「(六匹居た……三匹動かなくなった……)」


「えっ……何だって!?」


「蒼汰、ミルク出来たよ……どうしたの?」

 楓がミルクを哺乳瓶に入れ、タオルで巻いて部屋に入ってきた。

「た、大変だ! 六匹生まれて、三匹動かなくなったって今!」


「えぇぇぇぇぇっ!?」


 楓と飼い主さんとシロミの飼い主さんは同時に叫んだ。

「ど、ど、どうしよう……」

 楓がうろたえ始めた。

「落ち着け。ブチ、そのままだと全員死ぬぞ、急いで俺達を案内しろ!」

「(……わかった。開けて)」

「この窓の外は? どうなってますか?」

 俺は飼い主さんを見た。

「へ、塀があって、そこをいつも歩いていきます!」

「そこへ案内してください。ブチ、塀の上で待て!」

「(わかった)」

 俺はブチの返事を聞くと、窓を開けた。

 ブチはひょいと窓を出て、すぐ外の塀の上に上がってこちらを見た。

「そこからどっちへ行く?」

「(こっち)」

「左へ行くそうです。その先へ案内してください!」

「はい! あ、ごめん、ちょっとここをお願いしてもいいかしら?」

 飼い主さんはシロミの飼い主さんに言った。

「あ、うん。わかったから、急いで!」

「うん。お願いね! こっちです!」


 飼い主さんは俺達を連れて外に出ると、家をグルッと回り、塀の先へ出た。


「ブチ! こっちだ!」

 俺がブチを呼ぶと、ブチはゆっくりと歩いてきた。

「ニャー!(こっち)」

 ブチは塀の角を曲がり、横へそれて歩き出した。

「え!? そっち!? くっそ……」

「ちょ、ちょっとダメだよ!」

 俺が塀に登ろうとすると、楓に止められた。

「なんで!? 追いかけられないだろ?」

「ダメだってば、通報されちゃうよ!」

「くっ……どうすれば……」

「私が追いかけましょうか?」

 アリシアが言った。

「(お前、あいつと喋れるのか?)」

「もちろんです」

「(じゃ、追いかけて説明しろ。場所がわかったら知らせてくれ)」

「はい。じゃ、行ってきます」

「(頼む!)」

「ど、ど、どうしよう……見失っちゃうよ!?」

 楓がうろたえていた。

「安心しろ、追いかけさせた。俺達はここで待とう」

「え……追いかけ……。あ、あの子だね!?」

「ああ」


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