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【1万PV達成!】天は二物を与えず(仮)  作者: Kuu
第2章 『運だけの猫』
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第6話 白黒猫と、黒い天使




「なぁ、アリシア」

「なんですか? やっと私がスーパー美少女メイド天使だと認めたんですか?」

「いや、その話はもう良い」

「もういい!? よくな」

「まぁ、聞け」

「い……なんですか?」

 アリシアは半目になると不満そうに俺を見た。


「お前、何が出来るんだ?」


「……は?」

「いや、どうしてそこでほうける……」

「いえ、何をおっしゃっているのやら」

「いや、お前……俺の補助、サポート役なんだよな?」

「はい」

「で、何が出来るんだ?」

「いえ、何も」

「……何も?」

「はい。何も」

「えっと……アリシアさんや」

「何だい、小鉄さんや」

 あ、そこは乗っかるのか。

「お前さん、俺のサポート役だそうじゃないか」

「そうさね」

「そんで、天界人だそうじゃないか」

「ああ、そうさね」

「てぇ〜事はだよ。お前さんは一体、何が出来るんだい?」

「いえ、ですから何度も言いますが、何もできませんって」

「…………」

 俺は半目で怪訝けげんそうにアリシアを見た。

「な、なんですかその顔は!?」


「お前……何しに来たんだ?」


「……ま……まさかの出来ない子判定!?」

 アリシアは床に降り立つと両手を口に当てて三歩後ろに下がり、ペタンと女の子座りで座り込んだ。

「よよよよよ……」

 アリシアはそのまま右手を床につき、左手を顔の横に当てて目を伏せると、体を右側に傾けた。

 何そのお涙頂戴的な演技は……?

「いや、もう時代劇はいい」

「あ、もういいんですか?」

 アリシアは俺を見た。


「そっかぁ……」

 俺は項垂うなだれた。俺のサポート役は、役立たずだった。


「あ、ちょっと! 今、私の事役立たずだとか、要らない子だとか、不憫ふびんな子だとか思いましたね!?」

「……ソンナコトハナイデスヨ」

「何故そこで片言……って……思われてたんだぁ……」

 アリシアはそう言って項垂うなだれると、人差し指で床をゆっくりと擦り始めた。

 あ、また変な演技が入った……。

「なぁ、アリシア」

「……そっかぁ……要らない子かぁ……」

 俺が呼びかけてもアリシアは戻ってこない。

 あれ? ……なんだか変だぞ……。

「おい、アリシア」

「……私は……一体どうすれば……」

 見る見るアリシアの表情がおかしくなっていく……。

 無表情というか、何も考えていないというか、意識がどんどん遠のいていくように見える。目は開いているのだが、視線がどこも見ていない。瞳からハイライトが消え、死んだ魚の目の様になっていた。

 なんだこれ……なんかマズい雰囲気だぞ……。

「ちょ、おい……アリシア!? しっかりしろ!」

 俺はアリシアの膝の前まで行くと、チョイチョイとアリシアの膝を猫パンチした。

「あ、小鉄……一緒に帰ってもらえませんか……?」

 アリシアはゆっくりと俺を見ると顔を寄せ、手を伸ばした。

「ど、どういう意味だ?」

 俺はそのまま後ずさりした。

「もう……私、居場所が……」

 アリシアはそのまま姿勢を低くし、さらに俺に顔を寄せて手を伸ばした。


 ヤバいヤバいヤバい! 良くわからないけど、これはヤバイ!

 俺の中の何かが警鐘を鳴らす。


 俺は後ずさりを続けていたが、そのまま壁に追いやられた。

「くっ……こうなりゃヤケだ!」

 俺は意を決してアリシアの両手の間に飛び込んだ。そのままアリシアの顔に飛びついて両手で顔を掴むと……。

「あ……」

「ウーーリャリャリャリャリャリャリャリャ!」

 俺は両足でアリシアの顔をズバババと連続キックした。押さえ込み猫キックだ。

「いだだだだだだ!」

 アリシアはそう言って起き上がると斜め後ろに倒れ、俺はアリシアの顔を蹴ってジャンプし、空中で一回転すると床にスタッと着地した。


「もう! 何するんですか、小鉄!」

 アリシアは両手で鼻を押さえたまま起き上がった。

 アリシアは怒りながら、涙を流していた……。ボロボロと大粒の涙が、止め処なく流れていた。

「おま……なぜ泣く? 痛くなかっただろ?」

「ええ、痛くはありません……って、あれ……? 私なんで……え……? あれ?」

 アリシアは両手で涙を拭った。拭っても拭っても、拭っているのにそれ以上に涙がこぼれ、止まらない……。

「小鉄! 私に何をしたんですか!?」

「いや何も……。ってかお前……今の出来事、覚えてるか?」

「え……? 小鉄が……私に出来る事を聞いて……」

 アリシアはさっきまでの出来事を回想し始めた。すると、表情が無くなり、また死んだ魚の目になると同時に涙が止まった。

 何だこれ……。

「おい、ルシア!?」

 俺はルシアを呼んだ。


 チュドーン! アリシアに天罰が下った。


「ぐはぁっ!」

 アリシアはそのままバタンと床に倒れた。

「あ……いや……まだ何も言ってない」

 俺は天井を見上げた。ただ話をしたくて呼んだつもりだった。

『おや? アリシアに黒いオーラを感じたので、取り敢えず黙らせましたが。違いましたか?』

 ルシアは黙らせ方が極端だった。

「まぁいい、丁度二人だけで話したいと思ってた。話が終わったらアリシアは元に戻してやってくれ」

『わかりました。話とは何でしょうか?』


 ──


「……やっぱりそうか……」

『はい。ですので、小鉄にはそのお手伝いをお願いしたいのです。引き受けて頂けますか?』

「……わかった、引き受ける。だが、それなら何故最初に言わなかったんだ? てか、補助ってどういう意味だ?」

『アリシアはそのごうが解かれた時、必ずやあなたのお役に立つでしょう』

「……言いたくないのか?」

『今はまだ』

「わかった、話はそれだけだ。元に戻してやってくれ」

『はい』


 ルシアがアリシアを元に戻すと、俺はアリシアの涙を舐め取ってやった。


 ──


「……ん……あ、あれ? ……私は一体……」

 アリシアは目を覚ました。


「起きたか?」

「あ、小鉄……私、寝てたんですか?」

 アリシアは両手を使って体を起こし、あたりを見渡すと、そのまま女の子座りをした。

「ああ、なんか疲れてたみたいだな」

「なんだか寝る前の記憶が曖昧あいまいなんですけど……」

 アリシアはうつむいた。

「気にするな。そういう日もある」

「……そういうものですか?」


「ああ、そういうもんだ」

 俺は何気なく、アリシアを見ていた。




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